(ブルームバーグ):ANAホールディングス傘下の全日本空輸と日本航空(JAL)は27日、廃食油や微細藻類などを原料とし、環境負荷が少ない「持続可能な航空燃料(SAF)」について、世界情勢の変化で日本のエネルギー安全保障の観点からの重要性も増しているとし、製造コストが高い同燃料の安定的な供給体制の構築に向けて政府や産業界、顧客を含めた社会全体で分担する仕組みが必要だとの考えを示した。
SAFは完全な電動化が難しい航空業界における脱炭素化の切り札とされており、欧州が2025年から航空燃料への混合を義務化した。日本も導入拡大を目指しており、国内航空大手の両社も21年10月、30年までに使用燃料の10%をSAFへ移行する目標に向けて協調していく内容の発表を行っていた。
だが、前回発表時からウクライナ戦争や中東情勢の緊迫などを経て航空業界を取り巻く環境は大きく変化した。両社は同日発表した共同リポートで、「世界の潮流は私たちの想定を上回る速さで変容」していると指摘。「航空燃料そのものの確保」の観点からSAFの重要性が高まっているとした。
SAFの主原料の一つである廃食油は「世界全体で争奪戦」となっており、従来の航空燃料の数倍に達する製造コストなど「具体的かつ極めて難しい課題」に直面し、解決策を模索している状況だとも説明した。
両社はその上で、「今やSAFの調達は一企業の努力の範疇を超え、国家の航空競争力をも左右する経済安全保障の課題へと発展」しているとし、エネルギー自給率を高めることは、日本の航空ネットワークを維持するためにも不可欠な基盤につながると主張。そのためには官民一体となっての価格低減に向けた取り組みが不可欠で、国からの戦略的な支援も要望していくと述べた。
航空各社が加盟する国際航空運送協会(IATA)もSAFの25年の生産量は航空燃料全体の消費量のわずか0.6%にとどまっており、より効果的な制度設計が必要だと訴えている。一方で、全日空とJALの共同リポートでは欧州では急進的な導入義務化が「異常高騰」を招いたと指摘。それを踏まえ、日本は導入速度と供給能力とのバランスをとった実効性の高い「日本型モデル」の構築が必要だとも訴えた。
SAF導入促進に向けた官民協議会の1月の会合では基本設計が進められている5つの製造プロジェクトについて、政府目標達成には「遅くとも26年末頃までに最終投資決定することが必須」との考えが示されていた。
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