(ブルームバーグ):高市早苗首相は18日の政府与党連絡会議で、補正予算の編成を含め検討するよう片山さつき財務相に指示したと明らかにした。これまで補正予算は直ちに必要ないとの姿勢だったが、一転して表明に踏み切った。
背景には中東情勢の緊迫でエネルギー価格の高騰が収まらない事情がある。エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡は実質的な封鎖が続く。報道によると、ガソリン補助の基金残高は4月末時点で9800億円。今年度当初予算の予備費も1兆円あるが、電気・ガス代の補助も重なれば、手元予算が枯渇する可能性は高まる。
高市首相は会議の席上、電気・ガス需要が高まる7-9月について、昨年の料金水準を下回るように支援を実施するよう、与党の政調会長間での調整を要請したと明らかにした。

中東情勢が国民生活に与える影響を踏まえ「リスクの最小化の観点から万全の備えを取る」と強調。片山財務相には先週指示したという。規模とともに新規国債の追加発行が必要かどうかが今後の焦点となる。
片山財務相は、補正予算に関して資金面も含めあらゆるリスクを最小化するよう高市首相から指示があったことを認める一方で、「具体的なことを申し上げる状況ではない」と述べた。主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に出席するため訪問しているフランス・パリで一部記者に語った。
高市首相は「現時点で直ちに必要な状況とは考えていない」との答弁を繰り返してきた。ただ、20日に党首討論が行われることが決まり、補正の対応で野党からの追及を避けたいとの思惑も透ける。当初予算成立からわずか1カ月余りでの早期の補正の検討表明となった。
会議後、記者団の取材に応じた日本維新の会の吉村洋文代表は、補正の規模は現時点で決まっていないとしつつ、財源については「当然財務コントロールしながらやっていくことが重要」との認識を示した。
政府はガソリン価格を1リットル当たり170円程度に抑えるため、予備費を財源に補助を続けている。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは13日付リポートで、1リットル当たり約42.6円の補助を続ける標準シナリオの場合、既存の基金は6月29日までに枯渇する可能性があると試算した。
事情に詳しい複数の政府関係者によると、今回の補正は包括的に支援項目を盛り込む「経済対策」ではなく、突発的な事態に財政支援を行う災害対応的な側面が大きくなる見込みという。

歳出項目として、一般的な予備費とは別枠で積み上げる可能性もある。新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年度補正予算で同感染症対策予備費として1兆5000億円を計上。ロシアによるウクライナ侵攻が始まった24年度は第2次補正予算でウクライナ情勢経済緊急対応予備費1兆円を創設した。
補正予算を巡っては、国民民主党が15日に片山財務相に3兆円規模を求める提言を提出した。歳出規模が大きくなれば財源探しがいっそう難航する。新年度が始まったばかりで、税収の上振れや国債費の不用がどの程度出るか読み切れない事情もあり、賄いきれなければ国債の追加発行は避けられない。
ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次エグゼクティブフェローは、イラン問題で状況が変わったとして「市場との対話は数カ月前よりもはるかに難しくなっている」と指摘。補正の規模や新規国債の追加発行の有無などで、市場の反応が大きくなる可能性があるとの見方を示した。
ロイターは18日、事情に詳しい政府関係者の話として、補正予算財源に赤字国債の発行を検討していると報じた。
共同通信が14日に政府が補正予算の編成を検討していると伝えると、債券市場は金利上昇で反応。長期金利の指標となる新発10年債利回りは18日に2.80%と、1996年以来の高水準を更新した。財政に対する市場の感応度が高まる中、政府には規模や財源についての慎重な判断が求められる。
(エコノミストコメントを追加して更新しました)
--取材協力:横山恵利香、広川高史、藤岡徹、畠山朋子.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.