ボウマン米連邦準備制度理事会(FRB)副議長(銀行監督担当)は最近、ウォール街の経営幹部に対し、業界にとって有利と広く見られている資本計画を支持し、一層の緩和の要求をやめるよう求めた。

それでも、一部の大手銀行は引き続き提案を批判し、さらなる変更を求めている。

事情に詳しい関係者によると、ボウマン氏は今月、首都ワシントンでJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックス・グループの最高経営責任者(CEO)らと会談し、業界全体の資本要件の引き下げにつながる提案の全体的な影響を考慮するよう促した。

ボウマンFRB副議長(銀行監督担当)

非公開会合について匿名で語った関係者によると、一部の銀行関係者はこのやり取りを受け、資本提案が大幅に修正される可能性は低く、6月半ばが期限の意見公募(パブリックコメント)には、計画の前進に資する建設的な意見に絞るべきだとの見方を強めた。

FRBの報道官はコメントを控えた。

規制当局は過去1年にわたり、銀行規制の枠組み緩和に取り組んできた。ウォール街は長年、現行規制を過度に複雑で負担が重いとしてきた。緩和に向けた計画は業界にとって総じて勝利と受け止められている。

ただ大手銀行は、潜在的な損失に備えてどれだけの資本を保持するかを定める自己資本要件の一段の緩和を引き続き求めている。

トランプ大統領が昨年、銀行監督担当の副議長に指名したボウマン氏は、この取り組みを主導している。FRBはその一環として今年3月、銀行資本要件の緩和案を公表。グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)に対する上乗せ資本要件の引き下げや、将来の銀行破綻を防ぐことを目的とした国際合意「バーゼル3」に関連する資本要件の引き上げを盛り込んだ。

FRBは、最近の提案を組み合わせた場合、一部の銀行の資本要件は「緩やかな低下」となる見込みだとしている。銀行業界が大幅な資本要件引き上げ案に強く反発し、共同で激しい反対運動を展開した2023年の状況から大きく様変わりした。当時の提案は「バーゼル3最終化」として知られたが、確定には至らなかった。

ボウマン氏との会合以降、ウォール街の銀行トップはトランプ政権下の一部の措置を批判している。JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは、これらの計画が「正当な理由なく」資金を拘束することになるとし、シティグループのジェーン・フレイザーCEOは改善ではあるが「まだ十分ではない」との認識を示した。

JPモルガンは最近の決算説明会で、業界全体では要件が引き下げられる一方、自社については200億ドル(約3兆1960億円)の追加資本保有を迫られる可能性があると強調した。

シティグループのフレーザーCEO(右)とJPモルガンのダイモンCEO(2022年に行われた上院銀行委員会公聴会)

これまでに銀行政策研究所(BPI)や米銀行協会(ABA)は、銀行ストレステスト(健全性審査)に関連する別の資本提案の一部について、現在の市場環境を踏まえると「過度に厳しく現実的でない」とパブリックコメントで不満を表明してきた。

FRBは24年12月、リセッション(景気後退)シナリオで銀行がどの程度耐えられるかを測る年次テストの見直しを表明したが、業界団体は同月中にFRBを提訴した。

その後、FRBは今後の試験基準を事前に把握できるようにするなど、ストレステストの変更案を複数提示した。だが、これにより年次テストが「答えを見ながら解く試験」のようになるとの批判的な指摘もある。

ボウマン氏の最近の会合に詳しい関係者の一部は、同氏があらゆる意見に耳を傾ける姿勢である一方、大手銀行への上乗せ資本要件やバーゼル3計画に関する意見書について、ストレステストを巡る主張のような強硬なトーンを銀行側は避けるべきだとの認識を示した。

ウォール街はさらなる要求

規制当局は08年の金融危機後に導入された規制以来で最大級となる資本規則の変更の一部を最終決定しようとしている。

業界アナリストによると、銀行は当時の銀行監督担当副議長のバーFRB理事の下での23年の提案には結束して反対したが、今年3月のパッケージを巡ってはウォール街の金融機関の間に緊張が生じている様子だ。各行が自らのビジネスモデルやバランスシートに合わせた個別の改革を求めていることが理由だ。

元FRB銀行政策担当弁護士、ジェレミー・クレス氏は「ここには『囚人のジレンマ』のような状況がある。銀行は結束を維持して資本の一律引き下げを求めることもできるが、それぞれが特別扱いを求めて当局に要望すれば、最終規則の策定が遅れたり、阻まれたりするリスクがある」と指摘した。

シントンの調査会社キャピタル・アルファ・パートナーズのマネージングディレクター、イアン・カッツ氏は、こうした緊張は規制当局側にも及んでいると話す。一部の当局者は十分譲歩したと考えており、規制の微調整を続けても銀行側の要求が満たされることはないとの見方を示しているという。

銀行寄りとされるボウマン氏は、難しいかじ取りを迫られている。大規模な変更は複雑で相互に関連しているため、新たな規則が採用される前に、業界や一般、他の米金融監督当局、米国の動向を見極めようと自らの計画を保留している外国の当局との間で、資本基準の将来像について合意形成を図る必要がある。

ボウマン氏はまた、計画を年内に完了させ、その後に自身が潜在的なリスクとみる他の課題に取り組みたいとの考えを示している。

「FRBは銀行間の対立の可能性を先回りして抑え込み、迅速な最終決定を損なうような行動を取らせないようにしようとしている」とクレス氏は説明した。

原題:Fed’s Bowman Cautions Wall Street CEOs Against Capital Gripes(抜粋)

--取材協力:Hannah Levitt、Todd Gillespie.

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