(ブルームバーグ):スペースXの大規模な新規株式公開(IPO)計画が大きな話題となっている。
だが、イーロン・マスク氏の米宇宙開発企業によるナスダック上場計画を祝うムードが冷めやらぬうちに、OpenAIとアンソロピックの上場準備が始まる見通しだ。人工知能(AI)分野で最も影響力のある企業の一角を占める両社は、早ければ今秋にも株式を公開するとみられている。
OpenAIとアンソロピックは、非公開企業として極めて成功した期間を経て株式市場に参入することになる。「ChatGPT」を開発したOpenAIの企業価値は3月時点で8520億ドル(約136兆円)と評価され、「Claude(クロード)」の開発元であるアンソロピックは9650億ドル超の評価額で資金調達を実施した。
こうした評価水準は、両社がそれぞれJPモルガン・チェースやエクソンモービルといった巨大企業を上回る価値を持つことを意味する。
AI企業を巡る熱狂は、富裕層の投資家や金融機関、従業員などにアクセスが限られるプライベート市場を魅了してきた。しかし上場が実現すれば、一般投資家がAI大手に対して同様の期待を抱いているかどうかが試されることになる。
OpenAIもアンソロピックも巨額の企業価値を誇る一方で利益は出しておらず、モデルの開発・運用に必要な計算能力を確保するために膨大な資金を必要としている。IPO投資家は、歴史的な企業コストを要する事業への資金提供が、急速な増収を最終的に実際の利益に転換させると賭けることになる。
アンソロピックとOpenAIはなぜ今、上場を望むのか
魅力は2つある。株式への需要が極めて旺盛になると予想されることと、事業運営のために可能な限り多くの資金を調達することだ。上場は資金需要の大きい事業を支えるため、より低コストかつ速やかな負債・株式による資金調達への道を開く。
また、両社には競争意識もある。IPOを6月に実施する可能性が高いスペースXは、2026年に入りマスク氏のAI事業であるxAIを買収している。
スペースXはIPOで750億ドルの資金調達を目指す可能性があるとブルームバーグは先に報じた。ただし期待が高まる一方で、ウォール街では投資家が1年間で投入できる資金に限界がある可能性も意識されている。
上場に向けてどのような準備を進めているのか
ブルームバーグによると、アンソロピックとOpenAIはゴールドマン・サックス・グループやJPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーなど大手投資銀行とIPOについて協議を行っている。
関係者によれば、OpenAIは近く非公式にIPOを申請することを検討している。サラ・フライアー最高財務責任者(CFO)はIPOのさまざまな側面について積極的に発言しており、その中には初の株式公開で一般投資家が果たす役割への期待も含まれている。
主に非営利組織として運営されてきたOpenAIは昨年、営利企業へと再編され、これが投資家にとっての魅力を高めることも考えられる。サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は、最終的にはIPOが同社にとって最も可能性の高い進路だと述べている。
アンソロピックはIPOについて多くを語っていないが、ゼネラル・モーターズ(GM)の上場を支援した経験を持つ財務のベテラン、クリス・リデル氏を取締役会に迎え入れた。
アンソロピックの企業価値は、新たなAIモデルの投入と将来的なIPOへの期待を背景に、プライベート市場で急伸している。同社のAI製品投入は、AIが既存のソフトウエアを代替し得るとの懸念から、ソフトウエア企業の株主を動揺させてきた。
IPO投資家にとっての魅力は何か
OpenAIとアンソロピックの売り込みはシンプルだ。AIが支配する世界で最も重要な企業の一部を所有できるという点をアピールしている。両社に共通する魅力は急速な増収だ。OpenAIの年換算売上高は2025年に200億ドルを超え、前年の3倍以上となった。
アンソロピックの成長はさらにハイペースだ。今年4月には、現在の業績を基に年間売上高を推計する年換算売上高が300億ドルに達したと発表。数カ月前の190億ドルから大幅に増加した。
ただし、非公開企業であるOpenAIとアンソロピックは、それぞれ異なる方法で売上高を算出している可能性もある。
IPO投資家にとってのリスクは何か
最大のリスクは、AIの潜在的利益に対する期待が過大評価されていた場合だ。一部の市場関係者は、現在のAIブームはやがて崩壊するバブルだと考えている。
両社には短期的なリスクもある。非公開市場で1兆ドル規模の評価額を持つ企業が公開市場に参入する場合、どこまで成長余地が残されているのかは不透明だ。
その他の不確実性もある。OpenAIについては、さらなる成長が難しくなる可能性が懸念されている。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は4月、OpenAIが売上高と新規利用者数の目標を達成できなかったと報じた。これに対し同社は、事業は極めて順調に進んでいると反論した。
一方、アンソロピックは同社テクノロジーの軍事利用を巡り米国防総省と対立している。
アンソロピックは、自律型兵器や大規模監視活動へのAI利用を巡り、より厳格な安全対策を求めている。これに対しホワイトハウスは同社をサプライチェーン上のリスクと位置付ける異例の措置を講じた。この指定は通常、外国の敵対勢力に対して用いられる。
最近の協議では指定解除の可能性も示されているが、不透明感は依然として同社に重くのしかかっている。また上場企業となれば、AIテクノロジーが将来的に大量の雇用を奪うとの懸念から反発を受ける可能性もある。
OpenAIとアンソロピックを巡る熱狂は他社にどのような影響を与えているか
OpenAIとアンソロピックのIPOは、その影響が両社にとどまることはないと予想されている。投資家はすでに、日常生活を変革すると期待されるテクノロジーを支える企業に資金を投じている。
ChatGPTの登場は、OpenAI向けに半導体を供給するエヌビディアなどの株価急騰を後押しした。エヌビディア株は2022年11月のChatGPT公開以降、1200%余り上昇し、時価総額を4兆8000億ドル膨らませた。
グーグル親会社のアルファベットも事業をAI中心へと転換する中で株価がおおむね4倍になった。建設機械大手キャタピラーも、AIインフラの供給企業として期待され、同じようなリターンを記録している。
上場企業としてどのように評価されるのか
急成長と投資家の熱狂が重なり、OpenAIとアンソロピックは非常に高い評価額を得る公算が大きい。プライベート市場の投資家はすでにOpenAIに1220億ドルを投じており、この資金調達額は歴史上のどのIPOによる調達額も上回っている。
一方で上場企業の投資家は、信頼できるキャッシュフロー見通しを重視する傾向があり、極めて野心的な成長予測には慎重な姿勢を示す可能性もある。
上場にはどのような落とし穴があるのか
非公開企業時代よりも厳しい財務監視と短期的な収益圧力に直面することになり、財務情報はすべて開示しなければならず、四半期ごとの業績発表やウォール街アナリストからの質問への対応も求められる。
また、ささいなニュースでも株価が変動するというボラティリティーの問題もある。AIブームは数兆ドル規模の市場価値を生み出したが、悪材料が出れば、株価の急落を招く可能性がある。
上場した場合、AIにどのような影響が及ぶのか
OpenAIとアンソロピックは、テクノロジーの商業化を進める圧力と、世界を変える、あるいは一部が恐れるように世界を破壊しかねない製品を可能な限り安全に展開するため慎重に進めるべきだという圧力との間で葛藤してきた。
四半期業績予想を達成するプレッシャーは、上場企業に利益をもたらす製品を優先し、長期的で成果が不確実な研究を縮小するよう促し得る。ソーシャルメディア企業やゲームのプラットフォームなどが示してきたように、そうしたアプローチは人々や安全性よりも利益を優先するリスクを伴う。
原題:Can OpenAI and Anthropic Deliver on IPO Hype?: Explainer(抜粋)
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