(ブルームバーグ):15日の取引で、原油相場が急落した。米国とイランが数カ月にわたる戦争を終結させるための暫定合意に達したことを受けた。合意によりホルムズ海峡の通航再開が可能となり、世界のエネルギー市場を揺さぶってきた供給逼迫(ひっぱく)が緩和される可能性がある。
北海ブレント原油は一時5.3%下落し、1バレル=83ドルを下回った。前週末には3カ月ぶりの安値で取引を終えていた。米ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は80ドルを割り込んだ。
トランプ米大統領はソーシャルメディアへの投稿で、ホルムズ海峡の「通航料が徴収されない再開」とともに、イランに対する海上封鎖も終了すると表明した。ホルムズ海峡は19日に和平合意が署名されれば再開される見通しだとした。
トランプ氏は「原油を動かそう!」と今回の合意を自賛しているが、トレーダーやアナリストはより慎重だ。合意草案の詳細がまだ分からず、海峡の通航再開には障害がまだ残っているほか、油田の稼働再開にも長い時間がかかるためだ。合意に先立つ数週間で、既に多くの原油は海峡を通過した。

イランのガリババディ外務次官は合意成立を確認した一方、文書の内容はスイスで行われる署名式の後に公表されると述べた。バンス米副大統領は式典への出席を予定しているとし、トランプ氏も参加する可能性があると語った。
世界のエネルギー市場は、2月下旬に米国とイスラエルがイランの核開発計画を抑制するために攻撃を開始して以来、この戦争の動向に左右されてきた。イランはこれに対し、ペルシャ湾全域への攻撃やホルムズ海峡の封鎖で応じた。米軍もイラン関連船舶に対する独自の封鎖措置を実施していた。
原油価格は戦争開始後に急騰したものの、その後は米国とイランが合意に近づいているとのシグナルが繰り返し示されたほか、海峡経由の原油輸送が一部再開した兆候を受けて下落基調となっていた。さらに先進国が緊急石油備蓄を放出し、中国などが輸入量を削減したことも相場の重しとなった。
原油価格の下落が持続すれば、米連邦準備制度理事会(FRB)を含む政策当局者にとって、インフレリスクの軽減につながる可能性がある。原油以外では、欧州の天然ガス先物が一時5.8%下落した一方、ドル安を背景に金と銅は上昇した。農産物価格は下落した。
今回の合意はペルシャ湾地域の産油国や世界の海運業界にとって大きな安心材料となるが、ホルムズ海峡の航行が完全に正常化するまでには多くの課題が残る。機雷の除去に加え、通過船舶への管理強化を求めるイランの意向がどのような形になるかも不透明だ。
ペッパーストーン・グループの調査責任者クリス・ウェストン氏は「市場への影響を見極める必要がある」と指摘した。また「19日に海峡再開が予定されていても機雷が残っている可能性があり、保険会社が高額な保険料を設定する可能性もある」と述べた。
一方、市場心理の変化を示す兆候も見られる。北海ブレントの直近2限月間の価格差(スプレッド)は、逆ざや状態ながら1バレル=1ドル未満まで縮小した。期近物の価格が期先物を上回る強気パターンは維持されているが、4月時点の12ドル超から大幅に縮小している。
市場参加者は、戦争中に操業停止となったペルシャ湾地域の油田で原油生産が再開される兆候にも注目している。産油各社は、技術的・地質学的な課題やインフラ被害のため、生産を全面的に回復させるには数カ月を要する可能性があると警告している。
また、戦略備蓄や商業在庫の原油・石油製品も、過去最高ペースで取り崩された後であり、補充が必要となっている。
原題:Oil Sinks as US-Iran Deal Boosts Outlook for Reopening of Hormuz(抜粋)
(相場を更新し、第4段落に説明を加えます)
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