クリーンエネルギー革命にとって昨年は大きな前進の年だった。太陽光パネルや風力タービンといった再生可能エネルギーの導入量は、先進国だけでなく、新興国でも過去最高を記録した。

だが、その後、イラン戦争という想定外の事態が起き、われわれの将来を予測困難な形で左右しかねない状況となった。ロシアによるウクライナ侵攻に端を発したエネルギー危機からわずか4年で再び試練に直面する中、クリーンエネルギーの拡大トレンドが影響を受けるのかが差し迫った課題となっている。

こうしたショックは、再生可能エネルギーの重要性を高める一方で、インフレや金利の上昇、サプライチェーンの混乱といった新規プロジェクトへの投資に不利な財政・経済環境も生み出す傾向にある。

では、どちらの力が勝るのか。それを探るには過去の例が参考になる。

1973年の第4次中東戦争と79年のイラン革命を契機とする2度にわたる石油ショックは、省エネの推進を後押しした。米国では全国的な最高速度制限が導入され、大型で燃費の悪い車は敬遠されるようになった。

他国も代替エネルギーの模索を進め、デンマークは風力発電に軸足を移し、フランスは10年間で50基の原子炉建設に踏み切った。世界は依然として化石燃料に依存していたが、危機は重要な変化のきっかけとなった。

ロシアのウクライナ侵攻に伴う2022年の原油高は、再生可能エネルギーの安全保障上の利点が真の意味で認識された初めてのエネルギーショックだった可能性がある。

各国は移行を加速させ、再生可能エネルギーや電化への投資を拡大したが、順風満帆ではなかった。高金利は特に風力発電に打撃を与え、サプライチェーン上の制約やプロジェクト中止、雇用削減を招いた。それでも70年代と同様に、最終的には前進につながった。

先月公表された2本の報告書は、イラン戦争前の段階で成果が表れ始めていたことを示している。国際エネルギー機関(IEA)のグローバル・エナジー・レビューによると、太陽光発電の伸びは特に顕著で、25年のエネルギー分野の成長において最大のけん引役となった。また、新規の再生可能エネルギー導入容量は800ギガワット(GW)と過去最高に達した。

シンクタンクのエンバーは、昨年のエネルギー需要増加分がクリーンエネルギーで全て賄われたと報告。また、象徴的な変化として、再生可能エネルギーが世界の発電構成において石炭を上回った。発電量に占める石炭の割合は史上初めて世界全体の3分の1を下回った。

この成長の主因はコストだ。例えばパキスタンでは、エネルギー不足と送電網の不安定さを背景に、屋上太陽光パネルの設置が急増した。

シンクタンクのエネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)とエネルギーコンサルティングを手がけるリニューアブルズ・ファーストの分析によると、その結果、パキスタンは21年から26年初めにかけて約120億ドル(約1兆9000億円)相当の石油・ガス輸入を回避できた。イラン戦争によって価格が高止まりすれば、年末までに推定でさらに63億ドルの節約につながる可能性がある。

化石燃料値上がりの影響はアジアで最も大きく表れているが、欧州もジェット燃料やディーゼルを中心に打撃を受けている。欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、EUの化石燃料輸入額がわずか60日で270億ユーロ(約5兆円)余り増加したと述べた。

一方、フランスやスペインのように再生可能エネルギー導入が進んでいる国では、戦争が長引いても電力価格は相対的に低水準にとどまる見込みだ。

こうした状況は再生可能エネルギーの拡大を後押ししそうに見えるが、イラン戦争は新たな障害ももたらしている。クリーン技術メーカーは、ホルムズ海峡の事実上の封鎖による影響をサプライチェーンの面で受けることになる。ニッケルや銅、コバルト、リチウムといったクリーンエネルギー関連金属の生産に不可欠な原料は同海峡を通じて輸送されており、太陽光パネルの原材料も同様だ。価格上昇や供給不足が見込まれる。

戦争の経済的負担により、各国は気候関連投資を削減して燃料や食料価格の高騰対策に資金を振り向けざるを得なくなる恐れもある。22年のように金利が再び上昇すれば、資本集約型の風力や太陽光プロジェクトは打撃を受ける。オックスフォード大学スミス・スクールの研究では、資金調達コストの上昇は化石燃料よりも再生可能エネルギーの競争力に大きな悪影響を与える。

ただ、過去の危機とは状況が異なる面もある。それは意識の変化だ。環境保護活動家ビル・マッキベン氏は4月上旬、「太陽光や風力といった再生可能エネルギーの方向へと人々の意識が決定的に変化した」と分析。化石燃料はかつて信頼性が高く安価だと考えられ、天候や時間帯を問わず、エンジンを動かしたり燃料を燃やしたりすれば、電力や熱、光を得ることができた。

化石燃料への依存はもはや経済成長の安定した基盤ではないとの理解が広がりつつある。エンバーのシニアデータアナリスト、ニック・フルガム氏は22年のエネルギーショックを振り返りつつ、「4年周期でこのような高インフレ期を経験したいとは人々は思っていない」と指摘する。

世論調査もこれを裏付けている。ポリティコの委託で調査会社クラスター17が3月に実施した調査では、再生可能エネルギーへの移行を支持する声が多く、エネルギーコストが短期的に上昇しても欧州は移行を加速すべきだと答えた人が39%に上った。一方、環境への影響よりも価格を優先すべきだとした回答は17%にとどまった。

政策的に合理的な国ではクリーンエネルギーへの政治的支持が急速に高まっている。韓国の李在明大統領は3月末に演説し、化石燃料依存が続けば、国家の将来が危うくなると宣言。政府はその1週間後、再生可能エネルギーの拡大策を打ち出した。この計画では、石油や天然ガス、石炭の世界有数の輸入国である韓国が、30年までに100GW分のクリーンエネルギーを導入する計画だ。

また、インドネシアは昨年8月、太陽光発電を100GW規模で整備する計画を発表。プラボウォ大統領は先月、この計画の実行を加速させるよう呼びかけ、今年中にディーゼル発電を10GW削減することを目標に掲げた。

ミリバンド英エネルギー安全保障・ネットゼロ相は先月の演説で、「化石燃料による安全保障の時代は終わり、クリーンエネルギーの時代が本格化しなければならない」と述べた。まさにその通りだ。

(ララ・ウィリアムズ氏は気候変動分野を担当するブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

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原題:The Era of Fossil-Fuel Energy Security Is Ending: Lara Williams(抜粋)

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