米中首脳会談は一定の成果も、両者の「時間軸」が認識の相違の背後に影響

米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席は、5月14日から15日にかけて北京で首脳会談を行った。会談では、中東情勢や台湾問題、貿易・投資など多岐にわたる議題が協議されたことが明らかにされた。

なかでも、米国の訪中団には主要閣僚のみならず、大手企業のトップが同行し、首脳会談を通じて米国が中国の市場開放を重視していることがあらためて示された。

米国政府が公表した声明文でも、米国企業による中国市場へのアクセス拡大のほか、中国企業による米国への投資拡大など経済協力を強化する方針で合意したことが明らかにされた。

また、中国が今後3ヶ年で少なくとも170億ドルの米国産農産品を輸入することで合意する「商談」も明らかにし、中国政府の発表でも関税引き下げを通じて農産品などの貿易を拡大し、非関税障壁や市場アクセスの問題について解決、または実質的な進展について合意したとした。

なお、トランプ氏は中国がボーイング機を200機購入することで合意したと述べたものの、中国政府の発表では、米国製航空機の購入と米国による中国への航空機エンジンや部品の供給保証に関する取り決めに言及する一方、その詳細は示されておらず、両者の間に認識の隔たりがある可能性は残る。

また、米国政府の発表では、機密性の低い品目の貿易を管理する貿易委員会と、投資案件を協議する投資委員会の創設を議論することを明らかにしている。

中国政府の発表においても、貿易と投資に関する二国間の委員会設置で合意したことを明らかにしており、両国間の貿易戦争の休戦状態が確実になることを意味する。

ただし、米国政府の発表ではすべての合意事項が確定したと読める一方、中国政府の発表では準備段階の「暫定合意」であり、詳細については今後開催される委員会で最終合意に向けた詰めの協議が行われると読める。

その意味で、米中間の「温度差」は否めない。背景には11月の中間選挙までに成果を上げたい米国と、中国の間で時間軸に違いがあることが影響している可能性がある。

なお、中東情勢については、イランが事実上封鎖するホルムズ海峡について、米中がともに開放の重要性で一致するとともに、通行料徴収に反対し、イランの核保有にも反対したことで一致したとした。

中国はイラン産原油の9割以上を輸入しているうえ、原油輸入の6割近くを中東産原油に依存しており、中東情勢の緊迫化の影響に直面している。

その一方、中東依存の回避へロシア産原油の輸入を拡大させるとともに、カナダや南米諸国、アフリカ諸国などからの原油輸入を拡大させるなど、調達先の多様化を図っており、現時点でも原油備蓄の放出を回避している。

中東情勢の安定化は中国にとって望ましい一方、中国政府はそもそもイランへの軍事行動を起こすべきではなかったとの立場を示すなど、事態鎮静化に向けて中国が積極的に動く可能性を明示していない。

そのうえ、中国の軍事技術がイランの非対称戦を事実上後押ししていることを勘案すれば、これを止める誘因は小さいと考えられる。

米国での供給懸念が顕在化している中国によるレアアースの輸出規制に関する協議については、米国政府の発表では中国が米国の懸念に対応することを明らかにしている。

その一方、中国政府の発表にはレアアースに関する言及はなく、中国が経済安全保障上の「核心」と位置付けるなかで両者の間で依然として認識の隔たりが大きいことを示唆している。

両国の間でAI(人工知能)をはじめとするテクノロジーを巡る問題が顕在化するとともに、その核心である半導体輸出規制について動きが出るとの観測もみられた。

しかし、USTR(米通商代表部)のグリア代表は半導体輸出規制が主要議題ではないと述べるとともに、トランプ氏も中国が米国製半導体の輸入を承認しておらず、その理由に中国が自国開発を優先していることを挙げるなど、隔たりの大きさがあらためて示された。

その意味では、前述したように米国は経済的な結びつきを重視し、なんらかの「取引(ディール)」を目指したとみられるが、「期待外れ」の結果に終わったと考えられる。