骨太の方針2026:「日銀法」「共同声明」を明示し、日銀への圧力強化へ

政府が7月に策定する見込みの「骨太の方針2026」において、日銀に関する記述に注目が集まっている。各種報道によると、「骨太の方針2026」の第一章に、「『強い経済』の実現に向け、適切な金融政策運営が行われることも非常に重要」(毎日)と明記される見込みである。その上で、骨太の方針の素案では「政府は、引き続き、日銀と緊密に連携し、デフレに後戻りすることのない物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、一体となって取り組んでいく」(共同通信)といった記述もあるようである。「骨太の方針2025」では「政府は、引き続き、日本銀行と密接に連携し、経済・物価動向に応じた機動的なマクロ経済政策運営を行う」とされていた。今回、「デフレに後戻りすることのない物価安定」と「経済成長の実現」という記述が入ることになれば、少なくとも政府は日銀の追加利上げに慎重だというメッセージになる。もっとも、この文章の主語は「政府」である。厳密にみれば、日銀とは密接に連携するだけで、政府の決意を示しているだけである。

例年、「骨太の方針」における日銀に関する記述として注目されるのは、「日本銀行には、(中略)期待する」の部分である。例えば、「骨太の方針2025」では、「日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する」とされていた。

この部分については、毎日新聞によると「日銀には、内外の経済情勢等を十分に注視しつつ、日銀法、政府・日銀の共同声明の趣旨に沿って政府と緊密に連携し、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する」とされる方向だという。

過去の記述を振り返ると、「日銀法」「政府・日銀の共同声明」に触れたことはない。「日銀法」「政府・日銀の共同声明」の観点から、日銀は政府の意にそぐわない金融政策を推し進めるべきではないという含意を持つメッセージである。むろん、形式上は「日銀法」「政府・日銀の共同声明」はすでに存在するものであり、これまでと変わらないと言える。従来みられなかった「日銀法」「共同声明」への明示的言及を踏まえれば、政府による日銀への圧力は相応に強いものと筆者は捉えている。日銀は追加利上げ判断において従来以上に慎重化する可能性が高い。

≪過去の骨太の方針における日銀に関する記述≫
(14年)日本銀行には、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現することを期待する
(15年)日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する
(16年)日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する
(17年)日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する
(18年)日本銀行には、2%の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、目標をできるだけ早期に実現することを期待する
(19年)日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、目標をできるだけ早期に実現することを期待する
(20年)日本銀行には、引き続き、現下の厳しい経済状況に対応した適切な金融政策運営を期待するとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定の目標の下、金融緩和を推進することを期待する
(21年)日本銀行には、感染症の経済への影響を注視し、適切な金融政策運営を行い、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する
(22年)日本銀行においては、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する
(23年)日本銀行においては、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、賃金の上昇を伴う形で、2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現することを期待する
(24年)日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する
(25年)日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する
(26年見込み)日銀には、内外の経済情勢等を十分に注視しつつ、日銀法、政府・日銀の共同声明の趣旨に沿って政府と緊密に連携し、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)