FRBの利上げ観測の高まりという不安は長期化せず
6月18日の米国株式市場は、イラン情勢の改善期待が広がる中、楽観論が広がった。前日はFOMCがタカ派サプライズだったことで、株式市場は軟調な展開だったことから、その反動という面もあったとみられる。FRBの利上げ観測の高まりが長期金利を上昇させる場合、株式市場ではそれを嫌気する局面もあるだろう。しかし、①原油価格の下落によってすでにインフレ懸念はピークを過ぎており、長期金利の上昇圧力は限定的となっていること、②仮に金利上昇をきっかけに株式を売り戻す動きが生じたとしても、投資資金の行き場が限定されている(金利が上昇している状態で債券は買いにくい)ため、株式市場からの資金流出は限定的となるだろう。
利上げ観測の高まりによってイールドカーブのフラット化が進む
6月18日の米国債券市場は、大きな材料がない中、堅調な推移となった。長期金利は前日差▲3.4bp、2年金利は同▲0.8bpとなった。前日のFOMCでは、26年中のドットチャートの上方修正幅が大きく、年内の利上げ観測が高まっていた。原油価格の下落によって利上げ観測がやや後退する中で、タカ派的なドットチャートは市場にとって予想外だったと言え、イールドカーブのフラット化が進んでいる。FRBのタカ派観測が長期金利を押し上げる動きにはなっておらず、総じて債券市場は安定している。むろん、コロナ後の大幅な利上げ局面でも米経済はリセッションに陥らなかったという経験から、景気不安によって長期金利が大きく下落する可能性は低い。結果的に長期金利は横ばい圏の動きが続き、経済指標(特に雇用統計)を確認しながら、水準を変化させていくことになるだろう。
ドル高で説明可能なドル円上昇、介入見送りでも違和感なし
6月の日銀の金融政策決定会合はハト派的、FOMCはタカ派的という結果となった。そのため、ドル円には上昇圧力がかかり、この日は一時161円台後半までドル高円安が進んだ。市場では為替介入が実施される可能性が意識されている。もっとも、足元のドル円の上昇はほとんど「ドル高」で説明可能で点は重要である。例えば、前週末(6月12日)から足元までドル指数は+1.1%で、ドル円は同+0.7%にとどまっている。ドル指数の上昇率を考慮すると、ドル円の上昇率はそれほど高くないため、円が目立って売られているとは言えない。
ここで、ドル指数の動きでドル円がどの程度説明でき、現在のドル円はドル指数の動きからどの程度乖離しているのかを検討する。26年初~3月末までのドル指数とドル円の連動性が高かったことを考慮し、ドル円の動きをドル指数で説明するモデル(単回帰分析)を作成すると、自由度修正済み決定係数は0.87と高い。このモデルを使って、足元のドル指数(100.82)からフェアだと思われるドル円を試算すると、161.12円となった。本稿執筆時点のドル円は161.38円なので、乖離幅は0.25円で、乖離率は0.16%に過ぎない。
では、為替介入が実施された4月下旬は今回のモデルからどれくらい乖離していたのか。最も乖離幅・乖離率が大きかったのは4月15日で、ドル円のモデル推計値は156.23円に対して、実際のドル円は159.00円だった。乖離幅は1.77円で、乖離率は2.77%になっていた。このときと比べると、足元では投機的に円が売られているとは言えない。
今回の試算結果は、投機的に円が売られているとは言えないという結論となった。むろん、為替介入は様々な要因で決まると予想され、実施の有無やタイミングを予想することは困難であるが、介入が入らない状態が続いたとしても、財務省のスタンスが変わったと驚くべきことではない。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)