今年のサッカー・ワールドカップ(W杯)は、国際サッカー連盟(FIFA)史上最もお金のかかる大会になるかもしれないが、開催都市がどの程度の経済効果を享受するかは未知数だ。それでも、これだけの支出が発生する以上、誰かが恩恵を受けることに疑いの余地はない。

大会が近づくにつれ、経済記者やライターのメール受信箱に、サッカーに関連した投資分析リポートがあふれるのは、そういう前提があるからだ。理論上の勝者としてはスポーツ用品小売業者、酒・たばこ・ギャンブル関連企業、旅行関連企業などが挙げられる。

ただ、一つ問題がある。英投資銀行パンミュア・リベラムのヨアヒム・クレメント、フランシスカ・レイス両ストラテジストによれば、そのような単純なアプローチは通用しない。そこで両氏は1990年大会までさかのぼり、計9回のワールドカップについて検証した。大会の開幕1カ月前から決勝戦までの期間に、ストックス欧州600構成銘柄のうち最も高い投資収益率を上げた企業を調べ、「ワールドカップ銘柄バスケット」を逆算した。

結論は「出来上がったリストには何の法則性もない」だった。過去のワールドカップ期間中の好パフォーマンス銘柄には、スウェーデンの不動産運用会社サッガクスや、ロンドン上場のヘッジファンド運用会社マン・グループ、貴金属鉱山会社フレスニーヨなどが含まれていたが、いずれもサッカーとの明確な関連はない。つまり、こうした銘柄バスケットは「テーマ投資の衣をまとったノイズ」に過ぎないとクレメント氏とレイス氏は指摘した。

それでも、こうしたPR色の強い分析リポートから得られる有益な情報はある。両氏は最も頻繁に推奨される業種を細かく調査し、「ワールドカップだからではなく、魅力的なバリュエーションと高い収益性、成長性を兼ね備えている」企業として3社を選び出した。

FIFAそのものの株式を買うことはできない以上、これらの銘柄はワールドカップだけでなく、その先も見据えた投資対象となり得る。

シュートの足元

朗報なのは、投資家の関心が人工知能(AI)関連銘柄やセクターに集中しているため、ワールドカップ関連とされる消費者向け銘柄の多くが、市場全体やそれぞれの過去水準と比べて割安に取引されていることだ。ストックス欧州指数の中で際立つのがスポーツ用品大手のアディダスだ。

同社は俳優のティモシー・シャラメやリオネル・メッシ選手を起用した広告を展開し、ワールドカップで大きな存在感を示している。しかしスターを起用した広告はさておき、アディダスの魅力はもっと単純だ。クレメント氏とレイス氏によれば、この銘柄は「例外的に割安」だ。予想株価収益率(PER)は約18倍で、株価は過去10年平均に対して約40%のディスカウントで取引されている。

さらに自己資本利益率(ROE)は指数平均を上回っており、過去との比較で割安なだけでなく、高い収益性も備えている。では、この低い評価は近い将来の利益減少を示唆しているのだろうか。そうは見えない。アナリストは今後3年間、年率15%を超える増益を予想している。

賭けに出る

スポーツ賭博・ギャンブル会社の英エンテインは、35を超える賭けやゲーミングのブランドを保有している。アディダスと同様、エンテインも過去10年平均と比較して大幅なディスカウントで取引されており、予想PERは約10倍だ。同社の利益は今後3年間、毎年2桁成長すると予想されている。

クレメント氏とレイス氏によれば、アディダスとエンテインはいずれも現在、アナリストによる予想上方修正という追い風を受けている。これはワールドカップと関連していると考えられるという。

投資家もしょせんは人間であり「ワールドカップ期間中には単純接触効果が働く。同じ企業のロゴを繰り返し目にし、ブランド名が頻繁に耳に入ると、その企業への親しみが生まれ、株価見通しについて楽観が行き過ぎることもあり得る」と両氏は指摘する。そのため、大会終了後に熱狂が冷めると、小幅な業績予想引き下げが起きるリスクはある。それでも両氏は、現在の株価水準はそうしたリスクを十分補って余りあるとみている。

ディフェンスの要

アディダスとエンテインは「かなり景気に敏感な」銘柄であり、欧州経済の減速やリセッション(景気後退)の影響を受けやすい側面がある。それなら、大会期間中の恩恵を受けつつ、よりディフェンシブな性格も備えた銘柄はいかがだろうか。

ビールは景気後退に陥ろうが、むしろそういう局面だからこそ、強い人気がある。そこでクレメント、レイス両氏が推すのが大手カールスバーグだ。同社は主力のラガービールのほか、ソフトドリンクやノンアルコール飲料ブランドも展開している。予想PERは約13倍で、過去10年平均に対して約20%のディスカウントで取引されている。一方、利益は年率約10%で成長すると見込まれている。

原題:Where to Invest Now That the World Cup Is Here(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.