イーロン・マスク氏率いるスペースXは新規株式公開(IPO)に向け、人工知能(AI)銘柄として投資家への売り込みを進めている。AI関連の潜在市場規模を26兆5000億ドル(約4220兆円)と見積もり、企業価値が急騰している人気AI企業と真っ向勝負する構えだ。

宇宙開発企業として名をはせたスペースXだが、史上最大規模となるIPOでは、OpenAIやアンソロピック、アルファベット傘下グーグルなどからAI分野で大きな市場シェアを奪えるとの構想を売り文句に据えている。

20日に提出したIPO申請書類では、自社が手がける全事業の潜在的な市場規模を最大28兆5000億ドルと試算。このうち93%をAI関連事業が占め、その大半は企業向け用途になると見込んでいる。一方、宇宙事業や衛星通信「スターリンク」事業は合わせて約2兆ドル程度だとしている。

同社は目論見書で、「人類史上最大級の総市場規模(TAM)を見いだしたと考えている」と説明。その上で、「先端AIモデルと計算インフラを活用し、個人向け・企業向けサービスを展開する」とした。

ウォール街では、企業評価額の合計がすでに数兆ドル規模に膨らんでいるAI業界の中でスペースXをどう位置づけるかを巡り、財務モデルの構築が始まっている。

調査会社ピッチブックのシニアアナリスト、フランコ・グランダ氏は「スペースXは、投資家の関心がAIに集中している流れをうまく利用している」と指摘。その上で「AI市場の巨大さについては、いまや誰もが同じ見方をしているだけに、疑問視しにくい状況だ」と述べた。

一方、2月のスペースXによるxAI買収に懸念を示していた投資家にとっては、今回のAI事業への強気な姿勢は、期待先行との見方を強める材料になりそうだ。全株式交換によるこの買収では、統合後の企業価値は1兆2500億ドルと評価されたが、実績面ではなお課題も残る。

目論見書によると、AI事業の中核を担うxAIの昨年の売上高は32億ドルにとどまる一方、営業赤字は64億ドルに達した。赤字額は前年の約16億ドルから大幅に拡大した。

A Tesla Cybertruck drives past SpaceX facilities in Hawthorne, California, US, on Monday, April 13, 2026.

xAIのチームは、マスク氏率いる電気自動車(EV)メーカーのテスラと共同で、「Macrohard」と呼ぶエージェント型AIプラットフォームを開発している。スペースXは、この技術がデジタル業務を自動化し、企業運営の在り方を変える可能性があるとみている。

また、スペースXはテスラとの提携を通じた半導体工場建設も成長戦略として打ち出しており、その投資総額は最大1190億ドルに達する可能性がある。マスク氏は3月、「テラファブ」構想を公表し、ロボットや宇宙、AI事業向け半導体の自社生産が必要だと強調した。

スペースXは目論見書で、「この取り組みは将来的な半導体不足の緩和と計算性能の最適化につながる」と説明。その上で、「テラファブは世界最大の半導体工場になる」としている。

一方、xAIは競合に比べ出遅れており、収益強化に向けてチャットボット「Grok」の導入先をウォール街や米政府機関に広げようとしている。ただ、人員採用と削減を繰り返しており、開発体制はなお不安定だ。

スペースXのAI事業を巡る議論は、「Grok」の競争力から、計算資源の提供で巨額収益を生み出せるかへと移りつつある。

原題:SpaceX Joins Battle for Control of $26.5 Trillion AI Market (1)(抜粋)

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