米ローン投資家が数年ぶりに借り手側に対する姿勢を強めている。この変化は、プライベートエクイティー(PE、非公開株)投資会社や多額の債務を抱えるAI関連企業など、幅広い借り手の資金調達コスト上昇につながる可能性がある。

7月最終週は、AIクラウドプロバイダーのコアウィーブやサイバーセキュリティー企業のプルーフポイントを含む少なくとも4社が、投資家を引き付けるため融資条件を改善することを余儀なくされた。テクノロジー企業がAIインフラに数千億ドル規模の投資を行い、債券・ローン市場には大量の債務が流入しており、資産運用会社がその供給を消化しきれなくなりつつある兆候と言える。

投資家の慎重姿勢には納得できる理由がある。高利回りの米ジャンク(投機的格付け)債市場では、企業の起債額が今年に入り約2000億ドル(約31兆5000億円)と前年同期比で約9%増加した。一方、投資適格債の発行額は約3分の1増えて1兆3000億ドルに達した。

クレジットスプレッドもじりじりと拡大している。さらに、米連邦準備制度では利上げの必要性を訴える当局者の声が強まっており、金融引き締めが短期的にはローン購入者への利払いを押し上げるものの、負債の多い企業への圧迫を強めることを投資家は懸念している。

こうした環境下で、投資家は一層強固な保護条項を求めている。PE投資会社トーマ・ブラボーが保有するプルーフポイントは、50億ドル規模のローン借り換えを完了させるため、大幅な譲歩を余儀なくされた。同社は、担保を投資家の保全対象から外す権利を放棄することも含め、提案資料の約24項目を修正した。

ブラックストーンが出資する家系リサーチ会社アンセストリー・ドットコムも、20億ドル規模のレバレッジドローンとジャンク債を販売するため、投資家保護を強化した。

マラソン・アセット・マネジメントのブルース・リチャーズ最高経営責任者(CEO)は、「クレジットスプレッドが広がるほど債権者の権利は強くなる。それは非常に望ましいことだ」と指摘。元本償還やコベナンツ(財務制限条項)など保護措置について、「こうしたものは長い間ほとんど見られなかった」と語った。

約1兆5000億ドル規模のレバレッジドローン市場では、借り手企業が長年にわたり優位な立場にあった。変動金利型資産への投資需要が強い中、企業買収の資金調達にローンを活用することの多いPE投資会社は、買収先企業にこれまで以上の負債を積み上げ、その資金の一部を自社への支払いに充てるケースもあった。

しかし、そのトレンドは反転し始めている可能性がある。オンライン決済会社ペイセーフは先週、一部ローンの償還期限延長を図るに当たり、投資家から要求を受ける前に、自主的に貸し手保護を強化した。

また、コアウィーブは26億ドル規模のローンについて、当初は指標金利に4.25-4.5ポイント上乗せする水準で議論していたが、最終的には5.5ポイント上乗せまで利回りを大幅に引き上げた。この追加利回りにより、年間の利払い負担は約3000万ドル増える計算となる。

レバレッジドローン価格は今年に入り下落している。7月30日時点の平均価格は額面1ドル当たり95.3セントと、1月の97セントから低下した。一方、ジャンク債のリスクプレミアムは先週、4月以来の高水準まで拡大し、投資家の警戒感を反映した。

クレジットサイツでグローバル戦略責任者を務めるウィニフレッド・シザー氏は、最近の動きは「市場の変化」を示しており、レバレッジドローンの借り換えを必要とするソフトウエア企業への圧力が強まっていることを浮き彫りにしていると述べた。投資家は、AI技術の進展によって事業が脅かされる企業への融資に対し、慎重姿勢を強めているという。

シザー氏は、「市場で案件を成立させることができるような契約条件を整備すると同時に、かつてほど先行きが確実ではなくなった業種では、貸し手に一段と厚い保護を与えることには、双方に利益がある」と話した。

ただ、AIによって実際にどのソフトウエア企業が打撃を受けるのかや、テクノロジー企業によるAIインフラへの投資が過剰なのかどうかなど、多くの疑問がなお残されている。

アクイライン・キャピタル・パートナーズの資本市場部門責任者、マーク・ハミルトン氏は「現時点では、勝者と敗者を見極めるには時期尚早なため、その不確実性を反映したプレミアムを上乗せした価格設定になっている」と説明した。

それでも、こうした貸し手優位への流れは、ソフトウエアやAI関連案件にとどまらないと予想されている。ブルームバーグが集計したデータによると、2028年までに償還期限を迎えるレバレッジドローンは約2400億ドルに上る。先週の動きは、貸し手が一層高い利回りや手厚い保護条項を求めて交渉し、その結果として優位な条件を勝ち取れることを示した。

原題:Loan Investors Are Pushing Back as Fear Rises: Credit Weekly(抜粋)

--取材協力:Aaron Weinman、Gowri Gurumurthy、Paula Seligson、Reshmi Basu、Dan Wilchins、Nabila Ahmed.

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