(ブルームバーグ):アラブ首長国連邦(UAE)はこの2カ月間、ホルムズ海峡を通じて他のどの産油国よりも多くの原油を輸送した。歴史的なエネルギー危機に揺れる世界市場の大きな支えとなっている。
船舶データ分析会社ケプラーによると、アブダビ国営石油会社(ADNOC)の原油を積んだ超大型タンカー「ルーマニア・プロスペリティ」は、7月下旬に船舶自動識別装置の信号を停止した後、4日にオマーン湾で確認された。ADNOCの新たな戦略で運行しているタンカーの一例だ。
船舶追跡データベースにより、個々の船舶の動きから取引の一端は把握できるものの、信号を停止して航行する船もあるため、実際の輸送量はさらに多い可能性が高い。事情に詳しい複数の商社によると、ADNOCは6月上旬以降、7回という異例の回数の入札を通じ、1億3000万バレル超の原油を販売した。アジア3位の原油消費国である日本の1カ月超分の原油需要に相当する量だ。
ADNOCのこうした対応は、イラン戦争による損失を抑える上で重要な役割を果たしており、供給不足の深刻化や原油価格の急騰への懸念を和らげ、市場の安定に貢献している。国際指標の北海ブレント原油は6日、1バレル=79ドル前後で取引されている。
UAEはペルシャ湾からの原油輸送を極めて順調に進めてきた。データ分析会社ボルテクサによると、6、7月に海上輸出量を戦争前の水準まで回復させた中東の産油国はUAEだけだった。輸出の大半は、日本や中国などアジアの製油会社が引き取った。
米国が7月にイランへの爆撃を強化し、イランがホルムズ海峡周辺でさらに多くの船舶を攻撃するようになってからも、輸送は続いた。事情に詳しい関係者によると、信号を停止した状態でペルシャ湾から原油を運び出し、ホルムズ海峡の外で待機する船舶へ積み替える「ダーク・クロッシング」が、戦闘激化後に再び活発になっている。
ホルムズ海峡での通航を再開する包括的な合意が成立すれば、ペルシャ湾から輸出される原油の量は増える可能性が高い。ただ、イランを巡る交渉は進展と停滞を繰り返しているため、アナリストやトレーダーは、こうした積み替え輸送が何らかの形で今後も続くとみている。
ADNOCの広報担当者は、同社の方針として、自社船舶の位置情報や航行状況、航路についてはコメントしないと述べた。
UAEは原油だけでなく、液化天然ガス(LNG)の供給も世界の顧客向けに継続している。ADNOCのLNGタンカー「ムバラズ」は、7月にペルシャ湾内で船舶自動識別装置の信号を停止し、最近になってインド沖で確認された。
また、UAEは国内を横断するパイプラインを活用し、ホルムズ海峡を迂回して追加の原油を輸送することにも成功している。
ADNOCはこうした優位な立場を最大限に活用している。原油価格全般の下落を受け、トレーダーが7月、中東産原油の指標であるドバイ原油価格を下回る水準で入札した際、ADNOCは一部のトレーダーに対し、提示価格を引き上げるよう求めたという。
サウジアラビアも、原油を紅海沿岸のヤンブー港までパイプラインで輸送することで、ホルムズ海峡を迂回しながら大量の供給を維持してきた。ただ、ボルテクサのシニア市場アナリスト、グザビエ・タン氏によると、親イラン派武装勢力フーシ派による脅迫や攻撃を受けて、この輸送にも支障が生じている。こうした結果、製油会社はUAE産原油への依存をさらに強める可能性がある。
原題:UAE Defies Hormuz Risks to Keep Crude Flowing to Global Market(抜粋)
--取材協力:Weilun Soon、Stephen Stapczynski、Anthony Di Paola.
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