(ブルームバーグ):ドイツとチェコが今月、台湾の頼清徳総統の欧州経由の要請を拒否していたことが、事情に詳しい関係者への取材でわかった。拒否により、アフリカへ初の外交訪問を実現しようとしていた頼氏の試みは頓挫した。

頼氏は22日、台湾がアフリカで唯一外交関係を持つエスワティニへの訪問を計画していたが、20日朝、中国寄りのアフリカ3カ国が頼氏が乗る航空機の空域の通過を拒否した。エスワティニへの直行ルートを遮断され、関係者3人によると、台湾当局はドイツやチェコを含む欧州諸国に緊急の経由要請をしたという。
ドイツとチェコは内部での検討の末、台湾側の要請を拒んだ。
台湾は最終的に折衷案として、頼氏の訪問をとりやめ、林外相が特使としてエスワティニを訪問した。ウィーン経由で向かい、帰路はフランクフルト経由で台湾に戻った。
台湾と正式な外交関係を持つ国が世界でわずか12か国の一方、中国が台湾首脳の移動を制限するほどの影響力を持っていることが、この一件で示された。EU諸国は台湾への支援に慎重で、トランプ政権下の米国との関係悪化に備え、中国との関係改善を模索する中で、この傾向は強まっている。
許可取り消し
問題の核心にあったのは、飛行情報区(FIR)と呼ばれる広大な管理空域だ。これは各国の主権領域を超えて広がることも多く、指定された国が航空管制を担う。台湾当局によると、南部アフリカへの最短ルートを覆うFIRを管理しているインド洋のモーリシャス、セーシェル、マダガスカルの3カ国が、中国の要請を受けて頼氏の上空通過許可を取り消した。

関係者によると、ドイツではメルツ首相にも報告が上がったが、公式機でフランクフルトに着陸させることは問題があると判断された。ドイツが台湾からの要請を検討しているとの情報を得た中国政府は、ドイツに対し拒否するよう圧力をかけたという。他のアフリカ諸国が飛行許可を拒否し、頼氏がドイツに足止めされる恐れがある点も考慮された。
欧州で台湾首脳による経由が認められたのは、2014年に馬英九総統(当時)がアフリカや中米の友好国を訪問した時が最後だ。その後10年で、台湾の外交的余地は大きく縮小した。
ドイツ政府はコメント要請に応じていない。チェコ外務省は「そのような要請は受けておらず、関連するいかなる第三者とも関与していない」と述べた。
台湾外交部は実務の詳細についてコメントを控えた。報道官はブルームバーグに対し、同国政府は「関係各方面と継続的に連絡と調整を行っている」とし、中国は政治的手段で国際民間航空を妨害している」と改めて批判した。
欧州での拒否を巡り、中国外務省はコメントしていないが、先週は「一つの中国原則を守るための関係国の正当な行動」を擁護した。セーシェルとマダガスカルも、それぞれ「一つの中国」を認めると説明した。
米国も慎重姿勢
米国の判断も影響した。関係者によると、欧州当局は今回の検討にあたり、米国が昨年7月、中国との通商交渉への影響を懸念し、頼氏の米国経由を拒否した前例を考慮した。
5月の習近平国家主席との首脳会談を前に、トランプ氏は、中国を刺激しかねない行動を控える姿勢を強める可能性がある。報道によると、トランプ氏は2月、この会談に向けて台湾への武器売却を延期したとされる。習氏はトランプ氏との電話会談で、台湾への武器売却について「最大限の慎重さ」を求めていた。
今回の出来事により、台湾総統の海外訪問の空白期間は、パンデミック期を除けば2012年以来最長となる。総統の外遊は外交関係の維持に不可欠であると同時に、米国など正式な関係を持たない主要国を経由する機会でもある。
今回の空域通過拒否は、アフリカにとどまらず、他地域にも影響を及ぼす可能性がある。南米で台湾と国交を持つ唯一の国パラグアイは、中国寄りのブラジル、ボリビア、アルゼンチンに囲まれている。
原題:Taiwan Leader’s Last-Minute Plea to Fly Via Europe Was Rejected(抜粋)
--取材協力:Arne Delfs、Colum Murphy、Samy Adghirni、Michal Kubala.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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