(ブルームバーグ):元日本銀行理事の早川英男氏は、日銀が今月の金融政策決定会合で政策金利を1.0%に引き上げるのはほぼ確実との見方を示した。物価上昇が続けば、最速で10月に追加利上げに踏み切る可能性があるとみている。
早川氏は9日のインタビューで、中東情勢の緊迫化を受けても足元の景気が悪化していないことがデータで確認されていることや最近の日銀の情報発信などを踏まえ、15、16日の会合での利上げは「おおむね決まりだと思う」と語った。特に5月以降の円安の進行や長期金利の上昇が、日銀に利上げを迫る要因になるとみている。
政策要因を除く基調に近い消費者物価が今後も高水準で推移すれば、利上げペースは速まる可能性があるとし、今月の次の利上げは「最速で10月だろう」と指摘。景気を過熱も抑制もしない中立金利は1.5%程度との見方を維持しつつ、日銀の政策対応が遅れ気味であることを踏まえ、政策金利の最高到達点は「2%もあり得る」とみる。
日銀は4月の前回会合で政策金利を0.75%に据え置くことを決めたが、9人の政策委員のうち3人が1.0%への利上げが必要として反対した。植田和男総裁は3日の講演で、経済の下振れリスクに比べて物価の上振れリスクが高まる場合は、利上げの是非を「しっかりと議論する」と表明。早川氏も早期に政策対応を行う必要性を主張した。
最近の債券市場は明らかに日銀の政策対応が遅れるビハインド・ザ・カーブに陥っているとの見方を反映しており、政策金利が中立金利を超えてくることも意識していると分析。今会合で利上げを見送れば、「長期金利の上昇を止められなくなる可能性があり、日銀も断固としてやらなければと思っているだろう」と語った。
長期金利の指標となる新発10年国債利回りは5月18日に一時2.8%まで上昇し、1996年以来の高水準を付けた。9日午後1時45分時点では前日比1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い2.705%となっている。
政府も利上げ容認へ
前回会合時点で日銀は消費者物価の見通しを大幅に上方修正するなど影響を認識していたが、その段階では利上げに慎重な高市早苗政権を説得する証拠がなかったと早川氏はみている。しかし、長期金利急騰の背景にインフレリスクに加えて政府の財政拡張懸念が指摘されている中で、政府も利上げに反対しないだろうと語った。
高市政権は「責任ある積極財政」の下で物価高対策などに取り組んでいるが、市場では財政拡張への懸念が強く、国債利回りの上昇や円安を招いている。高市首相は5日の参院予算委員会で財政政策に関し、国債市場と「コミュニケーションももう少ししっかりしなければと思っている」と述べた。
早川氏は、中東情勢の影響は本来、景気停滞とインフレが同時進行するスタグフレーションを招く可能性があると指摘。しかし、政府の政策対応によって「結果的にインフレ要素だけが残り、インフレショックになってしまっている」という。
今後も食料品の消費減税などが予定される中で、長期金利上昇や物価上振れのリスクは収束せず、日銀が利上げで対応せざるを得ない局面が続くとみている。
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.