米国防総省は、アリババグループ・ホールディング、百度(バイドゥ)、比亜迪(BYD)など中国最大級の企業の一部を中国軍関連企業リストに掲載した。中国を代表する企業群を米国家安全保障上の脅威とみなす、これまでの判断を改めて強調した。

同省は8日、中国人民解放軍を支援していると判断した企業のリストを更新・公表した。今回の対象企業は、2月に公表された旧版にも含まれていた。同リストは2月、一時的に公開された後に数分で理由の説明もなく取り下げられており、この対応について同省の意図を巡って混乱が広がっていた。

今回の措置により、米国は、中国の主要な人工知能(AI)企業であるアリババ、百度、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)の3社が中国軍を支援していると宣言した形となる。テンセントは2025年に同リストに追加され、削除を求めてきた。BYDの指定は、中国最大の電気自動車(EV)メーカーを標的にしたものだ。

これら企業の米国預託証券(ADR)は8日に下落。アリババは0.8%安、百度は2.1%安、BYDは0.7%安で取引を終えた。

国防総省が中国軍関連企業を列挙した、いわゆる「1260Hリスト」の最新版には、中国の半導体メーカーである長鑫存儲技術(CXMT)と長江存儲科技(YMTC)も再び掲載された。両社は以前に同省から指定を受けていたが、2月に一時掲載された版では削除されていた。

同リストは直ちに大きな法的影響を及ぼすものではない。ただ、国防総省は企業が米軍と契約したり、研究資金を受け取ったりするのを制限する手段として、同リストの活用を拡大している。1260H指定は米投資家への警告としても機能し、より厳しい貿易制限に先立つ危険信号と広く受け止められている。

ブルームバーグ・ニュースのコメント要請に対し、アリババと百度、BYDを含む大半の対象企業から直ちに回答はなかった。多くの企業はこれまで、中国軍を支援しているとの米国の主張を否定している。

在ワシントン中国大使館から直ちにコメントはなかった。同大使館の劉鵬宇報道官は以前、「中国は米国に対し、誤ったやり方を直ちに是正し、中国企業に公平、公正かつ非差別的なビジネス環境を提供するよう求める」と述べていた。

今回のリストの公表は、トランプ米大統領が北京で習近平・中国国家主席と会談してから1カ月足らずで行われた。両首脳は、世界二大経済大国である米中間の通商を巡る懸案について協議した。先端技術、特にAIを巡る緊張の大幅緩和には至らなかった。

米シンクタンク、民主主義防衛財団(FDD)の中国担当シニアフェロー、クレイグ・シングルトン氏は「国防総省が中国軍関連企業リストをあらためて公表したことは、首脳会談後の現実を突き付けるものだ」と指摘。「会談を経ても対立は収まらず、どの分野で対立が続くのかが明確になった」と述べた。同氏は1260H指定を詳しく追跡している。

また、医薬品開発・製造受託会社の無錫薬明康徳新薬開発(ウーシー・アップテック)も指定された。同社は世界大手製薬会社の多くにさまざまなサービスを提供している。ブルームバーグの報道によれば、24年時点で同社はイーライリリーの肥満症治療薬「ゼップバウンド」の有効成分に使われる基幹原料の大半を生産していた。ウーシーのリスト掲載は事業を脅かす恐れがあり、米製薬各社による研究を難しくするリスクもある。

ウーシーは、リストに含まれたのは誤りだと主張。同社の広報担当者はブルームバーグへの電子メールで、同社は「中国軍関連企業として指定される法定基準を満たしていない」と述べ、中国軍にも中国政府機関にも支配されておらず、関係もないと付け加えた。

国防総省は更新リストの公表に際し、掲載企業について、「商業サービスの提供、製造、生産、輸出」といった活動を理由に、米国内で直接または間接的に事業を展開する「中国軍関連企業」に該当すると説明した。

ブルームバーグ・ニュースは5月、リストが2月に短時間で取り下げられたのは、国防総省が当初YMTCとCXMTを削除する決定を下したためだったと報じた。事情に詳しい関係者によれば、トランプ政権の国家安全保障当局者らは、両半導体メーカーを削除すれば、特に当初3月末に予定されていた米中首脳会談を前に、米国がもはや両社を脅威と見なしていないとの誤った印象を与えると考えていた。

当局者らはまた、この措置が米半導体大手のマイクロン・テクノロジーや、米同盟国である韓国の半導体大手、サムスン電子とSKハイニックスを犠牲にして、中国企業を強化する恐れがあると懸念していたという。

リスト公表直後、ホワイトハウス高官は国防総省に電話し、懸念が無視されたとして不満を伝えた。ブルームバーグが報じたところによれば、国防当局者らは掲載から数分後、急いでリストを取り下げた。

この混乱を受け、企業側は数カ月にわたり、ロビー活動や法的戦略を通じて、さらなる変更を求める機会を得た。最終的に6月に公表された今回の最新版は、2月に掲載されてすぐに取り下げられた旧版とほぼ同じ内容だった。ただし、YMTCとCXMTが再び加えられた点は異なる。

米議会は1999年に初めて、米国内で事業を展開する中国軍関連企業のリストを作成するよう国防総省に命じた。同省が実際にリスト作成に着手したのは、20年以上が過ぎて議員や第1次トランプ政権がこの問題を再び取り上げてからだった。

中国政府が民間部門に軍との協力を義務付ける「軍民融合」戦略を推進しているため、国防総省は理論上、米国で事業を展開するほぼ全ての中国企業について、指定の根拠を示し得る。

2月に一時公表され、8日に実質的に再公表された最新版は、同リストの歴史上でも最も重要な更新の一つだ。対象は200社近くに上り、中国を代表する企業が大半を占めた。

テンセントのロビー活動を担うトランプ大統領の元私設秘書、ジョン・マッケンティー氏は、同社が引き続きリストに掲載されていることを批判した。

同氏は「BYDや蔚来汽車(NIO)のような中国の自動車会社にまでリストを拡大することで、その正当化がいかにばかげているかが露呈している。彼らの論理に従えば、フォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)も米軍関連企業に指定されるべきだ」と述べた。

今回の更新で混乱を招いた点の一つに、中国を拠点とし、中国国内の顧客向けルーター販売に重点を置く普聯技術(TPリンク・テクノロジーズ)が追加されたことがある。米国に本社を置くTPリンク・システムズとは別会社だ。

リストの指定対象は、米国内で直接または間接的に事業を展開する企業に限られる。

米TPリンク・システムズの広報担当者は「カリフォルニア州で法人登録された米国企業として、TPリンク・システムズは今回の掲載や関連する制限の対象ではない」と説明。さらに、同社の創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるジェフリー・チャオ氏はカリフォルニア在住で、「中国共産党員ではなく、過去にもそうだったことはない」と述べた。

原題:Alibaba, Baidu Accused by Pentagon of Aiding Chinese Military(抜粋)

--取材協力:Anthony Capaccio、Lynn Doan.

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