(ブルームバーグ):サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコのトレーディング部門やアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油(ADNOC)が、イランがホルムズ海峡を事実上封鎖して以降も、同海峡を通じて原油貨物を輸送していることが、事情に詳しい関係者への取材でわかった。
原油の総輸送量は、イランが約10週間前にホルムズ海峡を閉鎖する以前と比べると引き続きごくわずかにとどまっている。それでも、両社の活動は、一部の供給が世界市場に到達していることを示している。イランは戦争中、ホルムズ海峡で航行する船舶に対し威嚇や妨害をしている。
アラムコはコメントを控え、ADNOCはコメント要請に応じなかった。
ホルムズ海峡が閉鎖されていることで、世界的な供給危機は日を追うごとに深刻化している。企業は出荷を実現するためにより大きなリスクを取り、より高い価格を支払っている。多くの船舶が、検知を避けるためトランスポンダーの電源を切った状態で輸送を行っている。

関係者によると、ペルシャ湾内に生産や供給が滞留している企業の中で、ADNOCは原油、燃料、ガスの貨物のホルムズ海峡経由での輸送をいち早く始めた。同社は、通常はアブダビ沖のジルク島から積み出されるアッパー・ザクム原油を、ペルシャ湾の外側に位置するフジャイラ沖から顧客に提供していた。
4月下旬、アブダビ産原油を積載した超大型タンカーが、トランスポンダーを切った状態で、厳重な警戒下にあるホルムズ海峡を航行し、戦争開始以降数百隻の船舶が足止めされているペルシャ湾から脱出を果たした。
データ分析会社クプラーによると、7日時点で、別の超大型タンカー「フジャイラ・エナジー」もアブダビ沖の湾内で待機しており、船舶間移送によって受け取ったジルク島産原油を半分ほど積載していることが示されている。ブルームバーグが確認した契約によると、この船はADNOCが15-17日、アジア向けの原油を積載するため仮に用船していた。ペルシャ湾からの脱出を試みる前に、さらなる原油受け取りを待っている可能性がある。
中東全域で攻撃が激化した今週、ADNOCの物流子会社の石油タンカー「バラカ」が、海峡通過中にオマーン沖でイランのドローン攻撃を受けた。船舶追跡データによると、同船は攻撃を受けた際、トランスポンダーを停止していたとみられる。
これとは別に、ペルシャ湾内にあるUAEのハムリヤ港では、陸上貯蔵施設に保管されていた石油製品がタンカーに積み込まれて搬出されていることが、海運データから示された。データによると、3月26日に石油・化学品タンカー「ムジーク」がハムリヤ石油ターミナルでナフサ貨物を積み込み、5月1日にホルムズ海峡を通過した。積み込みにどの企業が関与しているかは不明だ。
他の企業もリスクを承知で、トランスポンダーを停止してホルムズ海峡通過に踏み切っている。これにはギリシャのダイナコム・タンカーズ・マネジメントが含まれる。メルクリア・エナジー・グループのマルコ・ドゥナン最高経営責任者(CEO)は4月、自社の船舶も脱出させることができたと述べ、実際に航行しているタンカーの数は船舶追跡データに表れているより多いと明かした。
ブルームバーグがまとめたタンカー追跡データによると、ホルムズ海峡を通過するイラン以外の原油の流れは3月初旬以降、日量平均約50万バレルまで落ち込んでいる。戦争開始前の2カ月間は、日量平均約1360万バレルだった。
原題:Aramco, Adnoc Sneak Oil Through Hormuz as Iran Menaces Strait(抜粋)
--取材協力:Alaric Nightingale、Anthony Di Paola、Julian Lee.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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