産業用ロボットの制御ソフトを手がけるMujin(東京都江東区)は、数年後に新規株式公開(IPO)を目指す意向を明らかにした。人工知能(AI)がロボットや機械を動かす「フィジカルAI」を工場や物流拠点に導入する同社のサービスは人手不足の中で注目されており、市場からの資金調達でさらなる成長につなげる狙いだ。

滝野一征最高経営責任者(CEO)がインタビューで、IPOの時期について2030年よりも「もう少し早いかもしれない」と答えた。今年の夏から秋ごろに出資を募る考えも明らかにし、その後「IPOに向けて走るイメージ」と述べた。日本では数少ない企業評価額が10億ドル(約1600億円)を超えるユニコーンの1社だ。売上高は非開示だが、26年12月期は前期比で倍増する見込みという。

Mujinの滝野CEO(3日、都内)

Mujinは11年創業の東大発スタートアップ。産業用ロボットに後付けできるAIソフトウエア、いわば「頭脳」を開発し、トヨタ自動車グループやファーストリテイリングなどに提供してきた。昨年12月にはNTTやカタール投資庁などから計364億円を調達した。同社に多額の資金が流れ込んでいることは、フィジカルAIの台頭を象徴している。

フィジカルAIを活用したMujinのソフトは、ロボットが自ら最適な動きを計算し、作業できるようにする。例えば、出荷する商品の種類や数を指示すると、個数や重さに応じて積む順番やレイアウトを自ら決める。従来はアームの角度や箱を握る力などを人間が細かく設定する必要があったが、より複雑な作業の自動化を可能にした。

産業用ロボットは日本が世界で競争力を持つ分野の一つで、多くの生産や物流現場で使われている。AIやヒューマノイド(ヒト型ロボット)の開発で米中が先行しているが、滝野氏は、日本は生産現場の技術力が強みになると語った。

質の高いモノづくりを支えた熟練の職人技をデータ化し、自動化につなげられれば「日本の持つ最高のアセット(資産)になる」と説明する。

米国で成長

顧客の多くは日米で、滝野氏は今後、米国で毎年50%増のペースで売上高を伸ばす考えだ。インフレで人件費が高まりトランプ政権の移民規制で労働力不足も懸念されることから、問い合わせは増えているという。

Mujinのソフトウエアでは、コンピュータ上に現場と同じ仮想空間を再現して無数の動作パターンを試す。超高精度なイメージトレーニングを行っているようなものだ。現場の様子をセンサーで把握しながら、最適な動きの見極めと実行を繰り返す。

米国事業の成長次第では、米国での上場も検討する可能性があるとした。ただ、IPOについては急がない投資家もいるといい、必ず実行するかどうかには含みを持たせた。

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

投資環境が課題

フィジカルAIを巡っては、ファナックが米エヌビディアやグーグルと提携するほか、安川電機とソフトバンクも昨年12月に協業を発表した。国際競争の激化が予想される中、政府も3月に取りまとめたAIロボティクス戦略で、日本が米中に並ぶ第三極として、40年までにシェア3割を達成し、約20兆円の市場を獲得する目標を掲げた。

目標に向けては大企業だけでなくスタートアップなどの力も必要になる一方、競争力を高めるうえで、滝野氏は日本の投資環境が改善される必要があると指摘する。

Mujinでは出資の過半を海外の投資家が占める。評価額が800億円程度になったころ、大規模な投資に興味を示す日本の投資家はいなかったという。「PEファンドがいない。日本の株式市場でもKKRやベインキャピタルなど、活躍しているのは全て海外」のファンドであり、リスク投資への積極性に差があるとの見方を示した。

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