(ブルームバーグ):世界保健機関(WHO)は、コンゴ民主共和国(旧ザイール)とウガンダで発生したエボラ出血熱の流行について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。承認済みのワクチンや治療薬が存在しない希少なウイルス株が、把握されている以上に広範囲に拡大している恐れがあると警告した。
17日の発表によると、「ブンディブギョ株」エボラウイルスの今回の流行は、国境を越えた感染、原因不明の集団死亡、流行規模に関する大きな不確実性を理由に、国際保健規則上の最高警戒水準の基準を満たした。
宣言は、ウガンダの首都カンパラと、人口約2000万人のコンゴ首都キンシャサで感染が確認されたことを受けたもの。最初に確認された遠隔地の鉱山地帯を越えて、ウイルスが拡散していることが裏付けられた。
WHOのテドロス事務局長は発表資料で、「この事態は異例と判断される」と述べ、ブンディブギョ株に特化した承認済みワクチンや治療薬が存在しないこと、コンゴ東部で治安不安が続いていること、流行規模が公式の感染者数を大幅に上回る可能性を示唆する証拠があることなどを挙げた。

アフリカ疾病対策センターによると、コンゴでは5月16日時点で、東部イトゥリ州で検査による感染確認8件、感染の疑い336件、感染が原因とみられる死亡例87件が報告されている。ウガンダでは、コンゴからの渡航者の中からカンパラで2件の感染が確認され、うち1人が死亡した。
今回の流行は、確認に至るまで数週間にわたって検知されないまま広がっていた可能性がある。初期検査では、異なる地域から採取された13検体のうち8検体でエボラ陽性が判明し、イトゥリ州と隣接する北キブ州全域で、さらなる原因不明の死亡例や疑い例が報告されている。
少なくとも4人の医療従事者が、ウイルス性出血熱と整合する症状で死亡しており、診療所や病院内での感染拡大が懸念されている。
PHEICは、国際的な資金調達、調整、緊急対応の取り組みを動員することを目的としている。同様の宣言は、2024年にエムポックス(サル痘)が指定されて以来となる。
ただWHOは、新型コロナウイルス感染症を受けて改定された国際保健規則の下で新設された「パンデミック緊急事態」の宣言には踏み込まなかった。
最も希少
ブンディブギョ株のエボラウイルスは、人間に感染するエボラウイルスの中でも最も希少な種の一つ。これまでに記録された流行は、07年のウガンダと12年のコンゴ東部の2例のみで、両例を合わせた感染者数は、現在の流行ですでに確認されている数を下回る。
エボラのワクチンや抗体治療薬の大半は、10年前に1万1000人以上の死者を出した西アフリカでの大流行を受け、より一般的で致死率の高いザイール株に対して開発されたものだ。
テキサス大学医学部の生物学的封じ込めケアユニットのスーザン・マクレラン所長は15日のインタビューで、「エボラ・ザイール株が最も注目を集めてきたのは、それなりの十分な理由があってのことだ」と語った。
WHOは、各国に対し国境封鎖や渡航・貿易制限を行わないよう求めた。こうした措置は効果が乏しく、監視されていない経路を通じた人の移動を助長しかねないとしている。
近隣諸国に対しては、監視や検査体制、感染管理対策の強化を要請。コンゴ東部の治安不安、住民の避難、鉱山関連の活発な人の移動が、封じ込めの取り組みを複雑にしかねないと警告した。
迅速なワクチン開発を呼びかけ
今回の流行の中心はウガンダ国境に近いイトゥリ州で、金鉱の町モングブワルとその周辺も含まれる。同地域では、労働者が遠隔地の採掘場と地域の交易拠点との間を頻繁に行き来している。
WHOは、感染が確認された一部の地域が都市部または準都市部であることが、さらなる拡大リスクを高めていると指摘。18-19年に北キブ州とイトゥリ州で発生したコンゴ最大級のエボラ流行を挙げた。また、実験段階のワクチンや治療薬の臨床試験を急ぐよう呼びかけた。
衛生当局は、モノクローナル抗体や米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬レムデシビルを含む複数の治療候補を検討しているが、いずれもブンディブギョ株向けに承認されたものではない。英オックスフォード大学や米モデルナなどが手掛けるワクチン候補も評価対象となっている。
今回の宣言は、米国の対外援助や疾病監視プログラムの削減により、脆弱(ぜいじゃく)な地域での流行対応能力が弱体化しかねないと、国際的な保健専門家が警鐘を鳴らしているさなかに出された。
コンゴはこの半世紀で十数回に上るエボラ流行に対処してきており、封じ込めに関しては世界で最も経験豊富な国の一つとされる。だが紛争や脆弱なインフラ、当局への不信感が、東部地域での対応をたびたび難しくしてきた。
原題:WHO Declares Congo Ebola Outbreak Global Health Emergency (1)(抜粋)
--取材協力:Janice Kew.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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