(ブルームバーグ):米海軍のカオ長官代行がイラン戦争に必要な弾薬を確保するため台湾への武器売却を停止していると発言し、中東での紛争が米軍のアジアでの即応態勢を損ねている兆しが改めて浮き彫りとなっている。
21日の上院公聴会でカオ氏は国外への武器売却について、イランでの軍事作戦「エピック・フューリー(壮絶な怒り)に必要な弾薬を確保するため、一時停止している」と証言し、対イラン戦争という選択が米国の武器在庫に影響を及ぼしていると事実上認めた。
中国の習近平国家主席はトランプ米大統領と5月半ばに北京で会談した際、台湾を巡る誤解が米中の「衝突」につながりかねないと警告したばかり。

約3カ月に及ぶイラン戦争を通じ、米国は極めて大量の弾薬を消費し、数十機の軍用機とドローン(無人機)を失い、代替が難しいレーダーや地域拠点にも損害を受けた。
高額な米軍艦艇の展開も長期化。事情に詳しい関係者によると、艦艇を予定より長く海上にとどめることは、将来の展開を何年にもわたり制約する連鎖的な影響を及ぼし得る。
今回の戦争で使用された爆弾やミサイル、防空迎撃弾の量は膨大で、国防総省の高官によれば、5月中旬までに少なくとも1万3629発に達した。
これは、比較的弱い通常戦力の軍隊を相手にするだけでも大きなコストがかかることを示しており、米国は中国のような同等に近い競争相手への対応を再考する必要があることを示唆している。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の国防担当責任者ベッカ・ワッサー氏は「米軍作戦の急展開とハイペースの弾薬発射は、米国が手薄になり、目先の問題に対処するため将来の即応態勢を抵当に入れていることを意味する」と述べ、「これにより米国は、中国を含む将来の課題に対処する備えが不十分になる恐れがある」と指摘した。
これまでに少なくとも24隻の米軍艦艇が紛争に関与。米海軍は現在、イランの港湾に対する全面封鎖を指揮している。
米海軍の艦艇は、最適化艦隊即応計画(OFRP)と呼ばれる展開・訓練・整備から成る複雑な3年サイクルで運用されている。OFRPは艦艇の展開を7カ月に制限し、出動可能な非展開即応期間を設けている。
空母ジェラルド・フォードは、ベネズエラへの圧力を強めるためカリブ海に派遣された後、中東に差し向けられた。そして326日間の展開中、艦内で火災に見舞われ、ギリシャの港で修理するため戦闘を離脱せざるを得なかった。
米海軍の元潜水艦艦長で、現在は新アメリカ安全保障センター(CNAS)に所属するトム・シュガート氏は「これと南米での作戦を合わせると、作戦時間と整備時間の一定の比率を維持しなければならない」と説明し、「整備スケジュールを理由に戦争をすべきでないとは決して言わない。だがそのツケはいずれ支払うことになる」と語った。
事情に詳しい関係者によれば、造船所のスペースと訓練を受けた作業員が不足しているため、展開の長期化やその他の後退に対応する柔軟性も限られている。この関係者はセンシティブな問題だとして匿名を条件に語った。
米海軍は整備・展開スケジュールを公表していない。国防総省はコメント要請にすぐに応じなかった。

ヘグセス国防長官は今月、こうした懸念を一蹴した。議員から質問された際、「弾薬問題は愚かで無益なほど誇張されてきた」と主張し、「われわれは何を保有しているか正確に把握している。必要なものは十分にある」と答えた。
だが国防総省の調達データによると、兵器在庫を戦前水準に戻すには少なくとも80億ドル(約1兆2700億円)が必要で、現在の生産ペースでは数年かかる。ドローン「MQ-9リーパー」の戦時損失だけで10億ドル近くに上っている。
元海軍幹部で戦略予算評価センター(CSBA)のグレッグ・マランドリーノ上級研究員は「現時点で米軍は、これまで語ってきたような形で中国と戦うための弾薬やプラットフォームを十分に保有していない公算が大きい」と分析。
米国は中国による台湾侵攻を「極めて困難」にすることはなお可能だと付け加えたが、長期戦はできないとの見方を示した。
2012年に中国共産党の総書記に就いた習氏は、中国のミサイル能力急拡大を含む大規模な軍近代化を主導してきた。
中国が近く台湾に侵攻する計画を持っている兆候はない。しかし、圧力を用いて台湾を統制することを好む姿勢を示しており、台湾の頼清徳総統を国際舞台で孤立させる動きを強めている。
元オーストラリア空軍幹部でグリフィス・アジア研究所のピーター・レイトン客員研究員は、米国にとってイラン戦争は「長期戦、つまり例えば1週間を超える戦争に向けた即応態勢に悪影響を及ぼす」と語った。そうした負荷と中国の台湾への圧力が重なれば、「悪い状況」になるという。
原題:Iran War Saps US Military Ahead of Any Potential China Conflict(抜粋)
--取材協力:Courtney McBride.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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