(ブルームバーグ):スペースXを率いるイーロン・マスク氏は今週、史上最大規模となる見通しの新規株式公開(IPO)を控える一方、英国で極右系の抗議活動をあおることにも注力している。
英国ではここ数日、複数の暴力事件や騒乱が発生している。南部サウサンプトンで起きたシーク教徒による殺人事件や、北アイルランドの首府ベルファストでスーダン人男性が逮捕された刺傷事件などがきっかけだ。
マスク氏は、以前から自身のソーシャルメディアプラットフォームX(旧ツイッター)で反移民的な主張や陰謀論を投稿してきた。英国での事件後、同氏は極右系の政治家や活動家による抗議活動の呼びかけを繰り返し拡散している。その結果、マスク氏の投稿は、スペースXのIPOを宣伝するものや暴力を描写した生々しい画像、移民の大規模な国外追放を求める主張が入り乱れている。
マスク氏は9日「英国を救えるのは『リストア・ブリテン』だけだ」と投稿した。リストア・ブリテンとは、ルパート・ロウ下院議員が率いる小規模な極右政党で、数百万人規模の移民の英国からの退去を主張している。Xの公開統計によると、この投稿は約4000万回閲覧された。
非難
スターマー首相をはじめ英国の議員らは、マスク氏が英国政治に介入し、社会の分断をあおったと非難している。
野党・自由民主党のエド・デービー当主は10日「私たちは、過激派が人々の怒りや悲しみを利用して憎悪と暴力を広めているのを目の当たりにしている。そしてそれを助けているのが、ソーシャルメディア上の分断を助長するアルゴリズムだ」と述べた。
マスク氏は自身のX上で、右派系政治家との関係を深めてきた。一般的にXでは右派寄りのコンテンツが目立つ傾向がある。リストア・ブリテンのロウ氏や、政治活動家のトミー・ロビンソン氏のような知名度の高くない人物も、X上では大きな存在感を示しており、マスク氏がしばしばリツイートしている。
マスク氏による極右勢力への支持は、英国政府をさらに左傾化させるという、意図せぬ結果を生む可能性がある。
英国では18日、イングランド北西部メイカーフィールド選挙区で下院補選が行われる。リストア・ブリテンの台頭は、ナイジェル・ファラージ氏率いるリフォームUKから票を奪う可能性がある。その結果、与党・労働党のアンディ・バーナム候補に勝利の道が開かれる可能性がある。
バーナム氏は、経済のより大きな部分を公的管理下に置くことを支持しており、増税にも前向きだ。補選で勝利した場合、党首選に挑戦する有力候補になるとも目されている。
規制
通信規制当局のオフコムは10日、オンライン上での憎悪や暴力をあおる行為について、プラットフォーム各社に警告したと明らかにした。こうした行為は英国のオンライン安全法の下で違法とされている。
オフコムのオンライン安全担当グループディレクター、オリバー・グリフィス氏は、公表した書簡で「市民の不安に関連する違法コンテンツの存在について、特定のリスクがあると判断した事業者には、すでに個別に連絡を取っている」とした。
規制当局は法令違反に対して罰金を科したり、サービスを制限したりする権限を持つ。ただし、プラットフォームに対する調査は何カ月もかかることが少なくない。
Xの広報担当者はコメント要請に今のところ応じていない。
スターマー氏は、今回の騒乱を巡りマスク氏やXが果たした役割について問われ、「分断をあおる者には断固として対処する」と強調した。
ベルファストの一部を選挙区とする北アイルランド選出のクレア・ハンナ氏は、議会で「オンライン上でこうした事態をあおる扇動者らは、次の標的へ移ればそれで終わりだろう。しかし、その後始末をしなければならないのは私たちだ」と語気を強めた。
原題:UK Unrest Highlights Elon Musk’s Role in Anti-Migrant Protests(抜粋)
--取材協力:Paula Doenecke、Ellen Milligan、Alex Morales、Lucy White.
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