イラン戦争の影響で契約通りに原油を引き渡せなかった場合に誰が責任を負うのかをめぐり、業界内で対立が強まり、石油取引大手の一部で複雑な争いが広がっている。その規模は総額数十億ドルに達する可能性がある。

生産者や取引企業はすでに過去に例を見ないほどの深刻な石油供給ショックに直面している中で、負担はさらに増している。業界幹部は、ホルムズ海峡の航行が再開しても、中東エネルギー市場に長く影響を残す恐れがあると指摘する。

事情に詳しい関係者によると、中国石油(ペトロチャイナ)の子会社は、3月に積み込み予定だったアラブ首長国連邦(UAE)産原油の貨物をめぐり、英石油大手シェルと対立している。また、匿名を条件に語った別の関係者によれば、フランスの石油大手トタルエナジーズも中東での複数のエネルギー取引をめぐってシェルと対立している。

ある商社幹部は、中東発の積み荷をめぐる紛争や不確実性の規模は非常に大きく、どう解決するかによって、自社の利益が5億ドル(約800億円)前後、上下に振れる可能性があると述べた。

一部の問題は生産者による減産が原因となっている。別のケースでは、契約の一環として中東の港から原油を引き取る義務を負った買い手が、ホルムズ海峡の事実上封鎖により、積み込み用の船舶を確保できなかったと主張。これに対し、売り手側が契約を打ち切り、場合によっては損害賠償を求めている。

さらに事態を複雑にしているのは、原油は実際にタンカーに積み込まれる前に何度も売買されるのが一般的で、取引が連鎖的に結びついている点だ。こうした原油は活発な店頭(OTC)市場で取引されるだけでなく、数十億ドル規模のデリバティブ取引の基盤にもなっている。

エネルギー商社マーキュリア・エナジー・グループのギヨーム・ベルメルシュ最高財務責任者(CFO)は先週のFTコモディティーズ・グローバル・サミットで「いずれ和解に至り、危機はおそらく収束するだろう。ただ、その過程で多数の請求や契約紛争、不可抗力条項の解釈を巡る争いなど、数多くの法的な争いが起きるとみている」と述べた。同様の見方はヴィトール・グループやトラフィグラ・グループの幹部からも示された。

原題:Oil Traders Lawyer Up as Hormuz Triggers Billions in Disputes

(抜粋)

--取材協力:Alex Longley、Anthony Di Paola、Kathy Chen、Francois de Beaupuy.

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