トランプ米大統領が自身をイエス・キリストに見立てた人工知能(AI)生成画像を投稿したことについて、カトリックに改宗したバンス米副大統領は冒涜(ぼうとく)でも不快でもないと受け止めるよう促している。また、トランプ氏によるローマ教皇レオ14世への激しい批判も問題視する必要はないとの立場を示した。

赤いローブをまとい、病人の額に手を置いて癒やすトランプ氏の画像に関して、13日夜のFOXニュースで司会のブレット・ベイヤー氏から問われたバンス氏は、「まず第一に、大統領は冗談を投稿したのだと思う」と回答。「多くの人がそのユーモアを理解していないと認識したため、削除することになった」と述べた。

だが、このユーモアを理解できなかったのは一部のトランプ大統領支持者も同じで、神をやゆしていると批判が上がった。トランプ氏は、自身を医者として表現しただけで、赤いローブは赤十字を意味すると説明したが、医師やキリスト教的象徴への理解を欠くかのような釈明となった。

バンス副大統領はこれまでもトランプ氏の火消し役を担ってきたが、今回は個人的な利害も強く絡んでいる。これまで米大統領の座を射止めたカトリック教徒はわずか2人で、直近のバイデン前大統領は2020年にカトリック票の一部をトランプ氏から奪って勝った。バンス氏が28年の次期大統領選に出馬した場合、成功を収めるには24年にトランプ氏に戻ったこの層の支持が不可欠となる。

CNNに出演してトランプ氏を批判していた論客から、MAGA(米国を再び偉大に)派の副大統領へと異例の速さで転身を遂げた変幻自在のバンス氏にとって、ここまで上り詰めておきながら、今さら大統領への道を譲るわけにもいかない。

戦争批判

トランプ大統領とレオ14世の対立の背景には、イラン戦争がある。トランプ氏とヘグセス国防長官がこの紛争をキリスト教的な表現で正当化したのに対し、レオ14世はマタイによる福音書を引用し、「平和を実現する人々は、幸いである」として今回の戦争を批判。一方、トランプ氏はレオ14世を「犯罪に弱腰」とし、「急進左派」に迎合していると反発した。

だが、世論調査では多くの米国民が教皇の立場に近いことが示されている。戦争は数千人の命を奪い、世界経済を混乱させ、中東の不安定化を招いている。CBSとユーガブによる最近の調査では、68%がイラン情勢を巡るトランプ大統領の対応を支持していない。

バンス副大統領はトランプ氏のレオ14世批判を問題視しない一方、教皇にはアドバイスを送った。「場合によっては、バチカンは道徳的な問題に専念するのが最善だと私は考えている」とベイヤー氏に語り、「カトリック教会内で起きていることに専念し、米国の公共政策に関する決定は米大統領に委ねるべきだ。しかし、両者が対立する時は対立する」と述べた。

当然ながら、他者への接し方は道徳的な問題に直結する。だからこそ、教皇は戦争と移民の両方について声を上げてきた。トランプ大統領による非難について問われたレオ14世は、「戦争に反対し、声を上げ続けていく」と応じた。

さらに、教皇は専用機内で記者団に対し、「トランプ政権を恐れてはいない。福音が伝えるメッセージを明確に発信することも恐れていない。それがここでの私の役割だと信じているからだ」と述べ、「トランプ氏との議論に加わるつもりはない。福音のメッセージが、一部の人々が行っているような形で乱用されるべきではないと考えている」と語った。

抱える矛盾

トランプ氏は16年と24年の大統領選で、教会関係者の支持を勝利の大きな原動力とした。これまで宗教右派から大きな反発を受けることはほとんどなかったが、イラン戦争によって状況が変わりつつある。トランプ政権は宗教を軽視し、過激な表現を用いているとの指摘も出ている。

トランプ大統領が今後選挙に出馬することはないだろうが、自身の改宗体験をつづった新著を6月に出版するバンス副大統領は違う。

「私はキリスト教徒であり、イエス・キリストの教えが真実だと信じているからこそキリスト教徒になった」と、著書「Communion: Finding My Way Back to Faith」のプレスリリースに記した。「だが、常にそう思っていたわけではない。私の歩みを分かち合うことで、神との和解を求めているカトリックやプロテスタント、その他の人々の助けになればと願っている」とした。

バンス氏は、米副大統領という政治的立場から独自の宗教的価値観を広める一方で、ローマ教皇には政治に口を出さず、道徳的な問題に専念するよう促している。相手には線引きを求めるが、自分はその一線を越えるという矛盾はいつかは通用しなくなるかもしれない。

(ニア・マリカ・ヘンダーソン氏は、ブルームバーグ・オピニオンの政治・政策担当コラムニストです。CNNやワシントン・ポストの元シニア政治記者で、約20年にわたり政治や選挙運動を取材してきました。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Vance Is the Loser of the Trump-Pope Feud: Nia-Malika Henderson(抜粋)

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