米アンソロピックの最先端の人工知能(AI)モデルについて、米政府が外国からのアクセスを禁止する異例の措置に踏み切った。これは、重要産業への統制を強めるトランプ政権の新たな姿勢を示すとともに、シリコンバレーが手がける技術の影響が依然として不透明であることを浮き彫りにしている。

最先端AIへのアクセスをすべての外国人向けに停止するよう命じた米政府の措置は、前例のないものだった。数日前にアンソロピックが公開したAIモデル「フェイブル(Fable)5」で、安全制限を解除するジェイルブレークが可能なことを把握し、米政府はこの命令を出した。

政府による迅速な対応は、懸念を巻き起こした。アンソロピックは、このような手法は「最先端AIモデルを開発する企業による新モデルの公開を、全面的に萎縮させかねない」と警告した。

事情に詳しい関係者が匿名を条件に語ったところによると、アンソロピックの幹部らは現在、提起された具体的なセキュリティー上の懸念について米政府当局者と協議している。交渉に関与する主要当局者の1人はベッセント財務長官だが、ベッセント氏はウォール街に対し、アンソロピックの「ミュトス(Mythos)」のような最先端モデルが持つ潜在的な危険性について警告してきた。ミュトスは理論上、人間よりも速くソフトウエアの欠陥を発見し、それを悪用できるプラットフォームとされる。

今回の米政府の対応はAI企業に対し、これまでで最も踏み込んだ介入となった。主要なAIスタートアップは次々と株式公開を目指した動きをみせており、アンソロピックも企業価値が9000億ドル超と評価されている。しかし、今回の突然の規制措置を先例として、今後はOpenAIやアルファベット傘下のグーグル、メタ・プラットフォームズといった主要AIモデル開発企業にも、同様の措置が及ぶ可能性もある。

政府は現在、潜在的なセキュリティー上の脅威への対応を巡り、AI開発企業に政府方針に従わせるために異例の権限行使も辞さない姿勢を示している。これは、6月の大統領令でシリコンバレーに対して政府の承認を義務化しなかったのにもかかわらずだ。この大統領令では、AIモデルに対するライセンス制度を設けないとしていたが、トランプ政権は実質的にその方向にかじを切っている。

「米国の最先端AIモデルはますます戦略資産として扱われるようになっており、その利用は国家安全保障上の観点から厳しく管理される方向にある」と、オールスプリング・グローバル・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、ゲーリー・タン氏は指摘した。その上で、「中国が計算資源で米国に後れを取る状況が続く限り、この流れは今後も続く可能性が高い」と述べた。

この議論は、中国とのAI技術覇権争いを背景に展開されている。アリババグループ・ホールディングやDeepSeekなどは、性能や効率面で米国勢との差を縮めつつある。

米国は長年にわたり、最先端技術を外交・経済戦略の一環として世界に広めてきた。しかし現在、米政府は逆方向へと向かっている。中国のような地政学的ライバルへの半導体輸出規制と同様、国家安全保障上の理由から技術を国内にとどめようとする動きが強まっている。

「今回の措置は、米国が輸出規制を活用して最先端AIのリスク抑制を急いでいることを示している」と、シンガポール南洋理工大学の国防・戦略研究所で中国プログラムを担当するステファニー・カム助教は語った。

「米政府は今後、規制を一段と強化し、AIの輸出を対中戦略上のテコとして位置付けるとみられる。対象を限定した措置であれば米企業は対応可能だろう」と述べた。その一方で、「規制が広範囲に及べば、イノベーションを海外に流出させるリスクがあり、中国は前進を続けることになる」と警告した。

原題:Anthropic Block Marks US Reversal, Warning to Silicon Valley(抜粋)

--取材協力:Saritha Rai、Jeanny Yu、Daniel Flatley.

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