・W杯の米国への経済効果は、約2.8兆円と試算される
・外国人消費が急増する一方、米国民の国内消費は抑制される懸念も
・景気への影響は一時的で、AI投資や金融政策が米国経済の鍵を握る
2026年サッカーワールドカップが6月11日~7月19日の期間で開催されている。今回のワールドカップはカナダ・メキシコ・アメリカの3か国合同開催であり、国際サッカー連盟(FIFA)は全104試合の総観客数を650万人と試算する。
米国では全11都市で78試合(全体の75%)が開催されるなど、3か国のなかで経済的な影響が最も大きいとみられる。開催11都市圏のGDP合計は全米の33.6%に達する。また、FIFAの試算によると、米国のGDPに対する押し上げ効果は172億ドル(約2.8兆円)に及び、これはGDP水準を0.05%押し上げる。また、雇用創出効果は18.5万人分(フルタイム雇用相当)とみられ、業種別では宿泊・外食(3.2万人)や航空輸送(2.0万人)、卸売・小売(1.7万人)などへの影響が大きい。
ただ、米国における過去の国際スポーツイベントと実質GDPの推移をみると、明確な景気加速効果は確認されない。オリンピックを中心に景気波及効果は開催都市に集中したとみられ、全米への経済的影響は限られていた。また、品目別の消費動向をみると、米国民のスポーツ観戦支出は急増するものの、ホテル(宿泊費)や外食などへの波及はあまりみられない。一方、外国人観光客による消費(非居住者の消費:GDP上のサービス輸出)は拡大するものの、こうした一時的な需要急増と価格上昇によって米国民のワールドカップ関連以外の消費は抑制される可能性がある。
今後の経済指標を巡っては、まず実質GDP成長率は4~6月期と7~9月期に緩やかに押し上げられる可能性がある。とはいえ、外国人観光客の消費は米国GDPの0.5%を占めるにすぎず、米国民の消費が押し出される(クラウディングアウト)懸念を踏まえると、総じて影響は限定的だろう。なお、小売売上高は米国民と外国人消費を区別しないため、6~7月の数値は表面上強くなりやすい。他方、雇用に関しては5~7月にかけて一時的に小売や外食・宿泊で増加する可能性があるものの、あくまで一時的な押上げに留まるだろう。また、物価に関しては航空運賃や宿泊費が一時的に押し上げられる一方、物価の基調判断を大幅に変えうるものではないとみられる。
このため、米国経済の先行きを占う上では、旺盛なAI投資の持続性、原油高による価格転嫁動向、及びこれらを踏まえたウォーシュ新体制下の金融政策判断、以上に大きく依存する構図に変化はない。

(※情報提供、記事執筆:第一ライフ資産運用経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 前田 和馬)