(ブルームバーグ):米アンソロピックの最新の人工知能(AI)モデル「Mythos(ミトス)」について、各国が対応を進める中、チームみらいの安野貴博党首は、日本政府の初動が遅れていると指摘し、より踏み込んだ対応を求めた。
ブルームバーグの電話取材で語った。安野氏は日本政府の「動き出しは遅い」と指摘。特に早い段階でアクセス権を入手する必要性を強調し、喫緊の事態だと述べた。
アンソロピックはサイバー攻撃に悪用される恐れがあるためミトスの公開を一部企業や機関に限定している。同社が立ち上げた「プロジェクト・グラスウィング」に参加する米テック企業などはミトスを得て脆弱(ぜいじゃく)性の洗い出しを行う。
欧州への拡大も報じられる中、安野氏は日本企業がアクセスを得ていないことに危機感を示し、政府に対応を促した形だ。
国家サイバー統括室(NCO)の門松貴統括官は21日の国会で、米ビックテックも含めた関係企業との情報交換は行っていると発言。詳細については、攻撃者を利する可能性があるとして回答を控えた。その上で、政府が個別企業と直接交渉するには「合理性や正当性を適切に評価する必要がある」とも説明した。
サイバー攻撃
エンジニアでもある安野氏はAIの進展によりサイバー攻撃のコストが低下していくことにも警鐘を鳴らす。今までにない規模のサイバー犯罪が起こる可能性があると指摘。国内企業への注意喚起や、AIによるサイバー攻撃も想定した政府の危機管理計画策定の必要性を訴えた。
日本が早期に最新AIモデルを入手しやすくするための整備も必要だとも指摘した。英国などでは政府機関が一般公開前のモデルへのアクセスを得て審査などを行っていることに言及し、日本で2024年に発足したAIセーフティ・インスティテュート(AISI)も同様の対応が可能となるよう機能強化の必要性を強調した。
金融分野でも警戒は高まっている。関係者によると、片山さつき金融相はミトスを巡り国内大手金融機関との会合を調整している。安野氏は「まずは危機感の共有が第一だ」とし、「政府としては、どれほどのリスクがありそうか情報交換を行ってほしい」と述べた。
与党内でも対応強化を求める動きが出ている。自民党の国家サイバーセキュリティ戦略本部と金融調査会は20日、金融庁やAISI、NCOを中心に、金融システム防衛を目的とした「日本版プロジェクト・グラスウィング」の創設を提案。基幹インフラ保護に向けても、NCOを司令塔とする体制整備も提案した。
米国の事情
米国防総省は3月、アンソロピックをサプライチェーン上のリスクに指定し、同社の政府向け事業に打撃を与えた。政府機関が合法的目的で同社のツールに無制限のアクセス権限を求めたのに対し、アンソロピックは自社製品が完全自律型兵器や大規模な国民監視に使用されないとの保証を求め、交渉は決裂していた。
こうした対立の中で、アンソロピックはトランプ政権と強い関係を持つワシントンの大手ロビー会社バラード・パートナーズを起用した。アンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)は17日、ワイルズ首席補佐官らトランプ氏の側近とホワイトハウスで会談しており、政権側はミトスへのアクセス拡大を求めている。
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