トランプ米大統領が次期連邦準備制度理事会(FRB)議長に指名したケビン・ウォーシュ元FRB理事は21日、上院銀行委員会の公聴会で証言し、トランプ氏の圧力に屈することはないとする一方、大統領の怒りを買う質問への答弁は避けた。

パウエルFRB議長は5月15日で任期満了となる。だが、ウォーシュ氏の就任に必要な上院での承認がいつになるのか、引き続き見通しは立っていない。

ケビン・ウォーシュ氏(中央)

ウォーシュ氏の人事を上院で進める上でハードルとなっているのは、首都ワシントンにあるFRB本部改修工事費用が当初見積もりから大幅に膨らんだことや、それに関してパウエル議長が昨年6月に行った議会証言を巡り、司法省が行っている刑事捜査だ。

上院銀行委の共和党メンバーの1人で、来年1月に引退するティリス議員は、司法省の捜査が続く限り、いかなるFRB人事も阻止する立場で、他の同党議員と共に捜査打ち切りを求めている。

これに対し、トランプ氏は21日、経済専門局CNBCとのインタビューで、司法省の捜査継続に支持を表明するとともに、パウエル議長に対する批判をエスカレートさせた。

トランプ氏とティリス氏の意地の張り合いとなっており、投資家やFRBウオッチャーは最終的にどう決着するのか見通せていない。

ポトマック・リバー・キャピタル創業者で、連邦準備制度と議会に関する著書の共著者でもあるマーク・スピンデル氏は「大統領は関税や戦争など多くの点で考えを変えており、今回も容易に方針を変える可能性がある」としつつも、「議会や裁判所、市場に促されるまで彼は行動しない傾向がある」と指摘した。

綱渡り

ウォーシュ氏は公聴会を通じて、大統領との対立点がないよう配慮しつつ、中央銀行としての連邦準備制度の独立性は損なわないと約束するという綱渡りの対応を続けた。

同委民主党筆頭理事のウォーレン議員が、2020年大統領選でトランプ氏が敗北したかどうか質問したのに対し、ウォーシュ氏は直接の回答を避けた。この質問は大統領に仕える人物にとって忠誠心を測る試金石とされている。

「連邦準備制度では政治から距離を置くよう努めている」とウォーシュ氏は述べ、選挙結果については「議会が何年も前に認定している」と答えた。

また、トランプ氏が主張するように政策金利を1%まで引き下げた場合、どうなるか問われた際も、「将来の判断について事前に示唆すべきではないと考えている」と、明確な回答を避けた。

一方で、トランプ氏から利下げを約束するよう求められたことはないとし、仮に求められても応じない考えを表明。ほぼ全ての大統領は低金利を望む傾向があるが、「連邦準備制度の独立性は連邦準備制度自身に委ねられている」とし、「指導部が何が正しいかを判断しなければならない」と語った。

出口

ティリス氏は21日に記者団に対し、FRB本部改修プロジェクトとパウエル議長の過去の議会証言について議会による調査が行われ、それが司法省の捜査打ち切りにつながるのであれば歓迎すると述べた。

「それは良い出口戦略であるだけでなく、良いガバナンスでもある」とティリス氏は語った。

共和党のティリス上院議員

ブランチ司法長官代行は記者団に対し、司法省としてパウエル議長を巡る捜査について上院議員が抱く懸念に対応していく考えを示し、捜査は現在も継続中だと話した。また、スーン共和党上院院内総務から、捜査打ち切りを求める正式な要請は受けていないとも明らかにした。

トランプ氏はCNBCとのインタビューで、議会調査が出口戦略となり膠着(こうちゃく)状態を解消するとの見方を退けた。一方で、捜査は継続すべきだとの主張を繰り返した。

「何らかの形で、どうしてこんなことが起きたのかを解明しなければならない」とトランプ氏は述べた上で、パウエル議長について「工事で金を受け取っているとは思えない。思えないが、可能性はある。だから解明する必要がある」と主張した。

トランプ氏はまた、ティリス氏の任期満了を待つ可能性にも言及。来月のパウエル議長の任期満了を控え、対立が新たな局面を迎える可能性もある。

パウエル氏は、司法省の捜査が継続している限り、議長任期満了後もFRB理事としてとどまる意向を既に示している。また、その時点までにウォーシュ氏の承認が得られなければ、臨時議長としてとどまる考えも表明している。これに対しトランプ氏は、パウエル氏が適時にFRBを去らなければ解任する可能性があると警告している。

トランプ氏がパウエル氏を解任できるか、あるいは臨時議長としての続投を阻止できるかは不明だ。また、そうした場合に誰を議長代行に充てるかについても、現時点で大統領は決めていないとホワイトハウス当局者は述べた。

原題:Trump and Tillis in Battle of Wills With Warsh’s Fate in Balance(抜粋)

--取材協力:Chris Strohm.

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