シンガポールの輸出主導型モデルは、地政学的緊張や世界貿易システムの分断化によって圧迫されており、同国の経済成長は鈍化する見通しだ。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)がこのように分析している。ただ、中東関連の機会が支えとなる可能性もあるという。

サラ・ジェーン・マフムード氏率いるBIのアナリストらは20日のリポートで、シンガポールの成長率は今年2.5%程度に鈍化した後、長期的には2-3%のレンジに落ち着くとの見通しを示した。それでも、各国経済がイラン戦争の影響への対処に追われる中で、多くの先進諸国を上回る成長を達成する見込みだ。

アジアの金融ハブであるシンガポールは、5月に最新の経済見通しを発表する予定。2月に示した予測は2-4%増だった。

BIは、「シンガポールは貿易拡大と外国からの投資流入を背景に繁栄してきたが、保護主義の高まりや、大国が国家安全保障上の理由から投資を本国へ回帰させていることで、現在はそれほど好ましくない環境にある」と指摘。「当局はこうしたリスクに対応しており、シンガポールは今後数年間、先進国の平均をやや上回るペースで成長を続けるとわれわれはみている」とした。

同国の政府当局者は、経済的および地政学的な逆風が強まっていると警鐘を鳴らしてきた。こうしたメッセージは、昨年の総選挙で与党が得票率を伸ばす一因となった。

ウォン首相は、米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦開始の約2週間前に予算案を発表した際の演説で、「現状維持という選択肢はない。状況の好転を待つことも、過去の時代のために設計された戦略に頼ることもできない」と述べた。

イラン戦争によるホルムズ海峡の事実上の封鎖で、アジアの一部で燃料供給に支障が出ている。シンガポールでは政府機関がエアコン使用を抑制するなどの節電措置が取られているが、配給制の導入といった事態は回避している。

BIによると、燃料や肥料などの供給混乱によるリスクがある一方で、世界市場の不安定さは、シンガポールに一定程度の利益をもたらす可能性がある。同国は、慎重な規制や強い通貨、「AAA」格付けを活用し、資産運用ビジネスを引き寄せることができるためだ。

中東紛争に関連した資金流入はこれまでのところ限定的だが、紛争が長引けば、プライベートバンキングの顧客層に占める中東顧客の割合は6%を超える可能性がある。これにより、2030年までの運用資産残高(AUM)の年成長率予想(6-10%)の上限に近づき得る。主要銀行の運用資産残高は25年に13%増加したが、同リポートによれば、同シナリオ下ではその数字もさらに上振れる可能性があるという。

長期的には、テクノロジー投資によってシンガポールは人工知能(AI)の地域ハブとしての地位を固めつつある。グーグルのデータを引用した同リポートによると、これにより30年までに1900億シンガポールドル(約24兆円)以上の価値創出が見込まれる。これは半導体や高度な製造業、データ・インフラへの投資からもたらされる。

それでも、経済的な架け橋としての同国の役割を損なう恐れのある構造的リスクが蓄積している。BIは、「ルールに基づく国際秩序の衰退や米中の対立は、この小さな都市国家にとって最大の長期的リスクとなり得る」と指摘した。

原題:Singapore’s Model for Success Faces Test in a Less Global Era(抜粋)

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