行動バイアスを踏まえた資産形成の実践

以上、資産形成における行動バイアスについて概観した。2節で述べたように、行動バイアスの影響の度合いには個人差があるため、まずは自分自身の「心のクセ」を知ることが大切である。資産形成においては、長期・積立・分散投資が効果的とされているが、これは資産形成段階の行動バイアスに左右された売買を抑える仕組みとしても機能する。機械的な積立投資は、相場急変時の悲観や楽観に基づく売買を避け、損失回避傾向などの影響を抑制する。また、長期・分散投資は、日々のSNSなどの情報に過度に反応することを防ぎ、利用可能性ヒューリスティックなどの影響を軽減させる。このように、長期・積立・分散投資は、リスク分散だけではなく、投資家自身の行動バイアスを一定程度コントロールする役割も果たす。

その他、本稿で言及した行動バイアスへの対応例は資料3(画像3枚目)のとおりである。あくまで一例だが、行動バイアスを完全に排除することは難しくても、それらの存在や特徴を理解することで、意思決定に及ぼす影響を一定程度抑えることは可能である。

行動経済学者ダン・アリエリー氏の著書の一つに、『予想どおりに不合理(Predictably Irrational)』がある。タイトルが示すように、人間の行動は、必ずしも合理的ではないが、不合理な行動には一定のパターンがあり、予想可能な面もある。行動バイアスに無自覚に左右されるのではなく、それらを理解したうえで、抑制したり、望ましい行動へ応用していくことが望ましい。

【参考文献】

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(※情報提供、記事執筆:第一ライフ資産運用経済研究所 政策調査部 主任研究員 鄭 美沙)