中国は資金の貸し手および貿易相手としての役割を通じ、他国との関係の枠組みを形作る力を強めている。中国経済への依存は、中国が定める「レッドライン」、つまり越えてはならないとする一線を無視しにくくさせる。

その最新の例が、ある会議の中止だ。デジタルに関する権利についての世界最大級の会議「RightsCon」を主催するニューヨークの団体アクセス・ナウは、先週開催予定だったザンビアでの年次会合を直前で中止した。

ザンビア政府は議題を「国家の価値観」と整合させる必要があるとして会議の延期を発表。しかし、アクセス・ナウは声明で、別の理由を指摘した。

台湾からの活動家の参加を巡り中国から圧力があったと話す複数のザンビア当局者とのやり取りに触れ、2026年の会議が「ザンビアおよびオンラインで開催されない理由は外国からの干渉にあると考えている」とコメントした。

中国政府は関与を公に認めておらず、ザンビア政府も当初の見解を維持している。それでも今回の一件は静かな警告を発している。中国共産党は台湾を自国の一部と主張。その台湾を巡り中国のレッドラインを越えれば、経済的・外交的コストが伴うということだ。

もっとも、ザンビア国内の事情も問題だ。市民団体は言論の自由への制約や批判に対する政治的な敏感さに懸念を示しており、こうした要因が会議延期の決め手となった可能性もある。

ただし、南部アフリカのザンビアと中国の経済的関係からは、中国の影響力に関し一つの洞察が得られる。ザンビアは中国輸出入銀行に40億ドル(約6300億円)を超える債務を負っている。

RightsCon中止の数日前には、ザンビア開発庁が発電能力拡大に向け中国機械設備工程と15億ドルの契約を結んだ。RightsConの会場となるはずだったムルングシ国際会議センターも、中国政府の資金で改修されていた。

中国政府は、これらは純粋にファイナンスの案件であり、条件は付いていないと主張しているが、借り手が抱えるリスクが露骨な圧力とは限らない。もっと微妙な形、すなわち中国に頼る国の政府が、中国の優先事項に合わせて自発的に判断を調整する「静かな順応」だ。

問題は単なる会議の中止にとどまらない。中国が関与する場合、国際的な市民社会の活動が地政学的圧力から切り離されたままでいられるのかという難題を突き付けている。

こう危惧しているのは、表現の自由を推進する団体アーティクル19のグローバル・チャイナ・プログラム責任者マイケル・キャスター氏だ。「ザンビアで起きたことは、今後の会合における安全性や市民社会のアクセスにも疑問を投げかける」と論じた。

米中首脳会談巡る懸念

こうした圧力は、中国が影響力を行使する広範なパターンを反映しており、特に台湾を外交的に孤立させる取り組みで顕著だ。

4月には台湾の頼清徳総統によるエスワティニ(旧スワジランド)訪問が直前で延期された。セーシェルとモーリシャス、マダガスカルが、中国からの圧力とされる理由で、頼氏の搭乗機に対する上空通過許可を取り消したためとされている。

中国政府は圧力を否定しているが、国名には触れずにそうした対応を称賛した。3カ国はいずれも中国と強い経済関係を持つ。一方、エスワティニは台湾との正式な外交関係を持つアフリカ唯一の国だ。

頼氏は5月、最終的にエスワティニ訪問を実現したが、台湾との外交関係維持には代償が伴う。エスワティニは、中国が導入したアフリカ向け無関税貿易枠組みから除外されたただ一つのアフリカ国家だ。

アフリカは、中国の世界的な経済・政治的影響力にとって重要性を増している。アフリカ各国の世論は世界の多くの地域よりも中国に好意的だ。これが、政府による静かな順応を正当化しやすくする可能性もある。経済的な対中依存に関し、国民からの支持が容易に得られるためだ。

中国が抱く政治的期待に対してノーと言いにくくなることも考えられる。台湾のダブルシンク研究所が発表するチャイナ指数によれば、中国の影響を最も受けている上位10カ国のうち4カ国はアフリカのナイジェリア、ジンバブエ、アルジェリア、南アフリカ共和国だ。

こうした傾向は、アフリカに限らない。複数の航空会社が中国の圧力を受け、ウェブサイト上で台湾の表記を変更している。中国政府はまた、台湾の世界保健総会(WHA)出席を阻止し、台湾は五輪に「チャイニーズ・タイペイ」の名称で参加せざるを得なくなっている。

台湾を国家として承認している国は減りつつあり、トランプ米大統領が今週、中国共産党の習近平総書記(国家主席)と会談することで、緊張はさらに高まる見通しだ。中国側は台湾を最優先議題に据えると明確にし、米国に対し内政問題に関与しないよう警告している。

台湾政府は、トランプ氏が通商上の譲歩と引き換えに、従来の対中政策を軟化させる可能性の兆候がないか神経をとがらせている。

対中スタンスが実際に軟化すれば、これまでで最も重大な「静かな順応」となる。それは債務を抱えるアフリカの国ではなく、世界一の経済大国、米国によるものだ。トランプ政権は台湾海峡の安定維持が米国の国益に資するとしている。

台湾や日本など米国のパートナーは、中国の意向が第三国や大国間の首脳会談に影響を及ぼす広範なリスクを米政府に明確に伝える必要がある。

中国を避けるよう各国に求めることが答えではない。各国が中国に対しノーと言うコストを引き下げることが肝要だ。信頼できる代替的な資金供給や透明性の高い債務・インフラ取引、そして必要な開発プロジェクトへの支援が欠かせない。

条件の付かない関係は理想的に聞こえるが、現実にはほとんど存在しない。ザンビアの事例が示す教訓は、中国との経済的結び付きには中国の期待が伴うということだ。それに対処するには、より明確な境界と強力な代替手段が求められる。さもなければ、世界は静かに中国の意向に従って動くことになる。

(カリシュマ・ヴァスワニ氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、中国を中心にアジア政治を担当しています。以前は英BBC放送のアジア担当リードプレゼンテーターを務め、BBCで20年ほどアジアを取材していました。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの見解を反映するものではありません)

原題:A Warning From Zambia About China’s Reach: Karishma Vaswani(抜粋)

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