マーケットコメント

4月17日の米国市場は、イランのアラグチ外相がホルムズ海峡を開放すると表明したことを受け、楽観論が広がった。WTI原油先物価格は83.85ドルと、前日から10.84ドル下落した。トランプ大統領は、イランが核開発計画の無期限停止に同意したと述べた上で「主要な論点の大半はほぼ固まった。進展はかなり速いだろう」(Bloomberg)と語ったこともあり、恒久的な停戦合意に対する期待も高まった。ダウ平均は前日比+1.79%となり、ナスダック指数は同+1.52%だった。景気に対する楽観的な見方から、これまでやや出遅れていたダウ平均の上昇率が大きかった。後述するように、この日はまとまった幅で長期金利が低下したことも、株式市場の追い風となった。

週末4月18日にはイラン革命防衛隊がホルムズ海峡を再び封鎖したと発表。革命防衛隊は再封鎖について「アメリカが停戦合意に違反してイランの船舶および港に対する海上封鎖を解除していないため」と説明したという(TBS)。本日4月20日は、再び不透明感が高まったとして、リスク回避的な動きがみられるだろう。もっとも、3歩進んで2歩下がるような状況ではあるが、徐々に状況改善を示すヘッドラインが増えている。ナスダック指数が13日続伸となっているように、乗り遅れる恐怖「FOMO(Fear Of Missing Out)」という雰囲気が強くなっており、株価は底堅い動きになりそうである。

株価の推移は2パターンのどちらか

今後を展望すると、以下の2パターンが考えられる。①3-4月に経済の先行き不透明感が強まったことを反映してやや弱めの経済指標が続く可能性がある。その場合、一旦は景気に悲観的な見方が強くなり、株価の上値は重くなるだろう。しかし、その後はFRBの利下げ期待が台頭し、年後半にかけて株価が回復していくことが期待できる。他方、②このまま楽観論が続く場合、FRBが利下げに躊躇する状況が続きそうである。ウォラーFRB理事は4月17日の講演で、エネルギー価格の急騰が一時的なものとみなされる場合、「基調的なインフレ率は2%に向けて引き続き低下していくとの見通しになる。その場合も目先の利下げには慎重となるが、見通しがより安定する年後半には、労働市場を支えるための利下げに傾くことになるだろう」(Bloomberg)と述べた。利下げには、景気悪化懸念が強まる必要があるということだろう。

イラン情勢が改善方向にあることを考慮すると、インフレ懸念は落ち着いていく可能性が高い。しかし、株価が急騰して個人消費が再び刺激される場合、FRBは利下げに躊躇する展開が続きそうである。筆者は引き続き、①一旦は弱めの経済指標が続くことで景気不安が生じるとみているが、どちらのパターンになるかどうかはデータ次第と言える状況である。なお、年末時点の株価については、①のパターンになった方が高いだろう。昨年のトランプ関税ショックに続いて今回もそうなりそうだが、株価が大きく低下した後に戻り高値を試す「マッチポンプ相場」が続いている。FRBが利下げを基本シナリオとしていることが背景だろう。リスク回避的な動きを経験しても、下値が限定的であるという経験を繰り返すことで、市場が強気化しているように思われる。

4月17日の債券市場では金利がまとまった幅で低下した。長期金利は前日差▲6.3bp、2年金利は同▲6.6bpだった。債券市場のボラティリティ指数であるMOVE指数が低下傾向にあることで、債券に対する強気な見方が増えやすい。また、この日は原油価格が大きく下落したことにより、長期のインフレ予想(BEI)は同▲3.1bpとなった。また、原油価格が下落したことで、FRBの利下げ観測が高まり、10年実質金利は同▲3.2bpとなった。

むろん、週末にイラン情勢の不透明感が再び高まったことから、金利は不安定な動きとなりそうだが、MOVE指数はほぼ一貫して低下傾向にある。債券市場は底堅い推移になることが予想され、金利は徐々に低下していくだろう。

日銀の4月利上げの是非に重要なのは、6月・7月利上げへの期待

G20財務相・中央銀行総裁会議を終え、片山財務相と植田日銀総裁は記者会見を行った(現地時間4月16日、日本時間4月17日)。植田総裁は原油高の影響について「物価上振れのリスクと景気下振れのリスクが両方あり、(金融)政策対応が難しい」「データ・情報を集め、(経済・物価)見通しの実現確度やリスクを点検し、政策判断を決める」(時事通信)と述べ、判断を急がない姿勢を示した。依然としてフリーハンド維持が重視された発言と言える。もっとも、円OIS市場で4月27-28日の決定会合における利上げ確率が20%弱しか織り込まれていないことを考慮すると、市場が利上げスキップと予想することを受け入れているとも言える。

ロイターは、「これだけ不確定要素が多いのだから、1週間以上先の政策決定会合でどうするかを決めるのは時期尚早だ」と情報筋の1人は言い、別の情報筋も同様の見解を示したと報じた。引き続き、フリーハンドを維持する方針とみられるが、決定会合当日まで判断を遅らせることにはリスクがあるだろう。遅くとも決定会合1日目の4月27日までには、メディアの観測報道などによって利上げの有無が明らかになっているだろう。

日銀にとって重要なのは、4月利上げをスキップしたとしても利上げ観測が強い状態が続くかどうかである。利上げ観測が強く残れば、円安圧力は強まりにくい。この点、円OIS市場では6月までの利上げ確率が約70.7%と、高水準である。4月利上げがスキップされても、6月や7月の利上げを予想する向きが多くなると予想され、4月に利上げをスキップすることのリスクは高くないと判断されるだろう。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)