マーケットコメント

4月15日の米国市場は、まちまちな展開。トランプ大統領が対イラン軍事作戦は終了間近であると述べたことは楽観論を強めるものだったが、株式市場は急ピッチで回復してきたことから、ダウ平均は利益確定売りとみられる動きが優勢となり、3営業日ぶりに反落した。

他方、ハイテク株の比率が高いナスダック指数は11日続伸。今後の米経済の見通しについては、原油高や利下げの後ろ倒しが下押し圧力になるという見方がある一方、リセッションに陥ることはないという見方がコンセンサスになっていくだろう。

その結果、景気敏感株が選好されることもなく、ディフェンシブ銘柄が選好されることもなく、消去法的に景気と関係なく業績が安定していく期待のあるハイテク株が選好される展開になりそうである。

債券市場では金利が上昇した。長期金利は前日差+3.6bp、2年金利は同+1.6bpだった。長期のインフレ予想が安定的に推移しているため、利上げ観測は高まっていないが、FRBは利下げにも慎重化しているため、金利は方向感を欠いた動きとなっている。

この日に公表された3月の輸入物価は、前月比+0.8%となり、市場の同+2.3%を下回った。市場ではイラン情勢悪化の影響がこれから反映されるという見方が多いため、今回の結果はあまり重要視されなかった模様だが、今回のような市場予想を下回る結果が続けば、利下げ観測が徐々に強くなっていくだろう。

ドル円は横ばいだが円は弱く日銀は「タカ派現状維持」の公算

時事通信はこの日、金融市場で日銀による4月利上げの織り込み度合いが急低下していることに対して、「日銀の執行部が、市場の織り込み度合いが低下している状況に焦ったり、巻き返しを図ったりする様子はうかがえず、静観の構えを見せている」とし、「27日から始まる次回の金融政策決定会合が接近する中、日銀内は依然として利上げに前のめりな雰囲気が乏しい状況だ」と報じた。

実際に、円OIS市場では、4月決定会合における利上げ織り込みが急速に後退しており、一時は80%程度まで上昇していた利上げ確率は、足元で27%程度まで低下している。

これまでの日銀のコミュニケーションを勘案すると、決定会合の当日まで判断が読めない(会合がライブになる)ことはないだろう。

現在行われているG20財務相・中央銀行総裁会議の終了後の植田総裁の記者会見で、何らかのスタンスが示される可能性がある。仮にここでスタンスを示さなくとも、来週のいずれかのタイミングで、メディアを通じた地均し(織り込ませ)があるだろう。

このように考えると、日銀が4月利上げの是非を決断するタイミングは直前に迫っている(ないしは、もう決定している)と考えられる。現時点で日銀が市場の利上げ観測の後退を受け入れる雰囲気があるとすれば、利上げはスキップされる可能性が高いのだろう。

ただし、日銀がハト派的であると捉えられることは避ける可能性が高い。

日銀が利上げを急がないとすれば、その大きな理由はドル円の安定だろう。ドル円は159円前後でほぼ横ばいであり、一見すると円安圧力は弱い。しかし、現実的には円はドルと一緒に弱くなっている。

「有事のドル買い」によるドル高圧力が弱まる中、この日もドル指数は下落した。8日続落となり、3月30日のピークからは▲2.4%となった。ドル円が安定しているということは、ドルと一緒に円は弱くなっているのである。例えば、対ユーロでは円安が進んでおり、ユーロ円は3月30日から+2.5%となっている。

おそらく、イラン情勢の悪化によって鳴りを潜めていた円キャリートレード(短期金利が低い日本の円を借り入れ、高金利の外貨資産を購入する動き)が、停戦期待を背景とした足元のリスクオン相場によって復活してきているのだろう。

今後もドル安傾向が続けば、円キャリーによる円安圧力が(ドル円では)相殺されることになるが、仮にドル安傾向が一巡すれば、円キャリーによって円安(ドル円の上昇)が予想外に進んでしまう可能性がある。

現時点で、注目度の高いドル円が安定的であることは、日銀が利上げを遅らせて様子見を続ける余裕につながっているとみられるが、クロス円で円が弱くなっていることは、日銀の不安材料となっていることだろう。

また、IMFは世界経済見通し(WEO)において、中央銀行は原油高によるコストプッシュ型のインフレ圧力が高まったとしても、インフレ予想が安定している場合は様子見を続けるべきであるという提言を行ったが、日本のインフレ予想はやや上昇している。

日本の10年インフレ予想(BEI)は+1.92%となっており、1月27日のピーク(2.00%)よりは低いものの、2月17日の1.64%からは大きく上昇している。日本の10年BEIは25年1~10月は1.5%前後の推移となっていたが、25年11月以降は上振れ傾向にある。

高市政権が発足して以降に上昇圧力が強まっている様子であり、IMFが指摘するほどの「様子見の余裕」はないと言える。日銀は4月27-28日の決定会合で、「タカ派現状維持」というスタンスを選択するだろう。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)