米国とイランの暫定和平合意が発効し、米国が海上封鎖の終了を宣言したことを受けて、ホルムズ海峡では船舶の航行が再開し始めた。一方で、イランの核開発計画を巡る複雑な交渉が本格的に始まった。

バンス米副大統領はホワイトハウスで記者団に対し、17日遅くに署名された覚書(MoU)を巡り、争点となっている詳細事項を詰めるための60日間の協議期間が始まったと述べた。そのうえで、イランが将来的にホルムズ海峡の通航料を徴収するとの懸念については、それほど大きくないとの認識を示した。

同氏は「まず第一に、国際的な海上航路に通行料が課されるべきではないと考えている」と指摘。地域の国々が「将来的にホルムズ海峡の安全確保に向けた適切な枠組みを整備していくだろう」と語り、「ホルムズ海峡が開放されなければ、最終合意は成立しない」と釘を刺した。

トランプ米大統領は18日、「原油は流れている」とSNSに投稿した。原油供給の正常化は、同氏が対イラン戦争の終結を強く望んできた理由でもある。戦争によるホルムズ海峡の事実上の閉鎖はエネルギー価格を押し上げ、世界的な経済危機のリスクを高めたほか、中東全域に混乱をもたらした。

米中央軍はこの日、イランの港湾および沿岸海域に対する海上封鎖を全て解除したと発表した。

動き出すタンカー

暫定和平合意を受けて中東地域でさまざまな動きが活発化するなか、ペルシャ湾内に足止めされていた原油タンカーが通航を再開し始めた。クウェートは原油生産の拡大を開始しており、1週間以内に日量200万バレル超の生産を計画している。

原油計約1000万バレルを積載した船舶が、すでに海峡の外へ出るか、海峡を航行中であることが確認されている。サウジアラビア所有の超大型原油タンカーも、戦争開始以来初めてホルムズ海峡を通過した。

ブルームバーグがまとめた船舶追跡データによると、原油を満載したタンカー4隻が米国の封鎖ラインを越え、アジア方面に向かっていることが確認された。イラン産原油を積み込むため、ペルシャ湾に向かう船舶も見られている。

準国営イラン学生通信(ISNA)によると、同国当局は18日、南部港湾における商業船舶の往来が通常の水準に戻ったと発表した。

海運業界や石油業界の幹部の多くはこれまで、ホルムズ海峡の安全が確保されているかや、通航に際してイラン側の許可が必要かなど、さらなる情報が必要だと指摘していた。

イランのペゼシュキアン大統領は18日、米国と交わした覚書(MoU)の写しをX(旧ツイッター)に投稿。それによると、ペルシャ湾とオマーン湾の往来でイランは商船の安全な通航に「最大限努力」し、通航料は60日間に限り徴収しない。

原油価格は18日にさらに下落し、北海ブレント先物は一時2.5%安の77.55ドルで推移した。それでも原油価格は、年初来でなお約30%高い水準にある。エネルギートレーダーらは、ホルムズ海峡を通過する原油や液化天然ガス(LNG)の輸送量が正常化するまでには数カ月以上かかるとみている。

交渉は長期化か

米国のバンス副大統領と、イランの首席交渉官を務めるガリバフ国会議長は、19日にスイスで、合意署名を記念する式典に出席し、戦争の恒久的終結に向けた追加交渉を開始する予定だ。

MoUでは、4月に始まった米国とイランの停戦を60日間延長するとしている。この期間中、双方はイランの核開発計画への制限や、保有する高濃縮ウランをどう希釈または廃棄するかを巡り、合意を目指す。

多くの核問題専門家は、こうした複雑かつ高度な技術的問題の交渉は、60日間では短すぎると指摘している。ただしMoUには、交渉期間を延長できると明記されている。

また、制裁緩和や数百億ドル規模のイラン凍結資産解除を認める合意内容について、米国内の対イラン強硬派やイスラエルからは、譲歩し過ぎているとの批判が出ている。

原題:US Ends Hormuz Blockade, Downplays Tolls as Negotiations Restart、Trump’s Iran Deal Kicks In as Focus Shifts to Hormuz Flows (2)

--取材協力:Catherine Lucey、Devika Krishna Kumar.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.