南フランスの港湾都市マルセイユで開かれたワールド・ニュース・メディア・コングレスに今週、世界各地から約1300人のメディア企業幹部が集まった。会場で最大の話題となったのは、人工知能(AI)によって自分たちのビジネスが急速に浸食されるとの危機感だ。

消費者は新聞やニュースサイトではなく、AIチャットボットを通じて世界情勢を知る機会が増えている。一方、そのAIモデルは人間の記者が書いた記事を基に学習しており、出版社側はテクノロジー企業から適切な対価を得る方法を模索している。

米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)のA.G.サルツバーガー会長兼発行人は基調講演で、「AI革命を主導する企業による不当な行為を前にして、私たちの業界はあまりにも沈黙し、受動的で、結束を欠いていた」と厳しい意見を述べた。

サルツバーガー氏は続けて、メディア業界はOpenAIやグーグルによるコンテンツの流用に対して「甘すぎる」と指摘。その上で、著作権で保護されたニュース記事を用いたAIモデルの訓練を「原罪」と批判し、「前例のない規模で行われている知的財産の露骨な窃盗」だと非難した。

約40分に及んだ講演は、満員の会場から大きな拍手と「ブラボー」との声援を受けた。一方で、複雑な思いを抱いた聴衆もいた。

仏紙ルモンドのルイ・ドレフュス取締役会会長は、この講演について、「会議のワークショップの大半が、ニュースルームでこの技術をどう活用するかをテーマにしていたことを考えれば、AIがもたらす機会についても強調できたはずだ」との見方を示した。

ルモンドはOpenAIとライセンス契約を結んでいるのに対し、ニューヨーク・タイムズは著作権侵害を理由にOpenAIとマイクロソフトを提訴している。ただし、アマゾンとはニューヨーク・タイムズが公平だと考える条件に基づき契約を結んでいる。

英紙ガーディアンもOpenAIと契約を結んでいる。キャサリン・バイナー編集長は「状況は常に変化しており、極めて流動的だ」と話す。同紙は一方で、AI企業を相手取った集団訴訟にも関与している。

OpenAIの知的財産・コンテンツ担当責任者トム・ルービン氏は会議で、「われわれは記者や報道機関の力になることを目指している」と述べ、同社とメディア各社との提携を強調した。

サルツバーガー氏は、コンテンツに対する適正な対価を得るためには、出版社は主に「立法者に働きかける」べきだと訴え、「AIに対する世論は厳しさを増しており、立法者らは対応を検討している」と述べた。

会議では、メディア企業と大手ハイテク企業の間で新たな枠組みを構築する必要性も議論された。仏海運会社のCMA・CGMを率いる富豪ロドルフ・サーデ氏のメディア会社CMAメディアは、BBCやフィナンシャル・タイムズ(FT)が参加する公平なライセンス制度の設立を目指す英国主導の「SPUR」連合に加わる意向を示した。

原題:News Publishers Weigh AI as Friend or Foe: Tech In Depth

(抜粋)

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