プライベートクレジットファンドを手掛ける米大手3社は今週、独自の「スコアカード」や外部コンサルタントを活用し、融資対象のソフトウエア企業が直面する人工知能(AI)関連リスクの評価を実施した。

自社ポートフォリオに潜む潜在的なダメージの定量化を試みたのはアレス・マネジメント、ブラックストーン、ブルー・アウル・キャピタルの各社。AIの急速な進展を受け、投資家の間では世界的にソフトウエア企業の存続性に対する懸念が広がっている。

各社はこうした投資家の不安払拭に動いた形で、評価の結果、脆弱(ぜいじゃく)性は「中程度」や「最小限」で、ポートフォリオは「影響を受けにくい」状態にあるとの判断を下した。

アレスは外部コンサルタントを起用して評価を実施。ブラックストーンとブルー・アウルは自社システムを用いてポートフォリオを評価した。投資家へのメッセージは共通しており、脅威は深刻だが、ファンド内のシニアローンはおおむね保護されているとした。さらに、AIの「追い風」を受けるソフトウエア企業もあると指摘した。

ルシッド・キャピタル・マーケッツの調査アナリスト、イーサン・ケイ氏は「市場のノイズ(雑音)を背景にこの分野への注目が一段と高まっている」と指摘。AIによる混乱に直面する企業のリスクをどう評価しているかについて、一段と多くの資産運用会社が開示を進めるとの見方を示した。

バークレイズのコリー・ショート氏らアナリストは、事業開発会社(BDC)による融資の約20%をソフトウエア企業向けが占めると推計。ただ、多くのプライベートクレジットファンドがソフトウエア企業向け融資を別分類として扱っているため、実際のエクスポージャーはさらに大きい可能性がある。このため、投資家にとってリスクの把握が難しくなっている。

ブラックストーンの主力ファンド「BCRED」は、社内のAIリスク・スコアカードを用いてポートフォリオを精査し、AIによる逆風に直面している投資は5%未満にとどまると結論づけた。米証券取引委員会(SEC)への4月29日の提出書類で明らかにした。分析には最終市場やビジネスモデルへのリスクが含まれるとした。

ブラックストーンの運用担当者は株主向け書簡で、「ソフトウエア分野はAIに適応する必要がある」と指摘。その上で、「AI関連の混乱の影響を受けにくい」ビジネスに投資していると考えていると説明した。

BCREDはまた、ソフトウエア株の急落を分析に織り込んだ結果、ポートフォリオの会社の返済能力を分析する指標「インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)」は約2倍の数値となったと説明。保有するソフトウエア資産の16%については、AIの影響が小さいか、追い風となる可能性があるとした。

アレスの場合、同社最大の上場ファンドの投資のうち約10億ドル(約1570億円)が、AIによる混乱の少なくとも「中程度」のリスクにさらされているとの分析を明らかにした。外部コンサルタントのリポートによると、「ソフトウエア関連投資」の約85%は低リスクに分類され、高リスクと判断されたのは1%にとどまった。

アレス・キャピタルのコート・シュナーベル最高経営責任者(CEO)は、一部の企業はAIの恩恵を受ける可能性があると話す。

シュナーベル氏は28日の決算説明会で、「全てのソフトウエア企業が同じレベルのAIによる混乱のリスクを抱えているわけではない」とし、「多くの企業がAIを取り入れ、成長の加速につなげている」と語った。

ブルー・アウルでも運用担当者は同様の結論に達した。AIに対する脆弱性にフォーカスし、新たな情報を基に既存融資の引き受け評価をやり直した。その結果、ポートフォリオのリスクは「最小限」にとどまると判断した。事情に詳しい関係者が明らかにした。

ブルー・アウルのマーク・リプシュルツ共同CEOは30日の決算説明会で、「一歩引いて考えれば、AIの恩恵を受ける企業群が存在すると論理的に結論づけられるだろう」とコメント。さらに、一部の企業は打撃を受けるものの致命的ではない一方、別の企業は「一層深刻な問題に陥る」可能性があると述べた。

投資家にとっての鍵は、貸し手ごとに異なるソフトウエア企業投資の種類を見極めることになると、格付け大手フィッチ・レーティングスで北米のノンバンク金融機関部門責任者を務めるメーガン・ニーナン氏は指摘した。

ニーナン氏は「今四半期にはソフトウエア投資の評価損計上が見られるだろう」とした上で、「この指標に関する保守性の違いがBDC全体でどうなるか興味深い」と語った。

原題:Private Credit Rolls Out Clean Bill of Health on Software Risk(抜粋)

--取材協力:Michelle Cheng.

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