(ブルームバーグ):米アップルは8日に始まった世界開発者会議(WWDC)で、人工知能(AI)を活用した音声アシスタント「Siri」の刷新を発表した。AI半導体で世界をリードする米エヌビディアが最近披露した新しい半導体「RTX Spark Superchip」は私たちがパソコン(PC)を購入する理由の将来像を示した可能性がある。
しかし、どちらの動きもスマートフォン市場とPC市場の縮小を止めることはできそうにない。両社の発表は同じ期待の上に成り立っている。つまり、より優れたAIが最終的に消費者に端末の早期買い替えを促すという考えだ。
問題は、現在ハードウエア市場の足かせになっているのがAIではないことだ。調査会社のガートナーとIDCは、業界全体がAIを推進しているにもかかわらず、今年のデバイス市場は縮小すると予想している。
ガートナーはスマホ出荷が8.4%減少し、PC出荷が10%減ると予測している。IDCはさらに弱気で、スマホは14%減、PCは11%減と見込む。
スマホ市場の低迷は主にアンドロイド陣営が要因となっており、PC市場は半導体メモリーやストレージのコスト上昇による圧力を受け続けている。こうしたコスト増は消費者向け価格の上昇につながる見通しだ。
言い換えれば、画期的なAIアシスタントが登場しても、メモリー不足は解決できない。そのため、エヌビディアのAIパソコン戦略もアップルのSiri刷新も、短期的には出荷予測を変える可能性は低い。
クリエーティブ・ストラテジーズのアナリスト、ベン・バジャリン氏は、RTX SparkによってPC市場の予想はほとんど変わらないと筆者に語った。「見通しに変化はなく、買い替え需要は従来通りだ。今年もPC出荷台数は減少すると想定している」と明らかにした。
アップルも同様の現実に直面している。投資家や消費者が待ち望んでいたSiri刷新も、スマホ市場の流れを一変させることはできない。IDCによれば、出荷台数を左右しているのはソフトウエアの発表よりも、メモリー供給の制約や部品コストの方だ。
だからといって、AIが将来的に重要ではないという意味ではない。
IDCで世界デバイス担当シニアリサーチディレクターを務めるナビラ・ポパル氏は、真に革新的なAIアシスタントが登場すれば、メモリー制約に悩まされていない市場では買い替え需要を押し上げるだろうと筆者に伝えた。
ただし、現時点では、「たとえアップルが完璧なAI戦略を発表したとしても、スマホ市場全体を成長軌道に戻すことはできない。市場全体の落ち込みの大部分を生み出しているアンドロイド陣営の流れを変えることはできないからだ」と指摘した。
同氏によると、より大きな問題は、消費者がAIの十分に魅力的な活用事例をまだ目にしていないことだ。
「より優れた使い方が登場し、消費者がスマホのAIによって生活がどのように改善されるかをようやく理解したときこそ、端末内AI機能が買い替え需要を押し上げる」と見方を示し、「それが実現するのは2028年になると思う」と話した。
アップルによる8日の発表は重要だ。AIがついに新しいスマホを買う理由となったときに備え、同社が信頼に足る対応策を持っていることを証明できるかどうかにある。
(この記事は、テクノロジー業界のビジネスを世界中のブルームバーグ記者が掘り下げて伝えるニュースレター「Tech In Depth」からの抜粋です)
原題:Apple’s Revamped AI Smashes Against Down Market: Tech In Depth(抜粋)
(最終段落を追加して更新します)
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