(ブルームバーグ):米クアルコムの経営陣は人工知能(AI)ブームについて、あまりに魅力的なために見過ごすことはできないと判断したようだ。
スマートフォン向け半導体で世界最大手の同社は29日、今年後半に「大手ハイパースケーラー」向けのカスタムチップを出荷すると発表し、注目を集めた。大手ハイパースケーラーとは、AIデータセンターに巨額の投資を進めている巨大テック企業を指す。具体的には、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、アルファベット傘下グーグルなどだ。
クアルコムの経営陣は、顧客名や詳細については言及しなかった。ただ、それが特定用途向け集積回路(ASIC、カスタム半導体)になることは明らかにした。ASICの代表例として広く知られているのが、グーグルの「テンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)」だ。
今回のクアルコムの発表は意外感があり、ブロードコムと直接競合する形となる。また同社は、自社設計についても否定せず、開発は引き続き計画通り進んでいると説明した。
これは、業績がスマートフォン市場に依存しているため投資家から見過ごされてきた同社にとって、転機となる可能性がある。AI向け半導体市場では競争が一段と激化しており、こうした「ゴールドラッシュ」を背景に、半導体業界の売上高は今年、初めて1兆ドルを超える可能性がある。
クアルコムはこれまで、その盛り上がりからはおおむね距離を置いてきた。同社のAI関連の取り組みは、モバイル機器やノートパソコン向けが中心だったからだ。ただ、やや出遅れた形での参入は、結果的に好機を捉えたものとなっている。今回の製品の主な顧客となるハイパースケーラーは投資の勢いを弱める気配がなく、ブームは当面続く見通しだ。
メタは通期の設備投資予測を引き上げ、最大1450億ドルに達するとの見通しを示した。これはアナリスト予想を大きく上回る水準だ。アマゾンは1-3月(第1四半期)にデータセンター拡充のため予想を上回る投資を行い、クラウド部門の売上高が過去3年余りで最も高い伸びを記録した。
マイクロソフトは、クラウド部門「Azure(アジュール)」の売上高が今四半期に約40%増加するとの見通しを示し、需要に対して計算能力の展開が追いついていないと説明した。グーグルはクラウド事業の売上高が1-3月四半期に200億ドルに達し、市場予想を上回った。同社は今年の設備投資が最大1900億ドルに増加するとの見通しを示している。
しかし、過度な期待は禁物だ。データセンター向け半導体はすでに競争が激化しているうえ、巨額投資を進めるハイパースケーラーはいずれも部品調達の自立性を高めようと動いており、独自の半導体開発プログラムを立ち上げている。
AI向け半導体でエヌビディアの牙城に挑もうとするスタートアップがひしめく中、これまで脇役に回っていた企業や技術も再び注目を集め始めている。インテルの従来型の汎用プロセッサーもAIシステムの運用で役割を担うようになり、存在感が薄れつつあると見られていた同社の注目度を押し上げている。
クアルコムの経営陣が示した最も注目すべき点は、巨額投資を進める企業の関心を引くためならあらゆる手段を講じる姿勢だ。カスタムチップやプロセッサー、ネットワーク関連など、クリスティアーノ・アモンCEOが述べたように「すべてに取り組む」という。「新規参入者として、我々は非常に柔軟だ」と同氏は述べた。
原題:Qualcomm Moves to Join the AI Chip Party: Tech In Depth(抜粋)
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