(ブルームバーグ):世界のメモリー大手3社は難しい課題に直面している。AI向けデータセンターでメモリーチップの需要が急増し、供給が追いついていないためだ。
この供給不足を背景にメモリー価格は上昇し、米マイクロン・テクノロジーと韓国のSKハイニックス、サムスン電子は空前の利益を上げている。一方で顧客の不満は高まっており、政府が介入する可能性もある。また、供給不足は中国勢に商機を与えかねない。
2023年には需要低迷と価格急落を受け、メモリーメーカーは巨額の損失を計上していた。メモリー業界は依然として景気循環の影響を受けやすい。ただ、現在この3社が直面するリスクは、利益が少なすぎることではなく、利益を上げすぎているとみなされることだ。3社の株価は今年付けた最高値を下回るものの、時価総額はいずれも1兆ドルを超えた。ブルームバーグが集計したアナリスト予想が正しければ、3社合計のフリーキャッシュフローは今後3年間で1兆4000億ドルに達する。

マイクロンの2026年度の純利益は約830億ドルと予想されており、過去35年余りの累計利益を大きく上回る見込みだ。営業利益率は80%と、大手テクノロジー企業の中でも突出した水準にある。
これは、DRAM需要の急拡大によるものだ。DRAMはサーバーや民生用電子機器に加え、医療機器や自動車にも欠かせない。メモリー大手3社はDRAM市場の約90%を握るほか、先端AIチップに必要な広帯域メモリー(HBM)市場も事実上独占している。
HBMは従来のDRAMより高価なうえ、生産により多くのウエハー処理能力を必要とするため、従来型メモリーの供給が圧迫されている。新たな半導体工場の建設には少なくとも2年を要する。このため、各社が設備投資を積み増しても、供給不足は2028年ごろまで続く可能性が高い。
マイクロンのDRAMの平均販売価格は、3-5月期に前年同期比で約4倍に上昇した。バーンスタインのアナリスト、マーク・ニューマン氏は「現在の市場で起きている供給不足は前例がない。メモリー価格は極めて速いペースで上昇している」と語った。

かつては安価な汎用品とみなされていたメモリーの価格上昇を顧客に受け入れさせることは、メモリーメーカーが価格交渉で優位な立場を利用しているとの印象を与えかねない。しかし、話はそう単純ではない。かつて大きな打撃を受けたのは、メモリーメーカー自身だからだ。
マイクロンが投資を継続したことは評価すべきだ。その結果、金利が急上昇する中で負債は大幅に膨らんだ。現在の成功は、そうしたリスクを負った当然の報いと言える。最新のメモリーチップは高度な技術の結晶であり、研究開発や新工場の建設には莫大な費用がかかるからだ。
同社は9日、2035年までに米国内の新工場建設や技術開発に2500億ドル超を投じる方針を発表した。従来計画から約500億ドル積み増しとなる。また、米国の半導体サプライチェーン強化に向けて最大30億ドルを投資することも明らかにした。
AI需要の恩恵を受けているのはメモリーメーカーだけではない。高い技術力と巨額の投資を必要とするため新規参入が難しく、高い利益率を誇る企業はAIサプライチェーン全体に存在する。エヌビディアのAI半導体、ASMLホールディングの先端露光装置、台湾積体電路製造(TSMC)の半導体受託生産など、その例は枚挙にいとまがない。

それでもメモリー大手3社は慎重な対応を迫られる。価格上昇の影響を受けているのは、巨額の設備投資を続けるハイパースケーラーだけではない。民生用電子機器メーカーもコスト上昇に直面しており、その影響でスマートフォンやパソコン、ゲーム機は一段と高額になる可能性がある。
米上場を予定するSKハイニックスは、目論見書でリスクに言及している。同社は「政府による調査や民事訴訟、規制監督の強化のほか、政府の優遇措置や補助金の条件変更・見直し、生産や価格設定、供給配分、販売方法に影響を及ぼしかねない立法・行政措置」が講じられる可能性を警告した。
マイクロンも最近、米当局への提出書類で、長期的な顧客関係の悪化や、自社製品を利用する市場の混乱のほか、訴訟や政府・規制当局による監視強化をリスク要因に挙げている。
こうした懸念は杞憂ではない。緊張はすでに高まりつつある。先月には複数の消費者や中小企業が、メモリー大手3社がDRAMの供給を制限して価格をつり上げるため共謀したとして、米国で集団訴訟を提起した。メモリーメーカー各社はこうした主張を強く争うとみられる。これまで高い利益率を維持してきたアップルも、iPadやMacの価格を約20%引き上げた要因として、メモリー価格の上昇を挙げている。
これに対し、メモリーメーカー各社は、価格設定や生産能力の判断をゆがめるような政府介入に警鐘を鳴らしている。業界団体は、価格上昇の影響を和らげるため、米政府が消費者や企業向けの税制優遇措置を講じるべきだと提言している。ただ、それはいささか身勝手な主張にも映る。
現時点で主導権を握っているのはメモリー大手3社だ。顧客は必要な供給量を確保するため、複数年契約を結ぶケースが増えている。こうした契約によって、メモリーメーカーは数年にわたる好調な売り上げと高い利益率を事実上確保することになる。一方で長期契約を結んでいない顧客は、「契約で押さえられていない限られた供給分から調達せざるを得ず、価格はより高く、変動も大きくなる可能性がある」とモルガン・スタンレーは指摘している。
一方、従来型メモリーの需要家も手をこまぬいているわけではない。アップルは供給不足に対応するため、中国向け製品に限り、中国メーカーから調達する方針だ。ただ、調達先となる長鑫存儲技術(CXMT)と長江存儲科技(YMTC)は、米国防総省のブラックリストに載っている。このため、アップルは米政府の承認を得たい考えだ。
半導体を巡る地政学を考える際、政策当局は足元の供給不足だけでなく、その先も見据える必要がある。もっとも、当局に万能薬はない。データセンターがより少ないメモリーで稼働できるようにする技術革新など、市場の力がより有効に働くことに期待したい。とはいえ、寡占企業が空前の利益を上げ、そのしわ寄せが他の市場参加者に及ぶようであれば、摩擦は避けられない。
(クリス・ブライアント氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、欧州の工業関連企業を担当しています。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Micron’s Huge Profits Are a Guarantee of Trouble: Chris Bryant (1)(抜粋)
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