人工知能(AI)ブームを背景に株価が急騰しているキオクシアホールディングスは15日、4-6月期(第1四半期)の営業利益が前年同期比約29倍の1兆2980億円になる見通しだと発表した。

AI需要の急拡大を背景に、キオクシアHDが強みとするNAND型フラッシュメモリーの供給不足が継続していることが好業績につながっており、ブルームバーグが事前に集計したアナリスト10人による市場予想の平均値(8741億円)を上回った。

同四半期の売上高は同5.1倍となる1兆7500億円の見通し。前期の営業利益は前の期比93%増の8704億円となった。会社側は通期の業績予想を示していないが、市場予想の営業利益平均値は4兆1748億円となっている。

キオクシアHDの株価は15日終値ベースで年初来で約4.3倍まで上昇、時価総額は24兆2735億円と日本の全上場企業でトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソフトバンクグループに次ぐ4位につけている。1-3月期の販売単価は25年10-12月との比較で2倍以上と猛烈なスピードで成長を続けており、昨年末の時点では43位で5カ月もかからず上位に浮上した。

半導体銘柄が全体的に活況な中でもキオクシアHDのパフォーマンスは群を抜いている。4月から日経平均株価の構成銘柄に新たに採用され、当面は日本株の相場をけん引する存在となりそうだ。

太田裕雄社長は15日の会見で、AIは社会の基盤となり、市場の力強さは今後も続く見込みだと述べた。生成AIからエージェント型AIやフィジカルAIへとデータ活用は多様化して高度化していくとみている。太田氏は、「AI活用による社会変革を支える企業として中長期的な成長を目指す」と述べた。

有利な局面

AIブームは少なくとも30年くらいまで続くと岩井コスモ証券の斉藤和嘉アナリストはみている。AI向けデータセンターは大量のデータを生成してそれを長期に保存する需要が加速しており、生成されるデータ量が急激に増えている中、データを蓄積するためのNAND型フラッシュメモリーへの需要は当面衰えることはないという。

好業績の理由の背景には、AIの中でも「学習」から「推論」に市場がシフトしていることが追い風になっていると斉藤氏は指摘する。推論の拡大に伴いデータ量が指数関数的に増えており、データ処理需要の拡大を背景にDRAMを積層してつくる高帯域幅メモリー(HBM)をサポートする用途やハードディスク駆動装置(HDD)を代替する用途での引き合いが増えていると述べた。

キオクシアの製品(2025年10月14日、千葉市)

韓国のサムスン電子やSKハイニックス、米マイクロンテクノロジーといった競合はHBMに経営資源を集中させ、NAND型フラッシュメモリーの生産能力増強は限定的にとどまっていると指摘。そのため、NANDを専業とするキオクシアHDは「NAND型の需要拡大をフルに享受できるポジションにある」と述べた。

NAND型フラッシュメモリーは長期データ保存に適しており、学習データを蓄積する性能を持つ。キオクシアHDのステイシー・スミス会長は1月のブルームバーグとのインタビューで、NAND型フラッシュメモリー専業の同社にとって有利な局面に入っているとの認識を示していた。

ブルームバーグ·インテリジェンスの若杉政寛アナリストは、キオクシアHDについて、他社と比べて少ない投資で供給を増やしてきたほか、ハイエンド製品向けの技術も磨いてきたとの見方を示した。

キオクシアHDの強みは高密度化技術にあると岩井コスモ証の斉藤氏はみている。同社は単位面積当たりの記憶容量で競合を上回り、層数は相対的に多くなく縦方向にも横方向にも高密度なNAND型フラッシュを実現できることが、コスト競争力の優位性につながっているとした。

米預託証券の上場も

業績好調を受けて、市場では配当実施への期待が高まっている。だが、キオクシアHDは15日、中間配当を0円との予想を公表、無配が継続する。

河村芳彦最高財務責任者(CFO)は株主還元の方向性について、配当や自社株買いを含めて幅広い企業価値向上などを検討しているとし、6月に予定しているIR説明会で示すと述べた。その上で、自社株買いよりも「まずは配当を優先するべき」との考えを示した。理由について足元では株価水準が高く、自社株買いを実施しても株価への効果は限定的と判断していると説明した。

同社はまた、普通株式を対象とした米国預託証券株式の上場に向けた準備を進めていることも明らかにした。

キオクシアHDはかつて東芝の中核事業だったが、米原発事業の損失を穴埋めするため18年にベインキャピタル主導の「日米韓連合」に2兆円で売却された。その後、24年に上場していた。

(決算会見からのコメントなどを追加して更新します)

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