(ブルームバーグ):米ドルはこの1年で最も好調な月の一つとなるペースで6月を終えようとしている。ウォール街の大手銀行は相次いで、米ドルの見通しが好転したとの見方を示している。
JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、ゴールドマン・サックス・グループなどのストラテジストは、ウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が物価安定の回復を約束したことで利上げ観測が高まったことを受け、ドルに対する強気の見方を改めて示した。
JPモルガンのグローバルFX戦略共同責任者、ミーラ・チャンダン氏はインタビューで、FRBがドル相場の強気シナリオを「始動させた」と指摘。「他の中央銀行がFRBに追い付いてドルとの金利差が縮小するようには見えない」と述べた。
ここ数週間で市場の見方は変化し、米国の例外主義が米国資産を支えるとの見方が再燃している。経済指標は、米経済が世界の他地域と比べて底堅さを維持していることを示している。一方、AIは引き続き企業による巨額投資や株式市場への資金流入を促しており、投資家は生産性向上がドルを一段と押し上げると見込んでいる。
これは、「ヘッジ・アメリカ」やドル離れ、通貨価値の希薄化を見込む「ディベースメント取引」が流行していた1年余り前とは劇的な方向転換だ。
ウォーシュ氏がFRB議長に就任する前もドルが堅調だったのは、2月のイラン攻撃を受け、安全資産を求める動きが強まったことが背景にあった。また、原油価格の上昇を受け、世界最大の産油国という米国の地位もドルを押し上げた。原油価格は現在、戦争前の水準に戻っている。
チャンダン氏は「現在、市場を本当に動かしている主役はエネルギーからFRBの政策対応へと移った」との見方を示した。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は6月に入りこれまでに2.1%上昇し、3月の原油高局面で記録した上昇率にほぼ並んだ。指数は昨年11月以来の高水準近辺で推移しており、年初来では1.7%上昇している。

ドル強気派を勢いづかせているのは、FRBのタカ派姿勢だけではない。ベッセント米財務長官も最近は強いドル政策について発言を増やしており、ウォーシュ氏への支持も表明している。ただ、ベッセント氏は、ドルが世界経済で支配的な地位を保っている理由は為替相場ではなく、米国の政策における確実性にあるとの見方を示している。
こうした環境を背景に、ヘッジファンドのマン・グループは年末までにドルが5%上昇すると予想。一方、TDセキュリティーズは7-9月(第3四半期)に2%程度の上昇を見込んでいる。
TDセキュリティーズのFX戦略責任者、ジャヤティ・バラドワジ氏は、「米経済指標は底堅く、経済活動も力強い。さらにタカ派の新議長が政策や信認、物価安定について発言している」と指摘。「FRBが利上げに踏み切るハードルはこれまでより低くなっており、市場の認識は変わった」と述べた。
もっとも、課題も残る。バラドワジ氏は、ドルが一段高となるには、FRBが市場が来年前半までに織り込んでいる約1、2回の0.25ポイント利上げを上回る金融引き締めを実施する必要があると指摘した。
バークレイズのストラテジストは、「ドル相場の上昇は一直線には進まない可能性がある」とみる。FRBによる利上げはすでに相当程度織り込まれており、市場センチメントは極めて強気であるほか、原油価格と米経済指標はいずれもピークを迎えつつある可能性があるためだ。
一方、BofAの外国為替ストラテジスト、アレックス・コーエン氏は、ドルには「なお上昇余地がある」との見方を示した。同行は25日、FRBが年内に3回利上げすると予想し、ユーロの年末予想を従来の1ユーロ=1.20ドルから1.15ドルへ引き下げた。
他の主要中銀も利上げが見込まれているが、その幅はFRBより小さいと予想されている。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が今週初め、域内経済の減速を示す兆候を踏まえて利上げ観測を後退させる発言を行ったことから、ユーロは1年ぶりの安値に下落した。
原題:Wall Street Embraces the Dollar as Warsh’s Fed Activates Bulls(抜粋)
--取材協力:Carter Johnson、Cameron Fozi、Vassilis Karamanis.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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