予算編成の抜本的見直し(5つの原則)
また、今回の諮問会議では、デフレ・低成長時代の慣習を打破し、物価・賃金・金利が変動する新局面に対応するための5つの「基本原則」が提案された。その概要は以下のとおりである。
原則1:中核目標の転換:従来の単年度PB(プライマリーバランス)中心の管理から、「債務残高対GDP比の安定的な低下」を中核目標に据える 。
原則2:名目規模拡大への対応:物価・賃金上昇を予算に的確に反映し、経済成長と名目経済規模の拡大にふさわしい予算編成へ見直す。
原則3:「新たな投資枠」の創設:危機管理投資や成長投資を通常歳出と切り離し、「新たな投資枠」として別枠管理する。これにより、単年度主義や補正依存を打破する。
原則4:補正依存からの脱却:補正予算は緊急性の高いものに限定し、恒常的な施策は原則として当初予算に計上する。
原則5:市場の信認確保:不確実性に備えた第三者的レビュー(独立的な検証機能)の検討や、国内外の市場関係者との透明性の高い対話を強化する。
リスク管理と持続可能性
そして、不確実性への対応としては、金利上昇圧力や中東情勢の緊迫化など、経済環境の構造変化を見据えた中期の財政計画を講じるとしている 。
また、定量的検証として、成長戦略によるGDPや税収への寄与を中長期試算に反映し、SDSA(確率的債務持続可能性分析)などの手法を用いて多角的に検証するとしている。
さらに、別枠管理の特例として、経済安全保障上重要な投資や、償還財源のある「つなぎ国債」を活用した資金調達については、債務残高対GDP比等の指標において別枠管理とする方針を示している。
筆者意見
以上の内容について、筆者の具体的な提言は以下の通りである。
まず、骨太方針の策定と情報発信の強化、骨太方針を「簡潔で分かりやすく」という方針については、資料の視認性向上を求めた。
具体的には、従来の概要資料は文字が小さく見にくかったため、今年は簡潔で見やすい仕立てにすることを期待する。
また、多言語・多媒体での広報として、海外への発信を強化するため、PR資料の英語版作成や、英訳付きの大臣記者会見動画のホームページ掲載も提案した。
一方、中東情勢の緊迫化が日本経済に与える影響について、2022年のウクライナ紛争時と比較して分析を行った。具体的には、今回は価格上昇だけでなく「物資不足」も発生しており、より深刻な状況であるとの認識を示した。
そして、現時点では前年度補正予算の効果が残っているため、早急な補正予算の編成よりも、重要物資の調達対応を優先すべきであるとの考えを述べた。
他方、予算編成の見直し(5つの基本原則)については、まず原則1について、従来の単年度PB黒字化の時期を機械的に決めるのではなく、経済成長率と金利の関係を意識した中期的な債務経路の中で判断すべきと指摘した。
また、原則2について、形式的なキャップ管理はデフレ局面では有効だったが、インフレ局面では過度な抑制を招くため、名目経済の拡大に見合った予算編成や歳入見積もりの精度向上が必要であると述べた。
さらに、原則3については、投資期間を一律に区切る(5年など)べきではなく、政策の性質や効果発現までの期間に応じて設定すべきとした。
そして、財源は既存歳出の見直しに加え、持続可能性が担保されていればPB赤字を伴う形も許容されるべきと指摘した。
加えて原則4については、恒常的な施策を補正予算から当初予算へ移すことで、予算編成を正常化すべきとの立場を示した。
そして最後の原則5では、SDSA(確率的債務持続可能性分析)を活用し、不確実性を織り込んだ第三者的レビューを検討すべきだと提言した。
そして、財政持続可能性の多角的評価持続可能性を評価する基準について、従来の「国・地方ベースの総債務」に代わる新たな視点を提案した。
具体的には、社会保障基金との連動や格付機関が重視する指標を踏まえ、「一般政府ベース」かつ「純債務」の両面で見るべきと主張した。
そして、この手法により、家計や企業を含む資金循環の全体像の中で公的部門の負担をより適切に捉え、国際比較や市場との対話もしやすくなると指摘した。
(※情報提供、記事執筆:第一ライフ資産運用経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 永濱 利廣)