AI関連需要の急拡大期到来という「スーパーサイクル」論に支えられて急上昇したキオクシアホールディングスや半導体関連株に投資家から慎重論が出始めている。激しい好不況を過去に繰り返してきた業界の特性からは逃れられないとの見方だ。

年上期に株価が一時10倍超に拡大して国内AI関連の筆頭に躍り出た半導体メモリ-メーカーのキオクシアHDは、その分業界変調の影響を受けやすそうだ。フラッシュメモリー価格高騰を受けて利益が急増している半面、実は圧倒的な市場シェアを持っているわけではなく、市況に対して脆弱(ぜいじゃく)な面がある可能性を否定できない。

韓国政府が半導体・データセンター分野に1350兆ウォン(約142兆円)以上を投じる計画をまとめた一方で、高騰するメモリー価格がユーザー企業の大きな負担になり始めている。メモリー高騰が今後も続く保証はなく、いずれは競争激化につながるおそれもある。

住友生命保険の村田正行バランスファンド運用部長は、市場に長年関わり、半導体のシリコンサイクル(好不況の繰り返し)を見てきた人間として「不安なところがある」と韓国の大規模投資を複雑な思いで見つめる。「これまでキオクシアを満額で持っていたとすれば、少し減らして他の銘柄に振り向けるといった動きが出る可能性がある」とした。

ピクテ・ジャパンの市川真一シニア・フェローも、メモリー高騰は急激な需要増に設備投資が追いつかないが故の一時的な現象と指摘。キオクシアHDのNAND型フラッシュメモリーは、サムスン電子やマイクロン・テクノロジー、長江存儲科技を含む複数社がしのぎを削り、「かなりシクリカル性が強く、韓国の投資計画を受けて投資合戦が始まりそうな勢いの中、バリュエーションをどう評価するかには注意が必要だ」と述べた。

高騰するメモリーコストを製品に価格転嫁した米アップルの株価は一時下落した。楽天投信投資顧問の平川康彦第二運用部長は、メモリー上昇がもたらすゆがみが大きくなっていると指摘。ITバブル期も今回のサイクルは違うという議論はあったとしながら「半導体にサイクルがあること自体には変わりはない」との見方を示した。

このため韓国の設備投資は日本の半導体製造装置や半導体素材関連株には明確にプラスとしながら、関連株の先行きには「一抹の不安を感じる」と懸念を示した。

強弱感

もっとも、強気材料ももちろんある。米ハイパースケーラー(大手クラウド事業者)による投資額は、今年と来年の2年間で1.6兆ドル(259兆円)を超えるとみられており、目先の需要の強さは約束されている。さらに、過去に市況に振らされてきた反省もあり、キオクシアHDも数年売買契約の締結を進めるなど、以前よりも安定的な収益が期待できるようになっている。

今回のAIブームで半導体産業は従来の市況型産業ではなくなったのかどうかは、AI関連の設備投資が今後どこまで続くのかにかかってくる。

この点でレオス・キャピタルワークスの岡田雄大トレーディング部長は、米オープンAIの上場延期検討の報道が今後尾を引くのではないかと警戒している。「データセンター建設に向けた半導体需要が長期で続くと想定されるが、資金調達ができることが前提だ。オープンAIとアンソロピックが最たるものだが、その前提が変わるのであればメモリー需要も影響を受ける。警戒感はそれなりにある」と指摘した。

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