ゴールデンウィークが終わり、朝の通勤電車やオフィス街にもすっかり「通常モード」の空気が戻っています。五月病になる暇がないほど、今週は国際政治のビッグイベントが相次ぎました。

イラン戦争は開戦からまもなく3か月。混乱の影響が日常に静かに入り込み始めています。今週の見逃せない世界と市場の動きを五つ厳選して振り返ります。

1. 習氏が台湾問題で警告

トランプ米大統領が5月13日から15日に中国の北京を訪れ、習近平国家主席と会談しました。現職の米大統領の訪中は約9年ぶりで、「経済・貿易」「イラン情勢」「台湾問題」の3つが主な焦点となりました。

今回の会談で最も注目を集めたのが、習氏による台湾問題を巡る発言です。習氏は「米中関係で、台湾問題は最も重要な問題だ。対応を誤れば、両国は衝突、さらには紛争に至りかねず、米中関係全体を極めて危険な状況に追い込むことになる」と警告。超大国として自信を深める中国が、台湾問題の重要性をトランプ氏に刻み込む狙いがあると考えられています。

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15日の2日目の会談は一転して「安定」と「実利」が強調されました。2人は散策や茶会で親密さを演出し、今後の米中関係を「建設的で戦略的な安定」と定義することで一致しました。

経済・貿易分野では、両首脳は米国企業の中国市場へのアクセス拡大について協議。中国側も「今後もいっそうの対外開放を進めていく」としており、米国産エネルギーや農産物の購入増加に関心を示しているといいます。

一方で、目立った言及がなかったのがイラン情勢です。ただし、匿名を条件に取材に応じた米当局者によると、イランの核兵器保有に反対することで両国が一致したとのことです。

2. ホルムズ海峡封鎖と半導体

SKハイニックスのウエハー模型を持つロボットアーム

米国がイランの和平提案を拒否したことで、両国の停戦合意は危機的な状況を迎えています。ホルムズ海峡の封鎖がこのまま続くと、大きな影響を受ける分野の一つが半導体。製造に使われる各種材料だけでなく、半導体工場の電力を支える「液化天然ガス(LNG)」は、世界供給量の5分の1がこの領域を通過するためです。

半導体は、スマートフォンや自動車、人工知能(AI)などに必要不可欠なもの。このまま封鎖が続くと、世界の半導体サプライチェーンが停止するリスクが高まるため、身近なトピックだと言えるでしょう。AIブームを背景に需要が底堅いことから、市場関係者や個人投資家も半導体関連株の行方に注目しています。

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3. 白黒ポテチ「インクショック」

イラン戦争が変えた世界は、エネルギーのサプライチェーンだけではありません。「色」もです。

カルビーは12日、スナック菓子の「ポテトチップス」や「かっぱえびせん」など一部の主力製品のパッケージを白黒のデザインに変更すると発表しました。中東情勢の影響を受け、印刷用インクや原材料のナフサなど一部原材料の調達が不安定になっていることが背景にあります。

この動きは他の食品メーカーにも広がっており、カゴメが「トマトケチャップ」の外装パッケージを透明のデザインに変更すると発表したほか、伊藤ハム米久ホールディングスも、資材やインクの調達環境が不透明になる中、パッケージの仕様変更を幅広く検討しています。

  • カルビー、「ポテトチップス」などのパッケージを白黒に-インク不足
  • カゴメトマトケチャップ外装、印刷減らすデザインに-中東情勢で

4. 屈指の「日本通」ベッセント来日

来日したベッセント米財務長官と片山さつき財務相が12日、財務省内で会談しました。主要なテーマの一つが為替動向。円相場は4月30日以降、大型連休中にも断続的に上昇し、政府・日本銀行が為替介入に踏み切ったとみられます。

日本政府は介入を行ったかどうかについて直接的な言及を避けているものの、日銀が公表する当座預金増減要因のデータをブルームバーグが分析した結果、日本の大型連休が終わる5月6日までに最大10兆円超規模の介入があった可能性が高いとみられます。

会談後の会見で片山財務相は「日米間で非常によく連携してきていることを確認した」と説明。今後とも昨年9月の日米財務相共同声明に沿って緊密に連携することで「全面的にご理解を得た」と話しました。

  • 日米財務相、為替対応で「緊密な連携」を確認-5回目の対面会談
  • 円売り圧力再燃の1週間、当局介入後の安値更新-市場は再介入を警戒
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5. ミュトスのアクセス権、3メガに

最新AIモデル「Mythos(ミュトス)」を開発した米アンソロピック

米アンソロピックが開発した最新AIモデル「Mythos(ミュトス)」について、日本の3メガバンクがアクセス権を確保できる見通しとなったことが関係者への取材で分かりました。日米間の連携を深め、サイバー攻撃に備えるのが狙いです。

ミュトスは、ソフトウエアの脆弱(ぜいじゃく)性の検出能力が極めて高く、悪用されればインフラの混乱を引き起こす可能性が指摘されています。

現在は米国で一部の企業・団体にのみ公開されているものですが、金融システムなどへのサイバー攻撃が起きれば、影響は計り知れません。金融庁も金融業界やIT企業とミュトス対策の作業部会を開き、対応を検討しています。

  • 最新AI「ミュトス」のアクセス権、3メガバンクが確保へ-関係者
  • ミュトス対策の作業部会14日に初開催、政府と金融・IT企業らが対応検討

今週のおすすめ特集:「中国軍のミサイル増産の実態」

中国軍が進めるミサイル増産の実態について、ブルームバーグは関連企業80社の開示資料を独自に分析しました。

これらの企業をみると、過去最高の売上高を記録した企業の割合は、習政権の発足以降で昨年が最も高いことが分かりました。この結果は、中国のミサイル計画拡大に向けた新規受注が急増していことを示しています。

台湾を巡る緊張が高まる中、中国は何を準備しているのか。週末にぜひ読んでいただきたい分析リポートです。

  • ベールに包まれた中国のミサイル、増産の兆候-関連80社の開示情報を分析
中国の国有ミサイルメーカーと関連する上場企業のうち4割が昨年、過去最高の売上高を記録したことが分かった

国際政治や半導体市場が熱を帯びる一方、日本は全国的に30度以上の真夏日が続出しそうです。エアコンの点検はお早めに。それでは素敵な週末を。

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