5月の名目賃金は4カ月連続で3%を超える伸びとなった。高水準の賃上げを維持した今春闘の結果を反映し、日本銀行の見通しに沿った動きが続いていることが示された。物価変動を反映した実質賃金は5カ月連続で前年を上回った。

厚生労働省が7日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は前年同月比3.2%増だった。4カ月連続で3%を超えるのは1992年3月以来となる。基本給に相当する所定内給与は全体が3.0%増で、パートタイムを除く一般労働者が3.4%増だった、いずれも5カ月連続で3%以上の伸びとなった。

「持ち家の帰属家賃を除く」消費者物価指数(CPI)で算出した実質賃金は1.4%増。CPI総合で算出したベースでは1.7%増と、6カ月連続のプラスとなった。

今回の結果は、「賃金と物価が緩やかに上昇していくメカニズムは維持される」という日銀の見方を裏付ける内容だ。日銀は先月、政策金利を1.0%程度に引き上げた。緩和的な金融環境が維持されることを踏まえ、引き続き利上げを進める方針の日銀にとって、賃金上昇の持続性は重要な鍵となる。

SMBC日興証券の関口直人エコノミストは、賃金は「基本的に堅調な動きが続いている」と指摘。原油価格も落ち着いてきており、現行の水準なら実質賃金は「当面プラスが続く」と分析した。その上で、賃金動向は利上げをサポートする内容で、基本シナリオとして次回利上げを12月と予想。政権の動向次第で10月もあり得るとした。

連合が3日発表した今春闘の最終回答集計によると、2026年春闘は、定期昇給を含む平均賃上げ率は5.01%と、目標の平均賃上げ率「5%以上」を3年連続で達成。毎月の基本給を引き上げるベースアップ(ベア)は3.50%で、「3%以上」の目標に達した。

日銀は4月に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、名目賃金は労働需給の引き締まりや春闘などを反映して着実な伸びが続くと見込まれると説明。一方、中東情勢の混乱による原油価格の上昇が交易条件の悪化などを通じて企業収益や家計の実質所得を下押しする要因になるともみており、賃金の動向を注視している。

東京都心の通勤者

ブルームバーグが6月の利上げ直後に実施したエコノミスト調査では、次の利上げ時期の予想は最多が12月の52%で、次いで10月が36%となった。9月の2%と合わせ、年内利上げの予想が90%を占めた。

5月の実質賃金の上昇は、物価の伸びが抑制されていることも影響した。実質賃金の算出に用いるCPIは、持ち家の帰属家賃を除くベースで1.7%上昇、総合は1.5%上昇と、いずれも5カ月連続で1%台にとどまった。生鮮食品を除く食料の伸びが鈍化し、押し下げ方向に作用した。

他のポイント

  • 総労働時間は前年同月比3.8%減
    • 暦の要因で、昨年と比べ平日が2日少なかったことが影響した-厚労省
  • パートタイム労働者の時間当たり給与は4.9%増-24年3月以来の高い伸び
  • エコノミストが賃金の基調を把握する上で注目するサンプル替えの影響を受けにくい共通事業所ベースでは、名目賃金は2.9%増-前月2.9%増
    • 所定内給与は、全体が2.5%増、一般労働者で2.4%増

総務省が同日発表した家計調査によると、5月の消費支出(2人以上の世帯)は物価変動の影響を除いた実質ベースで前年同月比0.4%減と、6カ月連続のマイナスとなった。市場予想は2.3%減だった。交通・通信や光熱・水道、教養娯楽が全体を押し下げた。

(5段落目以降にエコノミストコメントと家計調査の結果を追加して更新しました)

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