(ブルームバーグ):暗号資産(仮想通貨)を金融商品として明確に位置付ける法律の改正案が衆院を通過した。今後参院での議論を経て成立すれば、2027年中にも施行される見通しで、ビットコインなどデジタル資産の規制の在り方が大きく変わる。
政府は暗号資産を規制する法律を資金決済法から金融商品取引法に変更し、今後は株式など上場有価証券やFX取引など派生商品(デリバティブ)と同列に扱う方針だ。利用者保護やインサイダー取引など不公正取引の規制を強化するほか、税率の引き下げ、連動する上場投資信託(ETF)の解禁にも道を開き、市場規模の拡大につながると期待されている。
日本が法改正に踏み切るのは、米国でトランプ政権がデジタル資産に融和的な政策を進める影響もあり、国内外で個人や企業を問わず投資対象として存在感を増しているからだ。一方、暗号資産業界では規制強化に伴いコスト負担の増加が懸念されている。改正案は来月17日までの今国会中に成立する可能性が高く、暗号資産の位置付けがどう変わるのかポイントをまとめた。
暗号資産の何が変わるのか
法改正の柱は暗号資産を金商法の枠組みに組み込む点だ。現在は電子マネーなどを対象とする資金決済法を中心に規制しているが、今後は株式や債券などに近くなる。金融商品に分類され、ビットコインやイーサリアムなどの売買益にかかる税率は現行の最大55%から申告分離課税の20%程度に引き下げられる。税率の変更は、政府・与党の協議を経て28年から適用される見込みだ。
他の金融商品と同様、暗号資産に連動するETFの組成も可能になる。日本取引所グループでは、早ければ27年にも暗号資産ETFが東京証券取引所に上場するとの見通しを示す。米国では、24年に設定されたブラックロックのビットコイン連動型ETFの純資産総額が474億ドル(約7兆6000億円)に達している。
シンガポールのデジタル資産マーケット・メーカー、QCPグループで日本責任者を務める狩野弘一氏は税率の引き下げで暗号資産の普及が進み、多額の資産を運用する投資家やヘッジファンド勢を日本市場に呼び込む可能性があると言う。
「今回の改正でルールが明確になること自体は前向きだ」とも話し、さらにETFの実現で一般投資家もアクセスしやすくなり、デジタル資産への認知度拡大にもつながるとの見方を示す。
インサイダー規制導入へ
現在の金商法では風説の流布や偽計、相場操縦については暗号資産も対象だが、インサイダー取引を取り締まる規定がないため、これを新設する。違反時には株式市場と同様に500万円以下の罰金や5年以下の拘禁刑が科される。無登録で暗号資産を販売した場合の罰則も強化され、拘禁刑の上限を現行の3年から10年に引き上げる。
金融庁企画市場局市場課の吉澤匡登課長補佐は「危ないから規制するのではなく、暗号資産の市場が健全に育っていくことを狙っている」と説明。投資対象として暗号資産が使われているのであれば、「インサイダー規制の対象としていくべきだ」と語った。
日本の暗号資産業界への参入を目指す海外企業に助言を行っているアジアWeb3アライアンスのヒンザ・アシフ会長は「罰則やルールが明確になることで、信頼性の高い市場形成につながる」と分析。海外投資家や企業にとっても日本市場がさらに魅力的になるだろうと予測する。
なぜ今法改正なのか
トランプ米大統領による暗号資産の推進政策を追い風に、この数年で世界では法定通貨に価値が連動するステーブルコインの発行や上場企業による暗号資産保有の増加、予測市場といった新たな商品・サービスが急速に拡大している。米国の議会では、デジタル資産規制の明確化を目的とした新たな法整備も進む。
日本でも長年のゼロ金利・マイナス金利政策に終止符が打たれ、資産運用需要の拡大と共に暗号資産への関心も高まっている。昨年11月にはメガバンク3行が金融庁の支援の下、ステーブルコインを共同発行する計画を発表した。
一方、今回の法改正はステーブルコインを対象としておらず、引き続き資金決済法で規制されることになる。政府は昨秋、初の円連動型ステーブルコイン「JPYC」の発行を承認した。コンサルティング会社キリフダの集計データによると、現在の総発行量は約39億円となっている。
個人投資家の間では昨年、大量のビットコインなどを保有する「デジタル資産トレジャリー」と呼ばれる上場企業が国内で人気を集め、メタプラネットなど関連銘柄に投資資金が流入した。
ソニーグループが出資するブロックチェーン企業、スターテイルの渡辺創太CEOは海外市場での規制整備の進展や投資家需要の急拡大により、日本でも法改正の必要性が高まっていたと指摘。今回の動きを前進と評価した半面、暗号資産の規制を巡り日本は既に米国やアラブ首長国連邦(UAE)に後れを取っているとの認識を示した。
業界の再編圧力に
もっとも、新たな規制により中小事業者を中心に暗号資産関連企業の負担は増すことになる。今後暗号資産交換業者などに対し、上場企業に近い情報開示が求められる見通しだからだ。
ブロックチェーン領域でコンサルティングを行うPacific Metaの松本頌平執行役員は、メガバンクのような大手金融機関なら開示や監査要件の強化に対応する余力があるものの、中小企業やスタートアップにとっては大きな負担になり得るとみる。
金融庁によると、4月時点で国内にはバイナンス・ジャパンやコインチェック、ビットフライヤーなど27の登録取引所業者が存在する。松本氏は「情報開示、ユーザー保護などの規制が厳しくなると、取引所の半分ぐらいがなくなってもおかしくない」と指摘。企業数が少なくなれば、「イノベーティブなビジネスが生まれづらくなるという懸念もある」と述べた。
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