(ブルームバーグ):AIが長期的に大規模な人員削減を引き起こすかどうかについては、なお議論が続いている。だが、米国の雇用統計を見ると、すでにAIが影響を及ぼし始めていることがわかる。
政府統計によると、AIの導入が最も速く進んでいる金融業と情報サービス業では、雇用者数の減少が2026年に加速しており、平均すると月2万8000人減少している。
その他は堅調な労働市場の中で、この動きは際立っている。今年は5月までに月平均11万3000人超の雇用が創出されたが、銀行業界とテクノロジー業界が全体の伸びを押し下げていなければ、その数字はさらに大きくなっていたはずだ。2日に発表される6月の雇用統計でも、引き続き雇用数の堅調な増加が予想されている。
AIに多額の投資を行ったテクノロジー企業では、現在は人員削減の要因としてAIを挙げるケースが増えている。JPモルガン・チェース、シティグループ、ゴールドマン・サックス・グループの幹部らも、AIによって一部の雇用が失われるとの見方を示している。
人員削減計画を追跡しているチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのジョン・チャレンジャー最高経営責任者(CEO)は、「AIは、これまでのどの技術にもなかった形で、まさに今、影響を及ぼし始めている」と語る。同社によると、今年に入りAIを理由とする人員削減の発表は約10万2000人に達している。
テック業界は、今年発表された人員削減の3分の1を占めた。チャレンジャー氏は「次に最も大きな影響を受ける業界は金融になるかもしれない」としている。
研究によると、AIが労働市場に与える影響は、企業がAIをどのように導入するかによって異なる。スタンフォード大学デジタル・エコノミー・ラボの研究では、AIが業務を自動化する職種では雇用が弱含む一方、従業員の業務をAIが支援する職種では雇用は維持されることが分かった。
金融業界は、その職種構成から特に影響を受けやすい可能性がある。ブルームバーグがまとめた米労働統計局(BLS)のデータによると、金融業では、顧客対応担当者や銀行窓口係、保険金請求処理担当者などを含む事務・管理補助職が、雇用全体の約4分の1を占める。この割合は主要産業の中で最も高い。
BLSは最新の雇用見通しで、こうした事務職がAIの影響もあって、今後10年間で雇用減少幅が最も大きい職種の一つになるとの見通しを示している。
カリフォルニア・ポリシー・ラボが開発した失業データ追跡システムによると、AIの影響を強く受ける職種の労働者からの失業保険申請の割合は、金融・保険業が州内で最も高かった。情報サービス業と専門サービス業でも、AIの影響を受ける職種からの失業保険申請が高水準で続いている。
州全体の失業保険申請件数はまだAIによる広範な雇用喪失を示してはいないものの、カリフォルニア・ポリシー・ラボの研究者らはリポートで、こうした結果はAIの影響が「表れ始めている可能性がある」ことを示唆していると述べた。
既に現実
エコノミストらは、マクロ経済全体では、AIの広範な影響を確認するにはまだ早過ぎるとみている。
バークレイズの米国担当シニアエコノミスト、プージャ・スリラム氏は、「生産性の向上により、労働者が実際に置き換えられている側面もあるだろう」としたうえで、「繰り返し聞かれるのは、多くの企業がAIに多額の投資を約束していることを背景に、実際にはコスト削減を進めているという話だ」と語った。
イェール大学バジェット・ラボの調査責任者ライアン・ナン氏は、現時点ではAIの影響は確認できないとの見方を示した。2026年の金融業の人員削減データに特段の増加は見られず、AIは広範な人員削減ではなく、採用の鈍化や自然減を通じ、雇用に影響を与え始めている可能性があるという。
ソフトウエアエンジニアのビル・マトンテ氏は、4月にシティグループを解雇されて以降、再就職に難儀している。同氏が2025年3月にJPモルガンを退職した際は、わずか6週間でシティグループの職を得ることができた。だが今回は、人員削減を見越して6カ月前から面接を受け始めたものの、内定には至っていない。
マトンテ氏は「本当に大きなストレスだ」とこぼした。
金融業界で働く人々にとっては、解雇理由としてAIが挙げられたかどうかにかかわらず、不透明感がすでに現実のものとなっている。
原題:Two Sectors Losing 28,000 Jobs Monthly Show AI Impact on Labor(抜粋)
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