(ブルームバーグ):新規株式公開(IPO)が近づく米宇宙開発企業スペースXについて、サステナビリティーを重視するファンドマネジャーの間で投資対象から除外する動きが広がっている。イーロン・マスク会長兼最高経営責任者(CEO)が前例のない強大な支配権を持つことへの懸念がある。
米ゼビン・アセット・マネジメントのサステナブル投資責任者、マルセラ・ピニージャ氏はインタビューでスペースXのIPOについて、「われわれが企業に求める長期的な持続性という観点からすると、あまりにもリスクが大き過ぎる」と述べた。
IPO後のスペースXのガバナンス構造は、従来の常識を覆す型破りなものとなる見通しだ。マスク氏は会長とCEO、最高技術責任者(CTO)と3つの要職を兼務し、議決権の約8割を握ることになる。ゼビンはこうした体制に公然と懸念を示す投資家の1社だ。
「訴えることも、売却することも、経営に異議を唱えることもできない会社だ」と、ゼビンのピニージャ氏は述べた。スペースXが登記しているテキサス州の会社法の下では、「株主が取締役会に問題を提起するには、約3%の株式、つまり520億ドル(約8兆3500億円)相当の株を持っている必要がある」と語った。
米バリューエッジ・アドバイザーズのネル・ミノウ共同創業者兼会長も、スペースXのIPOは「株主の権利を完全に排除するもので、受託者責任を怠ったとして訴訟を提起する権利をほぼ消滅させている。帳簿や記録へのアクセスも妨げている」と論じた。
ブルームバーグが電子メールで送ったコメントの要請に対し、スペースXから返答はなかった。
250億ドルの運用資産を持つデンマークの教職員向け年金基金アカデミカーペンションも、スペースXへの投資は見送る方針だ。同基金のアナス・シェルデ最高投資責任者(CIO)は5月、スペースXは「著しく過大評価されている」うえ、「ガバナンス構造が破滅的」だと酷評した。
英国のエデンツリー・インベストメント・マネジメントもスペースXには投資しないと表明した。同社で約43億ドルを運用するシニア・サステナブル投資アナリストのヘイリー・グラフトン氏は、上場後にスペースXが採用するガバナンス体制は「少数株主が利用できる保護を弱めるものだ」と指摘。
「株主となる入り口で、弱い投資家保護の受け入れを対価として求めているような構造」を持つ企業に、顧客資産を配分することには違和感があると、グラフトン氏は語った。
米国の公的年金基金も、マスク氏が一般株主を軽視しているように見えるとして警鐘を鳴らしている。
ニューヨーク市会計監査官のマーク・レヴィーン氏はインタビューで、「創業者がより強い支配権を求める時代であることは理解している」と述べつつ、マスク氏がスペースXで計画していることは「われわれの経験をはるかに超え、前例がない」と語った。
米国の主要公的年金基金などを会員に持つ非営利団体の機関投資家評議会(CII)は9日、株主の権利やコーポレートガバナンスに関する懸念を記した書簡をスペースXに送付し、IPOを完了する前にいくつかのガバナンス条項について「再考する」よう促した。
だが、こうした懸念にもかかわらず、同社に資金を投じたい投資家は十分過ぎるほど存在しているようだ。IPOにはすでに募集の4倍を超える応募が集まっている。
今回売り出される株式は総額750億ドルに上り、これに基づく企業価値は約1兆8000億ドル相当。11日にIPO価格が決定され、12日には取引が開始される。
原題:SpaceX ‘Simply Too Risky’ for Funds With Governance Mandates(抜粋)
--取材協力:Olivia Raimonde、Alastair Marsh、Leonard Kehnscherper.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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