(ブルームバーグ):映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」で取り上げられ一躍有名になった投資家マイケル・バーリ氏は、半導体メモリーメーカーが「スーパーサイクル」に入ったとの見方を信じていない。バーリ氏の主張には一理ある。
バリュー投資家のバーリ氏はニュースレター配信サービス「サブスタック」への投稿で、マイクロン・テクノロジー株を空売りしたことを明らかにし、「これほど景気循環の影響を受ける銘柄はない」と指摘。また、「好況時には必要以上に買い上げられ、不況時には必要以上に売り込まれる」と記した。
実際、株価だけを見れば、世界の半導体メモリー大手3社であるサムスン電子、SKハイニックス、マイクロンは、好不況の激しい波に左右される業界との印象を強めている。利益が急増し先行きが明るい局面では、予想利益ベースの株価指標から見て割安に映り、勢いに乗った買いが集まりやすい。一方で、市場心理が悪化すると、投資家はアナリスト予想の信頼性を疑い始め、株式を売却する。その際には、経営不振企業の評価に用いられることが多い株価純資産倍率(PBR)など別の指標で評価するようになる。
こうした動きは、マイクロンが6月下旬に市場予想を大きく上回る決算を発表した後に実際に起きた。発表直後の熱狂は一転して売り一色となり、3社の中で最も値動きの大きいSKハイニックス株は先月付けた直近高値から最大25%下落した。投資家はメタ・プラットフォームズやアップルからの需要鈍化を懸念した。
マイクロンが業績見通しの透明性向上に努めてきたにもかかわらず、こうした展開となった。経営陣は顧客と締結した長期契約について詳しく説明した。これらの契約は通常5年間に及び、前払い金を伴い、履行されれば売上高の少なくとも半分を占める可能性がある。それでも市場の反応は変わらず、マイクロン株の予想PERは6月下旬の11倍から先週末には7倍まで低下した。
しかし、根本的な問題はバリュエーション(株価評価)指標や株式売買に伴うレバレッジではない。半導体メモリー業界は需給構造が極めて複雑で、経験豊富なアナリストでさえ判断を誤ることがある。
バーリ氏は、韓国で進む巨額投資が「終わりの始まり」を意味するとみている。李在明大統領は先週、「大躍進」と位置付ける少なくとも1350兆ウォン(約142兆円)規模の大型事業を発表した。計画には、韓国南西部でサムスン電子とSKハイニックスが建設する新たな半導体工場も含まれる。
こうした投資は韓国経済にとって合理的だ。バークレイズによれば、投資は全国に分散して行われ、国内総生産(GDP)の2.6%に相当し得る。一方で、こうした規模とスケジュールの加速は業界全体の生産能力拡大を過去最高水準へ押し上げるだけだ。AIデータセンターやスマートフォン、パソコン向けに使われるDRAMの供給不足は、早ければ来年に解消する可能性もある。
価格競争で知られる中国はどうだろうか。中国のDRAM大手、長鑫存儲技術(CXMT)のグループは、少なくとも295億人民元(約7000億円)を調達する新規株式公開(IPO)の準備を進めており、実現すれば2022年以降で中国最大の株式公開となる見通しだ。そうなれば、同社はウエハー製造ラインの増強に必要な資金を確保できる。モルガン・スタンレーによると、中国は2028年までのDRAMウエハー純増分の30%を占める見込みで、韓国に次ぐ規模となる。
米国防総省のブラックリストに掲載されているCXMTは、まさに拡大局面にある。長年の積極投資が実を結び、1-3月(第1四半期)の利益は200億元を超えた。アップルが顧客となれば、増産計画は一段と加速するだろう。アップルは、政治的な影響を抑えるためトランプ政権への働き掛けを進めている。
現在、サムスン電子、SKハイニックス、マイクロンの3社は世界のDRAM市場の約90%を支配し、エヌビディアの画像処理半導体(GPU)と組み合わせて使われる高帯域幅メモリー(HBM)は全てこの3社が生産している。だが、この寡占体制は決して盤石ではない。半導体メモリーはAI時代の富を生む源泉であると同時に戦略物資として位置付けられており、中国と韓国の政治的な思惑によって需給構造は容易に変わり得る。
半導体アナリストは、過去最高益や長期契約を背景に、業界がスーパーサイクル入りしたと語ってきた。しかし、株価評価がこれほど不安定で、政治が需給を突然変え得る状況で、一体どのようなスーパーサイクルにいるのだろうか。
2008年の世界金融危機以降、バーリ氏は数々の悲観的な予測を示してきたが、その多くは現実にならなかった。それでも今回に限っては、同氏の見方が正しいのかもしれない。
(シュリ・レン氏はブルームバーグ・オピニオンのアジア市場担当コラムニストです。同氏は投資銀行に勤務した経歴もあり、米経済紙バロンズでは市場担当の記者でした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの見解を反映するものではありません)
原題:Michael Burry Is Right About Memory Chipmakers: Shuli Ren(抜粋)
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