韓国では、半導体企業の従業員に支給される過去最高水準のボーナスによって、高級車需要が急増していると報じられている。

半導体や人工知能(AI)サプライチェーンに関わる企業の株価が急騰する日本でも、従業員はこう問いかけるべきかもしれない。「私のフェラーリはどこだ?」と。

日本企業はAIブームを支える重要なサプライヤーであり、韓国のSKハイニックスやサムスン電子も顧客に含まれる。サムスンではメモリー部門の従業員に対し、ストライキ回避のため最大40万ドル(約6400万円)のボーナスが提示された。

日本企業も恒例の夏季賞与支給を控えているとはいえ、サムスンの水準には遠く及ばない。40万ドルは一般的な正社員の年収10年分を超える。

こうした破格の支給額は、日本の労働者にとって、経営陣との向き合い方を真剣に考える契機となる可能性がある。比較的穏健な春闘を何度も重ねる中で形成された日本の賃金体系は、好況期よりもむしろ不景気の局面に適した仕組みで、リターンより安定を重視する。

日本経済新聞の調査によると、今年の夏のボーナスは5年連続で増加する見通しだが、平均額は100万円強にとどまる。これではスポーツカーどころか、軽自動車を買うのも難しい。

伸び悩んできた賃金

韓国のような対立的な労使交渉がすぐに広がるとは考えにくい。1970年代までは一般的だったストも、今の日本ではほとんど見られない。労働者は卸売業者や供給業者、顧客への悪影響を懸念しているからだ。ストの少なさは、日本社会の安定を支える一因となっている。しかし、経営陣に対してあまりに寛容だった結果、労働者側は不利益を被ってきた。

日本はウエハーやフォトレジスト、検査装置など、半導体サプライチェーンの極めて重要な分野で支配的地位を占める。その恩恵を享受しているのは株主だ。日経平均株価は最高値を更新し続けている。ソフトバンクグループの株式時価総額は1日、トヨタ自動車を抜いて国内首位となった。メモリー大手キオクシアホールディングスも株価高騰で時価総額3位へと躍進した。

長年、多くの企業にとって最大の課題は、景気低迷の中で事業をいかに維持するかだった。その結果、賃金は伸び悩んだ。

しかし、今は状況が異なり、問題は巨額の利益をどう使うかだ。東証プライム市場に上場する企業の利益は前期に2桁増となり、過去最高を更新した。

高市早苗首相らが株主還元を優先するより成長に投資するよう企業に呼びかける中、韓国は利益配分の一つのモデルを示している。サムスンとSKハイニックスの経営陣は、営業利益の10%以上を半導体部門従業員に支給することを約束している。半導体の受託生産大手、台湾積体電路製造(TSMC)も利益配分制度を設けており、今年の分配ボーナスを平均で30%超増やす方針を示した。

日本の賞与は調整弁

一方、日本企業の賞与は、インセンティブや報酬というより調整弁として機能している。そもそも、賞与という名称自体が実態を正確に反映していない。通常は年2回支給されるが、実質的には会社の裁量で増減する給与の一部として扱われている。解雇のハードルが極めて高いため、景気低迷局面で経営陣が人件費を調整する手段となっていた。

また、株主還元に関するデータとは対照的に、報酬に関する情報は不透明だ。企業が開示を義務付けられているのは親会社ベースの平均給与(賞与込み)のみだ。例えば、キオクシアHDの2025年3月期の平均年収は1150万円だが、この数字もわずか127人を対象にした数字に過ぎない。

労働者側は、年1回の春闘だけに頼らない新たな枠組みを模索する時期に来ている。近年の春闘では数十年ぶりとなる高水準の賃上げが報じられてきた。しかし、平均5%程度の引き上げでは、物価上昇分を十分に上回るとは言い難い。

米エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)も、従業員はもっと報われるべきだとの考えを示している。2日に台北で記者団に対し、「社員には可能な限り多く支払うべきだと思う」と語り、「私は従業員に払える限りの報酬を支払っている」とも述べた。以前には、全社員の報酬に自ら目を通しているとも明かしていた。

恩恵を享受できる仕組みを

日本の労働組合も、かつてはこれほど穏健ではなかった。春闘は、戦後の労働市場で頻発した激しい労使対立を、予測可能な交渉儀式へと転換することに成功した。好況期には有効に機能し、1990年代の不況期以降も、雇用維持を優先する経営陣と従業員双方に受け入れられてきた。

こうした安定性は、従業員を景気低迷の影響から守ってきたが、今後は好業績の恩恵をより直接的に享受できる仕組みを求めるべきだ。

もちろん、規模は異なる。サムスンだけでも今年の営業利益は2200億ドルに達すると見込まれ、日本の半導体サプライヤーとは比較にならない。それでも労働者は、最高益の一部を還元するよう求めるべきだし、誰がどれだけ受け取っているのかについても、より高い透明性を要求すべきだ。

日本は人手不足に直面している。労働者は、これまで享受してきた安定の一部と引き換えに、利益の還元を求めることができる立場にある。その手段として、株式報酬も考えられる。日経平均は金融危機後の底値から約10倍となったが、上場企業で何らかの株式報酬制度を導入しているのは3分の1程度にとどまる。

エヌビディアの従業員向け株式制度は、推計によれば数千人のミリオネアと複数のビリオネアを生み出した。その結果、離職率はわずか2.5%と、業界平均を大きく下回る水準となっている。

日本の労働者も、ポルシェまで求めているわけではない。だが、日本の技術に支えられたAIブームの真っただ中にいる以上、せめてプリウスくらいは期待してもよいのではないか。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Do Japan’s Workers Need a Samsung-Like Strike?: Gearoid Reidy(抜粋)

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