(ブルームバーグ):ここ数カ月、安定した収益を上げてきた為替市場のキャリー取引が、ドル相場の変動性拡大で圧迫されている。
為替相場の振れ幅拡大や米利上げ観測を受け、今年これまでの運用成績を支えてきた金利差収益が打ち消されかねないためだ。キャリー取引は低金利通貨で資金を借り、高金利通貨で運用する。3月と4月に好調だったキャリー取引の成績は、5月に停滞した。
時間をかけて金利差収益を積み上げるキャリー取引は、為替相場が大きく動くと、それまでの利益が失われる可能性がある。イラン戦争の初期には、原油価格急騰で資源国通貨の魅力が高まり、ドル相場も比較的狭いレンジで推移したことから、キャリー取引は底堅かった。
しかし、世界の為替取引の中心であるドルで再び変動率が高まったことで、状況は変わりつつある。
バークレイズのアンドレア・キグエル、テミストクレス・フィオタキス両氏らは7日のリポートで、米連邦準備制度がよりタカ派的になるとの市場の見方を背景に、「キャリー取引はここ1カ月間、期待ほどの成果を上げていない」と指摘した。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数の1週間物インプライド・ボラティリティー(予想変動率)は5日、約1カ月ぶりの高水準に上昇した。米雇用統計が堅調な内容となったことで、 米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ新議長率いる当局が12月までに少なくとも0.25ポイントの利上げを実施するとの見方が強まった。

5月初めの時点でスワップ市場では、年内の米金利据え置きが予想されていた。しかし現在は、他の主要10カ国(G10)でみられるタカ派な流れと歩調を合わせる形で、米国でも年内に0.25ポイント超の利上げが行われるとの見方が広がっている。
一方、ドルを売って新興国市場などで運用するキャリー取引にとって、ドル高も打撃となる。
シティグループのルイス・コスタ氏らストラテジストは8日のリポートでキャリー取引の投資シナリオについて、「米経済が予想以上に力強い回復の兆しを示し続ければ、今後数カ月に試される可能性が高い」との見方を示した。

ドルで資金を調達し、ブラジル・レアル、コロンビア・ペソ、トルコ・リラの買い持ちとするキャリー取引のリターンは3月に1.5%、4月に2.8%のそれぞれプラスとなったが、5月は横ばいだった。
INGグループのフランチェスコ・ペソレ氏ら為替ストラテジストは先週、「米金利上昇とドル高の環境が、ブラジル・レアルのキャリー取引を含め、新興国市場で人気の投資戦略に逆風となり始めている」と分析した。
原題:Rising Dollar Swings Threaten to Dent Resilient Carry Trades (1)(抜粋)
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