(ブルームバーグ):米国とイランの暫定和平合意が発効し、米国が海上封鎖の終了を宣言したことを受けて、ホルムズ海峡では船舶の航行が再開し始めた。一方で、イランの核開発計画を巡る複雑な交渉が本格的に始まった。
バンス米副大統領は18日、ホワイトハウスで記者団に対し、17日遅くに署名された覚書(MoU)を巡り、争点となっている詳細事項を詰めるための60日間の協議期間が始まったと述べた。そのうえで、イランが将来的にホルムズ海峡の通航料を徴収するとの懸念については、それほど大きくないとの認識を示した。
バンス氏は「まず第一に、国際的な海上航路に通航料が課されるべきではないと考えている」と指摘。地域の国々が「将来的にホルムズ海峡の安全確保に向けた適切な枠組みを整備していくだろう」と語り、「ホルムズ海峡が開放されなければ、最終合意は成立しない」と釘を刺した。
原油相場は18日、上昇と下落を繰り返し、北海ブレント原油は1バレル=80ドルを下回って取引を終えた。トランプ大統領が先週末に合意が近いと表明した際の約95ドルからは下落している。
それでも原油価格は年初来で約30%高い水準にある。エネルギートレーダーらは、ホルムズ海峡を通過する原油や液化天然ガス(LNG)の輸送量が正常化するまでには数カ月、あるいはそれ以上かかる可能性があるとみている。
米国では、覚書でイランに有利な条件を許したとの批判が共和党内からも巻き起こっている。だがトランプ氏とバンス氏は、こうした批判に反論している。
トランプ氏はニュースサイトのアクシオスとのインタビューで、今回の軍事作戦を通じて自身の力の限界について何を学んだかと問われ、「限界などない」と回答した。また、米国は「軍事的に彼らを完全に打ち負かした」との主張を繰り返し、この覚書は「おそらくイランの無条件降伏だ」と述べた。
一方でトランプ氏は前日に続き、世界の原油市場への圧力が今回の合意への署名を決断する要因だったと強調した。ホルムズ海峡について「何カ月も石油が手に入らなくなっていただろう。爆撃を続けている限り、あそこは自動的に閉鎖されたままだ」と語った。また、長期封鎖となれば「世界的な不況を引き起こしかねない種類の事態だ」との見方を示した。
これに先立ち、トランプ氏は18日、「原油は流れている」とSNSに投稿した。原油供給の正常化は、同氏が対イラン戦争の終結を強く望んできた理由でもある。戦争によるホルムズ海峡の事実上の閉鎖はエネルギー価格を押し上げ、世界的な経済危機のリスクを高めたほか、中東全域に混乱をもたらした。
米中央軍はこの日、イランの港湾および沿岸海域に対する海上封鎖を全て解除したと発表した。
動き出すタンカー
暫定和平合意を受けて中東地域でさまざまな動きが活発化するなか、ペルシャ湾内に足止めされていた原油タンカーが通航を再開し始めた。クウェートは原油生産の拡大を開始しており、1週間以内に日量200万バレル超の生産を計画している。
原油計約1000万バレルを積載した船舶が、すでに海峡の外へ出るか、海峡を航行中であることが確認されている。サウジアラビア所有の超大型原油タンカーも、戦争開始以来初めてホルムズ海峡を通過した。
ブルームバーグがまとめた船舶追跡データによると、原油を満載したタンカー4隻が米国の封鎖ラインを越え、アジア方面に向かっていることが確認された。イラン産原油を積み込むため、ペルシャ湾に向かう船舶も見られている。
準国営イラン学生通信(ISNA)によると、同国当局は18日、南部港湾における商業船舶の往来が通常の水準に戻ったと発表した。
海運業界や石油業界の幹部の多くはこれまで、ホルムズ海峡の安全が確保されているかや、通航に際してイラン側の許可が必要かなど、さらなる情報が必要だと指摘していた。
合意を批判
トランプ氏の盟友を含む共和党内の対イラン強硬派は、合意が制裁緩和や数百億ドル規模の凍結資産解除につながる可能性があり、イランに過度な譲歩をしていると批判している。トランプ氏自身がかつて「史上最悪の合意」と呼んだオバマ政権下の2015年の核合意と大差ないとの声もある。
上院軍事委員会のウィッカー委員長(共和)は声明で、「3000億ドル(約48兆円)規模の復興・経済開発基金は米国の納税者が負担するわけではないが、オバマ氏の15年合意でイランが得た利益をかすませるほどだ」と述べた。
一方、合意はイスラエル国内でも厳しく批判されている。ネタニヤフ政権の一部の閣僚は、イランに過大な経済的譲歩を与える一方、弾道ミサイル計画の抑制にはつながらないと主張している。
イランのペゼシュキアン大統領は18日、米国と交わした覚書(MoU)の写しをX(旧ツイッター)に投稿。それによると、イランはホルムズ海峡を通過する商船に対し、「60日間に限り無償」で通航を認め、通航は「30日以内」に再開されるとしている。
覚書によれば、イランはホルムズ海峡の将来的な管理や海事サービスのあり方についてオマーンと協議する。これらは「適用される国際法および(ペルシャ湾)沿岸国の主権的権利」に沿う形で進められるとしている。
原油価格は18日に上昇と下落を繰り返す展開となり、北海ブレント先物は一時1バレル=79ドル付近で推移した。トランプ氏が先週末に合意成立が近いと表明して以降、95ドル近辺からは下落している。
それでも原油価格は、年初来でなお約30%高い水準にある。エネルギートレーダーらは、ホルムズ海峡を通過する原油や液化天然ガス(LNG)の輸送量が正常化するまでには数カ月以上かかるとみている。

交渉は長期化か
恒久的な戦争終結に向けた協議が19日にスイスで予定されているが、米国のバンス氏が、イランの首席交渉官を務めるガリバフ国会議長と会談するかは不透明だ。バンス氏は米国が今回の紛争で主要目標を達成したとの認識を示し、今回の合意は米国に利益をもたらすだけだと主張した。
今後60日間の交渉で双方は、イランの核開発計画への制限や、高濃縮ウランの希釈・廃棄方法について合意を目指す。
多くの核問題専門家は、こうした複雑かつ高度な技術的問題の交渉は、60日間では短すぎると指摘している。ただし覚書には、交渉期間を延長できると明記されている。
原題:US Ends Hormuz Blockade, Downplays Tolls as 60-Day Clock Starts、Trump’s Iran Deal Kicks In as Focus Shifts to Hormuz Flows (2)(抜粋)
(第4段落以降に原油相場やトランプ氏のコメントを追加して更新します)
--取材協力:Catherine Lucey、Devika Krishna Kumar.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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